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第1章 川の流れに身を任せ
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多摩川沿いに桜の花が満開に咲き誇り、土手をピンクに染めている。
仕事へ向かう道すがら、東雲薫は思わず足を止めた。
桜に見惚れて足を止めるなんて、一体いつぶりかしら。
学生生活を終え会社勤めを始めて、気付けば何年も経ってしまっていた。
同じことの繰り返しの日々の中で何かに感動したり驚いたりすることがめっきり減っていたことに気付かされる。
心地良い春風が頬を撫でた。青く高い空が視界一杯に飛び込んで来る。
こんなに良い天気なのに、夜遅くまでデスクワークしなくちゃならない自分の人生を少し呪う。
ーっ。助けて!
川の方から助けを求める声がした。
上体を起こして河原の下の方を見やれば、幼い子供がジャバジャバと水を叩き溺れかけている。
薫は何も考えないまま勢いよく斜面を駆け下り溺れている男の子目掛けて川に飛び込んだ。
男の子の体に覆い被さるようにして後ろから羽交い締めにすると、河岸に向かってゆっくりと泳ぐ。男の子はまだ溺れていると思っているのか薫の腕の中で変わらずもがいている。
「もう溺れていないから暴れないで!」
薫の一喝で男の子は我を取り戻し、薫の腕の中に大人しく収まっていた。
ようやく河岸にたどり着いたは良いものの、まだ年端も行かぬ子供とはいえ全身ずぶ濡れの状態の男の子を陸に上げるだけの体力は薫に残されてはいなかった。
男の子の腰に腕を回して、這い上がれ!と男の子に叫ぶと男の子は川岸の草花にしがみつき転がるようにして川原になんとか上がることができた。
薫も男の子が川原に上がったのを見届けるや否や、同じように川原へ上がった。
春になり麗かな陽気に包まれているとはいえ、雪解け水の混じる冷たい川の中に入れば、体は震えるほど寒い。
男の子はその場に蹲り、震えている。
薫は鞄を置いていた土手に目を移した。小さいけれど体を拭くには十分な大きさのタオルが鞄の中にしまってあったはずだ。
しかし、辺りを見回してもそれらしい物は見つからない。
更にいえば、側にあるはずの野球場もサッカーゴールの姿もない。
どうやら随分と流されてしまったようだ。
先までの薫がよく知る川原とは違って殺風景な景色が広がっている。
ここ、どこ?
薫の胸は不安に苛まれた。
しかも、よく知らない小さい男の子が横でブルブルと震えている。
薫にできることは男の子の横でその小さな背中を優しく摩ることだけだった。
肝心の携帯電話も財布も鞄の中。
泣きたい気持ちで一杯だったけれど、そうしなかったのは単に隣にいる男の子に心配をかけてはいけないという一心からであった。
「怪我は、ない?」
薫が男の子の顔を覗き込むと、男の子は震える身体で薫に抱きついた。
「母上、お会いしたかったのです。」
男の子は薫を母親と勘違いしているらしい。
鼻水なのか涙なのか、はたまた川の水なのか色んなものが混じりあって顔がぐちゃぐちゃになっている。
母親じゃないよ、と言おうかとも思ったが彼のあまりにも必死な姿に何も言えなかった。
「もう大丈夫だからね。」
よしよし、と背中をさすってあげると肩をひくひくさせながらも彼は泣くのを止めた。
「としぞーう!としぞーう!」
土手の方から若い女性の声がこちらへ近づいてきたかと思うと、着物姿に時代劇のように髷を結った女性が小さな男の子に駆け寄った。
女性は自分が濡れることも厭わず、男の子を力強く抱きしめると、男の子も女性に抱きしめられたことで緊張の糸が切れたのか、わんわんと声をあげて泣き始めた。
女性こそがその男の子の母親のようであった。
息子も無事助けたし、一件落着だ。
とりあえず土手まで登って元いた場所まで戻ろう、と川原の斜面をゆっくりと登る。
斜面を上り切った薫の視界に広がる光景は、薫の知っている日野の街ではなかった。
無機質なコンクリートでできたビルや家々は姿を消し、一面に広がる田圃とその間に茅葺き屋根の家がぽつぽつとあるだけだ。
「すみません、この子を助けていただいたのに、何のお礼も伝えておらず…。」
土手から上がってきた女性が後ろから薫に声をかけた。
振り返れば、先ほど助けた小さな男の子の手を繋ぎ、恐る恐るといった風にこちらを見ている女性が立っていた。
「母上…?」
女性は目を見開いて薫を見た。
彼女の装いは、現代のそれではなく時代劇に出てくる町娘そのものであった。
「あ、えっと・・・。」
薫は女性に何と言えば良いのか考えがまとまらず、餌を求める鯉のように口をパクパクさせるだけで言葉が出てこな
かった。
「し、失礼しました。他人の空似でございます。」
ここはどこなのか?
貴方はなぜ時代劇みたいな格好をしているのか?
二人して私を母親と勘違いしているのは何故?
