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第9話 甘い吐息はほぼサキュバス
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「ここがフェアリーステイル」
冒険者ギルドで無事、冒険者カードを手に入れた私は今、凄腕の魔法使いがいると御者さんから聞いた町、フェアリーステイルに到着していた。
「冒険者カードの提示、または入国税の千リースをお願いします」
「冒険者カードで」
「確認します」
平気な顔をして衛兵に冒険者カードを渡しているミーシャだったが、内心ドキドキしている。ルルが離席している間シシリーから色々な説明を受けたものの、実際にやってみないと分からないという謎の慎重さを発揮している。
「ありがとうございます、どうぞ中へ」
「あっ、はい」
本当に入国税無しで入れた⋯⋯冒険者カード取っといて良かった。そんなことを思いながら私は辺りを見渡し、早速聞き込みを始める。
「なんかこの町、冒険者っぽい人多いなあ」
冒険者に聞いても分かるかな? 一時的に滞在してるだけだったら知らない人多そう。いやでもその凄腕の魔法使いが冒険者って可能性もあるのか⋯⋯手当り次第聞いていくしかないかな。
「まず情報といえば冒険者ギルドでしょ」
善は急げ、ミーシャは町の風景を楽しみながら冒険者ギルドへ足を運んだ。
「人多いなぁ」
フェアリーステイルの冒険者ギルドはいつも賑わっていて、その依頼を受ける冒険者の殆どがファードの森というここから更に南へ行くとある危険な森に依頼をこなしに行く。
そしてフェアリーステイルから次の街へ行くには必ずファードの森を通過しなければならないのだけど、奥に行けば行くほど魔物の数が増えたり、個体自体が強くなり、通過するのはほぼ不可能と有名だ。あまりの危険さに通路としての用途で使用する人はおらず、完全に冒険者のための森になっているらしい。
「あのーすみません」
「はい! なんでしょうか?」
冒険者ギルドの奥へ進んでまずは受付のお姉さんに話しかけると、ハキハキとした返事が返ってきた。
「この町に凄腕の魔法使いが居るって聞いたんですけど⋯⋯」
すると後ろから肩をトントンとされ、「あなたに一目惚れしちゃいました」と急に声をかけられた。
何事かと振り返ってみれば、魔法使いの装いをしたミディアムヘアの女の子が私の左腕に抱きついてきて、そのたわわに実った胸をこれでもかというぐらい押し当ててくる。
「あなたは⋯⋯?」
「ごめんなさい名乗らずに」
彼女は私の左腕から手を離し、被っていた三角帽子を軽く整え、女の私でもちょっとドキッとしてしまうぐらい愛嬌たっぷりの笑顔を見せてくれた。
「リアラ・リーグレントです、リアラとお呼びください!」
「じゃあリアラ、ひとつ聞きたいことがあってね」
そう私が口にしたらリアラは勢いよく話し出してしまった。
「分かりました! 私の今使ってるシャンプーですか? それとも女の子に聞くのは禁忌と言われている体重ですか!? どちらでもお教えしますよ!」
「いや、凄腕魔法使いの──」
「私の胸の大きさですか? それなら──」
私は咄嗟にリアラの口を手で塞ぎ、少し焦りながらも一人の女の子を守った。この功績はでかいぞリアラよ。
「女の子がそんなこと言っちゃダメでしょ」
「あっ⋯⋯スベスベな手⋯⋯」
何この子⋯⋯ツッコミどころ多すぎ、というか変人⋯⋯?
