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25,飛龍
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シアはヨハネス子爵の領地オースティンに一週間ほど滞在した。その間、ベリンダの依頼でベリンダに剣術の指導を行い、謎の憎しみを向ける護衛たちに教育的指導を行っていた。また、セインにも回復魔法の講義を行いセインの回復魔法士としての実力を飛躍的に向上させていた。小太郎は、日中はリリーを背に乗せて野山を駆け回り、夜はリリーの抱き枕になっていた。
「シア君、そろそろエマのところに行かないといけないね」
「そうだね。ルーナの家族には本当に良くしてもらったね。お礼を言うよ」
「ふふ。私の家族ということはシア君の家族にもなるんだよ」
「……そういえば、そうだね」
「早く、マリアナお母さまにお会いしたいです」
「もっと頑張って早く大陸を飛び越えないとね」
「シア君ならすぐに出来るようになるよ」
その時であった。
平和なオースティンに異常事態を告げる甲高い鐘の音が響き渡った。
すると、庭にいた小太郎がリリーを乗せてやってきた。
「シア、ワイバーンの群れが来ているね~」
「どれくらいいるかな?」
「20頭くらいかな~、さくっとやっつけちゃう?」
「そうだね。ヨハネス子爵はどこだろう」
その時、血相を変えたヨハネス子爵がシア達のところにやってきた。
「シア君、済まない。ワイバーンの群れが来たらしい。手伝ってくれないか」
「いいですよ。小太郎と話していたところです」
シア達が外に出て空を見ると、確かにワイバーンの群れがこちらに向かって飛んできていた。あの凶暴なワイバーンがわき目も振らずに真っ直ぐ飛んできていたのだ。
「このオースティンにワイバーンなど数十年ほど来たことがないのだよ……」
「ああ、あいつらは剣では届かないから厄介だ」
「でも、おかしいですね……」
「おかしいとは?」
「何かから逃げているような……」
そう言いながらシアが目を凝らして遠くを見る。魔力を通すことでシアの視力は古代龍並みに遠くが見えた。じっくりと遠くを見ると一頭の飛龍が見える。
「飛龍が飛んできているね」
「飛龍だって……」
一気にヨハネス子爵たちの緊張感が高まった。
それもそのはずである。ワイバーンのような竜種の魔物だけでも相当厄介なのに、飛龍のように体長が数キロメートルにわたる災害級の存在が、この平和な街に現れてもどうしようもできないのだ。そもそも人間が龍と戦うということそのものが無謀なのである。
「リリー、とりあえず小太郎から下りてもらっていいかな、まずはあのワイバーンを全部倒してくるね」
「うん。お兄ちゃんお願いね」
「ルーナ、大丈夫だと思うけど、一応飛龍が近づいてきたら屋敷に結界を張っておいてくれるかな」
「シア君、頑張ってね」
シアは軽く手を挙げて小太郎に跨ると空へと飛び立った。
「なぁ、ルーナ、シア君は……」
「多分ワイバーンの群れぐらいならすぐだよ。飛龍はどうだろう。でもシア君が負けることは絶対にないよ」
「……そうか、どちらにしても彼に任せるしかないからね」
ヨハネス子爵たちの心配をよそにシアは元の大きさに戻った小太郎の上でじっくりと倒し方を考えていた。
「ねえ小太郎、どいつから倒そうか」
「下に落とすとみんなこまっちゃうね~」
「じゃあ、小太郎が倒して、俺が下で受けようか」
「さすがシア、あたまいいね~」
二人は二手に別れてワイバーンの群れを迎え撃つことにした。
射程範囲に入ったワイバーンを小太郎が上から一気に倒すと下からシアが順番に亜空間収納に収納していく。シアは全部のワイバーンを収納すると再び上昇して小太郎の上に跨った。
「さて、ワイバーンは終わったね」
「うん。今日はワイバーンのステーキかな~」
「久しぶりに飛龍の肉もいいね」
「飛龍のステーキ~?」
「飛龍は少しだけ肉が固いから、母さんはいつもハンバーグにしてくれたね」
「おおお~、飛龍のハンバーグぅ~」
すると、
「貴様ら、誰がハンバーグだ」
「えっ、飛龍のハンバーグだけど……」
「そうそう。美味しいんだよ~」
「……我が美味しいだと」
「うん。マリアナが作る飛龍のハンバーグは最高なんだ~」
「マリアナって……」
「俺の母さんだよ、古代龍なんだ」
「……あのワイバーンの群れは、貴様達が倒したのか?」
「うん。奴らは肉が柔らかいからステーキだね」
「その……何だ……古代龍の子よ。ワイバーンの肉を分けてはもらえんかな?」
「何で?」
「この間子供が生まれてな、腹を空かせておるのだ。それで餌の乏しい北の島から餌を探しながら移動していたのだが……いい獲物だと追いかけてきたのだが……その……貴様らがステーキにするとか……その」
「ふうん。人間を襲ったりしない?」
「襲う理由がないだろう。我は子供の腹が膨れればそれでよいのだ」
「わかった。じゃあ巣に案内してよ。そこで出してやるよ」
「いいのか、本当に」
「その代わりにこれから先絶対に人間を襲うなよ」
そう言うと、シアと小太郎は飛龍の背中に乗って巣に向かった。
そこには、まだ生まれたばかりの飛龍の子供が腹を空かせて待っていたのだが……、
「食べないね~」
「どうしたのだ、何故餌を食べんのだ。ワイバーンの肉だぞ」
「おかしいな……回復魔法が効かないな」
「どうすればよいのだ……我が子を助けてくれんか、古代龍の子よ」
「うーん、飛龍は人化出来る?」
「朝飯前だ。これでどうだ」
そこには、体に布を巻いただけのまだ若い女性の姿が現れた。
「よし。その子を抱いて小太郎に乗ってよ」
「わかった。これでいいか?」
「よし、小太郎、ヨハネス子爵の屋敷まで頼むよ」
「おーけー、じゃあいくよ~」
シアと小太郎は人化した飛龍を連れてヨハネス子爵の屋敷に向かったのであった。
「シア君、そろそろエマのところに行かないといけないね」
「そうだね。ルーナの家族には本当に良くしてもらったね。お礼を言うよ」
「ふふ。私の家族ということはシア君の家族にもなるんだよ」
「……そういえば、そうだね」
「早く、マリアナお母さまにお会いしたいです」
「もっと頑張って早く大陸を飛び越えないとね」
「シア君ならすぐに出来るようになるよ」
その時であった。
平和なオースティンに異常事態を告げる甲高い鐘の音が響き渡った。
すると、庭にいた小太郎がリリーを乗せてやってきた。
「シア、ワイバーンの群れが来ているね~」
「どれくらいいるかな?」
「20頭くらいかな~、さくっとやっつけちゃう?」
「そうだね。ヨハネス子爵はどこだろう」
その時、血相を変えたヨハネス子爵がシア達のところにやってきた。
「シア君、済まない。ワイバーンの群れが来たらしい。手伝ってくれないか」
「いいですよ。小太郎と話していたところです」
シア達が外に出て空を見ると、確かにワイバーンの群れがこちらに向かって飛んできていた。あの凶暴なワイバーンがわき目も振らずに真っ直ぐ飛んできていたのだ。
「このオースティンにワイバーンなど数十年ほど来たことがないのだよ……」
「ああ、あいつらは剣では届かないから厄介だ」
「でも、おかしいですね……」
「おかしいとは?」
「何かから逃げているような……」
そう言いながらシアが目を凝らして遠くを見る。魔力を通すことでシアの視力は古代龍並みに遠くが見えた。じっくりと遠くを見ると一頭の飛龍が見える。
「飛龍が飛んできているね」