それを証明しようと私は受付のお姉さんに視線をやると、「いつもの事です」と言っていないのにも関わらず読み取れてしまうほど、お姉さんは酷い顔をしていた。
「あのー⋯⋯探している凄腕の魔法使いというのが残念ながらこの方で⋯⋯」
私はその場で固まってしまった。
衝撃の事実、こんな変な子が凄腕の魔法使い⋯⋯? ただの魔法使いならまだしもそこそこ有名らしい凄腕魔法使いがまさかの頭 花園系だとは⋯⋯。
うん、これは十二時の魔女の誰でもないな。
「あー⋯⋯受付のお姉さんありがとう。それじゃあ私はこれで」
リアラは逃がさないという強い気持ちが感じられるほどに、私の腕にしがみつき胸を当ててくる。
「⋯⋯逃がして?」
「嫌です」
その笑顔は百点、でも十二時の魔女の誰でもないと分かった今、付き合ってる暇なんて⋯⋯。
「ダメ⋯⋯ですか?」
私はリアラの可愛い笑顔に心を奪われそうになっ⋯⋯いや正直ちょっとドキッとした⋯⋯なんか可哀想な気がしてきた、私の事好いてくれてるのに──いやいや! 惑わされるな魔法使いよ、この相手は人を誘い出し魔力と精気を喰らうサキュバスだと思え⋯⋯。
「この町に来たばかりですか?」
甘ったるい声で誘ってくるリアラの吐息は私の左耳にかかり、顔を向けなくてもすぐ横にリアラの唇があると確信した。
「そうだけど⋯⋯」
「なら私が案内しましょうか? ⋯⋯はぁ」
わざとらしく私の耳に甘い吐息をかける姿はまさに、絶対に逃がさないという執念の現れ。ほぼ脅しだ⋯⋯。今ならお前の唇ぐらい簡単に奪えるぞという脅しだ。
「わかったよ、せっかくこの町に来たんだし観光ぐらいはしようかな」
「やったー!」
腕をようやく離したリアラは、私の横で小さく飛び跳ねながら喜びを露わにしてくれた。
「そういえばあなたのお名前をお聞きしてもいいですか?」
そうだった⋯⋯突然の事で忘れてたけど、わたしリアラに名前すら教えてない。
「私の名前はミーシャ・アングレー、魔法使い兼旅人です」
「ミーシャちゃん⋯⋯いい響き⋯⋯。綺麗の中にも可憐さが残ってる、かといって可愛さを捨てたわけじゃない素敵な名前⋯⋯。はあ⋯⋯この名前をこのミーシャちゃんにつけてくれた親御さん感謝だわ~」
えー⋯⋯そんなこんなで私はこのリアラという女の子とフェアリーステイルの町を散策することになってしまった。
この先大丈夫かなぁ⋯⋯。会って間もないけど、リアラのことだからこの先ずっとついてきそうで今のところ不安しかないよ⋯⋯。
冒険者ギルドで無事、冒険者カードを手に入れた私は今、凄腕の魔法使いがいると御者さんから聞いた町、フェアリーステイルに到着していた。
「冒険者カードの提示、または入国税の千リースをお願いします」
「冒険者カードで」
「確認します」
平気な顔をして衛兵に冒険者カードを渡しているミーシャだったが、内心ドキドキしている。ルルが離席している間シシリーから色々な説明を受けたものの、実際にやってみないと分からないという謎の慎重さを発揮している。
「ありがとうございます、どうぞ中へ」
「あっ、はい」
本当に入国税無しで入れた⋯⋯冒険者カード取っといて良かった。そんなことを思いながら私は辺りを見渡し、早速聞き込みを始める。
「なんかこの町、冒険者っぽい人多いなあ」
冒険者に聞いても分かるかな? 一時的に滞在してるだけだったら知らない人多そう。いやでもその凄腕の魔法使いが冒険者って可能性もあるのか⋯⋯手当り次第聞いていくしかないかな。
「まず情報といえば冒険者ギルドでしょ」
善は急げ、ミーシャは町の風景を楽しみながら冒険者ギルドへ足を運んだ。
「人多いなぁ」
フェアリーステイルの冒険者ギルドはいつも賑わっていて、その依頼を受ける冒険者の殆どがファードの森というここから更に南へ行くとある危険な森に依頼をこなしに行く。
そしてフェアリーステイルから次の街へ行くには必ずファードの森を通過しなければならないのだけど、奥に行けば行くほど魔物の数が増えたり、個体自体が強くなり、通過するのはほぼ不可能と有名だ。あまりの危険さに通路としての用途で使用する人はおらず、完全に冒険者のための森になっているらしい。
「あのーすみません」
「はい! なんでしょうか?」
冒険者ギルドの奥へ進んでまずは受付のお姉さんに話しかけると、ハキハキとした返事が返ってきた。
「この町に凄腕の魔法使いが居るって聞いたんですけど⋯⋯」
すると後ろから肩をトントンとされ、「あなたに一目惚れしちゃいました」と急に声をかけられた。
何事かと振り返ってみれば、魔法使いの装いをしたミディアムヘアの女の子が私の左腕に抱きついてきて、そのたわわに実った胸をこれでもかというぐらい押し当ててくる。
「あなたは⋯⋯?」
「ごめんなさい名乗らずに」
彼女は私の左腕から手を離し、被っていた三角帽子を軽く整え、女の私でもちょっとドキッとしてしまうぐらい愛嬌たっぷりの笑顔を見せてくれた。
「リアラ・リーグレントです、リアラとお呼びください!」
「じゃあリアラ、ひとつ聞きたいことがあってね」
そう私が口にしたらリアラは勢いよく話し出してしまった。
「分かりました! 私の今使ってるシャンプーですか? それとも女の子に聞くのは禁忌と言われている体重ですか!? どちらでもお教えしますよ!」
「いや、凄腕魔法使いの──」
「私の胸の大きさですか? それなら──」
私は咄嗟にリアラの口を手で塞ぎ、少し焦りながらも一人の女の子を守った。この功績はでかいぞリアラよ。
「女の子がそんなこと言っちゃダメでしょ」
「あっ⋯⋯スベスベな手⋯⋯」
何この子⋯⋯ツッコミどころ多すぎ、というか変人⋯⋯?
それを証明しようと私は受付のお姉さんに視線をやると、「いつもの事です」と言っていないのにも関わらず読み取れてしまうほど、お姉さんは酷い顔をしていた。
「あのー⋯⋯探している凄腕の魔法使いというのが残念ながらこの方で⋯⋯」
私はその場で固まってしまった。
衝撃の事実、こんな変な子が凄腕の魔法使い⋯⋯? ただの魔法使いならまだしもそこそこ有名らしい凄腕魔法使いがまさかの頭 花園系だとは⋯⋯。
うん、これは十二時の魔女の誰でもないな。
「あー⋯⋯受付のお姉さんありがとう。それじゃあ私はこれで」
リアラは逃がさないという強い気持ちが感じられるほどに、私の腕にしがみつき胸を当ててくる。
「⋯⋯逃がして?」
「嫌です」
その笑顔は百点、でも十二時の魔女の誰でもないと分かった今、付き合ってる暇なんて⋯⋯。
「ダメ⋯⋯ですか?」
私はリアラの可愛い笑顔に心を奪われそうになっ⋯⋯いや正直ちょっとドキッとした⋯⋯なんか可哀想な気がしてきた、私の事好いてくれてるのに──いやいや! 惑わされるな魔法使いよ、この相手は人を誘い出し魔力と精気を喰らうサキュバスだと思え⋯⋯。
「この町に来たばかりですか?」
甘ったるい声で誘ってくるリアラの吐息は私の左耳にかかり、顔を向けなくてもすぐ横にリアラの唇があると確信した。
「そうだけど⋯⋯」
「なら私が案内しましょうか? ⋯⋯はぁ」
わざとらしく私の耳に甘い吐息をかける姿はまさに、絶対に逃がさないという執念の現れ。ほぼ脅しだ⋯⋯。今ならお前の唇ぐらい簡単に奪えるぞという脅しだ。
「わかったよ、せっかくこの町に来たんだし観光ぐらいはしようかな」
「やったー!」
腕をようやく離したリアラは、私の横で小さく飛び跳ねながら喜びを露わにしてくれた。
「そういえばあなたのお名前をお聞きしてもいいですか?」
そうだった⋯⋯突然の事で忘れてたけど、わたしリアラに名前すら教えてない。
「私の名前はミーシャ・アングレー、魔法使い兼旅人です」
「ミーシャちゃん⋯⋯いい響き⋯⋯。綺麗の中にも可憐さが残ってる、かといって可愛さを捨てたわけじゃない素敵な名前⋯⋯。はあ⋯⋯この名前をこのミーシャちゃんにつけてくれた親御さん感謝だわ~」
えー⋯⋯そんなこんなで私はこのリアラという女の子とフェアリーステイルの町を散策することになってしまった。
この先大丈夫かなぁ⋯⋯。会って間もないけど、リアラのことだからこの先ずっとついてきそうで今のところ不安しかないよ⋯⋯。
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