「飛龍だって……」
一気にヨハネス子爵たちの緊張感が高まった。
それもそのはずである。ワイバーンのような竜種の魔物だけでも相当厄介なのに、飛龍のように体長が数キロメートルにわたる災害級の存在が、この平和な街に現れてもどうしようもできないのだ。そもそも人間が龍と戦うということそのものが無謀なのである。
「リリー、とりあえず小太郎から下りてもらっていいかな、まずはあのワイバーンを全部倒してくるね」
「うん。お兄ちゃんお願いね」
「ルーナ、大丈夫だと思うけど、一応飛龍が近づいてきたら屋敷に結界を張っておいてくれるかな」
「シア君、頑張ってね」
シアは軽く手を挙げて小太郎に跨ると空へと飛び立った。
「なぁ、ルーナ、シア君は……」
「多分ワイバーンの群れぐらいならすぐだよ。飛龍はどうだろう。でもシア君が負けることは絶対にないよ」
「……そうか、どちらにしても彼に任せるしかないからね」
ヨハネス子爵たちの心配をよそにシアは元の大きさに戻った小太郎の上でじっくりと倒し方を考えていた。
「ねえ小太郎、どいつから倒そうか」
「下に落とすとみんなこまっちゃうね~」
「じゃあ、小太郎が倒して、俺が下で受けようか」
「さすがシア、あたまいいね~」
二人は二手に別れてワイバーンの群れを迎え撃つことにした。
射程範囲に入ったワイバーンを小太郎が上から一気に倒すと下からシアが順番に亜空間収納に収納していく。シアは全部のワイバーンを収納すると再び上昇して小太郎の上に跨った。
「さて、ワイバーンは終わったね」
「うん。今日はワイバーンのステーキかな~」
「久しぶりに飛龍の肉もいいね」
「飛龍のステーキ~?」
「飛龍は少しだけ肉が固いから、母さんはいつもハンバーグにしてくれたね」
「おおお~、飛龍のハンバーグぅ~」
すると、
「貴様ら、誰がハンバーグだ」
「えっ、飛龍のハンバーグだけど……」
「そうそう。美味しいんだよ~」
「……我が美味しいだと」
「うん。マリアナが作る飛龍のハンバーグは最高なんだ~」
「マリアナって……」
「俺の母さんだよ、古代龍なんだ」
「……あのワイバーンの群れは、貴様達が倒したのか?」
「うん。奴らは肉が柔らかいからステーキだね」
「その……何だ……古代龍の子よ。ワイバーンの肉を分けてはもらえんかな?」
「何で?」
「この間子供が生まれてな、腹を空かせておるのだ。それで餌の乏しい北の島から餌を探しながら移動していたのだが……いい獲物だと追いかけてきたのだが……その……貴様らがステーキにするとか……その」
「ふうん。人間を襲ったりしない?」
「襲う理由がないだろう。我は子供の腹が膨れればそれでよいのだ」
「わかった。じゃあ巣に案内してよ。そこで出してやるよ」
「いいのか、本当に」
「その代わりにこれから先絶対に人間を襲うなよ」
そう言うと、シアと小太郎は飛龍の背中に乗って巣に向かった。
そこには、まだ生まれたばかりの飛龍の子供が腹を空かせて待っていたのだが……、
「食べないね~」
「どうしたのだ、何故餌を食べんのだ。ワイバーンの肉だぞ」
「おかしいな……回復魔法が効かないな」
「どうすればよいのだ……我が子を助けてくれんか、古代龍の子よ」
「うーん、飛龍は人化出来る?」
「朝飯前だ。これでどうだ」
そこには、体に布を巻いただけのまだ若い女性の姿が現れた。
「よし。その子を抱いて小太郎に乗ってよ」
「わかった。これでいいか?」
「よし、小太郎、ヨハネス子爵の屋敷まで頼むよ」
「おーけー、じゃあいくよ~」
シアと小太郎は人化した飛龍を連れてヨハネス子爵の屋敷に向かったのであった。
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