色々つっこみたいことが満載ではあるものの、やはり言葉が出ない。
「ここは、どこですか。」
ようやく口をついて出た言葉に女性はキョトンとして薫を見た。
「何処と申しますと、多摩川でございます。」
「そうではなくて、住所が知りたいんです。日野のどこなのか。最寄りの駅でも構いません!」
「ここは、石田村です。近場の宿場町までは少し遠いですけれど。」
「いしだ、むら??」
村なんて東京の奥地か離島ぐらいにしか存在しない。
遠い昔、江戸時代にはそう呼ばれている場所もあったらしいけれど。まさか、ね。
「私、石田村の彦五郎の妻、のぶとお申します。この子は私の弟、歳三と言いまして、このたびは歳三を助けていた
だき本当にありがとうございました。」
「あ、いえ、私は東雲薫と言います。」
会社勤めをしています、と言いかけたが、彼女の姿があまりにも薫の知っている現実からかけ離れていたせいで口に出せなかった。
「と、とりあえず、わ、私はこれで。」
これ以上不審な目を向けられるのが居た堪れなくなり、この場を去ることにした。
「母上!」
走り去ろうとする私を呼び止めたのは男の子であった。
どうあっても私を母親に仕立てたいらしい。
薫は深いため息をついた。
「坊や、私はあなたの母親ではないんです。貴方のお母さんはそこにいらっしゃるでしょ。」
「母上ではない!姉上だ!」
おっと、これは。と薫は息を呑んだ。
踏み込んでは行けない領域に踏み込んでしまったらしい。
「すみません。私も見間違うほど私達の母上に似ているものですから、歳三も勘違いをしているようです。」
「そういうことでしたか。」
あはは、と作り笑いを浮かべてその場を去ろうとしたが、男の子は行くなと言わんばかりに足にひっついて離さない。
「行ってはならぬ!」
困った薫に助け舟を出したのは女性だった。
「あ、あの、体が濡れてはお辛くありませんか。家はすぐ近くですし、体を温められてはいかがですか。」
薫にとって願ってもない申し出に、よろしくお願いしますと彼女の後をついていくことにした。
彼女の家は家というよりも屋敷という方がふさわしく、大きな門をくぐるとその先には立派な日本庭園と昔ながらの茅葺き屋根の家があった。
家の下男、女中らは薫の装いを見て、変なやつが来たと言わんばかりに怪訝な顔をしたが、のぶの「この人は歳三の恩人だから丁重にもてなすように」という言葉に薫から目を背け散り散りにどこかへ消えてしまった。
そして、すぐに着替えが用意され、風呂場へ案内され、気づけば薫は五右衛門風呂のお湯に浸かっていた。
ついさっきまでのんびり寝転がっていただけだったのに、よくわからない場所に連れてこられて今まで入ったこともなかった五右衛門風呂に浸かっている。
今日という日は半日も経っていないのに、もう随分と時が経ったように感じられた。
私は本当に、江戸時代に来てしまったのだろうか。
仕事へ向かう道すがら、東雲薫は思わず足を止めた。
桜に見惚れて足を止めるなんて、一体いつぶりかしら。
学生生活を終え会社勤めを始めて、気付けば何年も経ってしまっていた。
同じことの繰り返しの日々の中で何かに感動したり驚いたりすることがめっきり減っていたことに気付かされる。
心地良い春風が頬を撫でた。青く高い空が視界一杯に飛び込んで来る。
こんなに良い天気なのに、夜遅くまでデスクワークしなくちゃならない自分の人生を少し呪う。
ーっ。助けて!
川の方から助けを求める声がした。
上体を起こして河原の下の方を見やれば、幼い子供がジャバジャバと水を叩き溺れかけている。
薫は何も考えないまま勢いよく斜面を駆け下り溺れている男の子目掛けて川に飛び込んだ。
男の子の体に覆い被さるようにして後ろから羽交い締めにすると、河岸に向かってゆっくりと泳ぐ。男の子はまだ溺れていると思っているのか薫の腕の中で変わらずもがいている。
「もう溺れていないから暴れないで!」
薫の一喝で男の子は我を取り戻し、薫の腕の中に大人しく収まっていた。
ようやく河岸にたどり着いたは良いものの、まだ年端も行かぬ子供とはいえ全身ずぶ濡れの状態の男の子を陸に上げるだけの体力は薫に残されてはいなかった。
男の子の腰に腕を回して、這い上がれ!と男の子に叫ぶと男の子は川岸の草花にしがみつき転がるようにして川原になんとか上がることができた。
薫も男の子が川原に上がったのを見届けるや否や、同じように川原へ上がった。
春になり麗かな陽気に包まれているとはいえ、雪解け水の混じる冷たい川の中に入れば、体は震えるほど寒い。
男の子はその場に蹲り、震えている。
薫は鞄を置いていた土手に目を移した。小さいけれど体を拭くには十分な大きさのタオルが鞄の中にしまってあったはずだ。
しかし、辺りを見回してもそれらしい物は見つからない。
更にいえば、側にあるはずの野球場もサッカーゴールの姿もない。
どうやら随分と流されてしまったようだ。
先までの薫がよく知る川原とは違って殺風景な景色が広がっている。
ここ、どこ?
薫の胸は不安に苛まれた。
しかも、よく知らない小さい男の子が横でブルブルと震えている。
薫にできることは男の子の横でその小さな背中を優しく摩ることだけだった。
肝心の携帯電話も財布も鞄の中。
泣きたい気持ちで一杯だったけれど、そうしなかったのは単に隣にいる男の子に心配をかけてはいけないという一心からであった。
「怪我は、ない?」
薫が男の子の顔を覗き込むと、男の子は震える身体で薫に抱きついた。
「母上、お会いしたかったのです。」
男の子は薫を母親と勘違いしているらしい。
鼻水なのか涙なのか、はたまた川の水なのか色んなものが混じりあって顔がぐちゃぐちゃになっている。
母親じゃないよ、と言おうかとも思ったが彼のあまりにも必死な姿に何も言えなかった。
「もう大丈夫だからね。」
よしよし、と背中をさすってあげると肩をひくひくさせながらも彼は泣くのを止めた。
「としぞーう!としぞーう!」
土手の方から若い女性の声がこちらへ近づいてきたかと思うと、着物姿に時代劇のように髷を結った女性が小さな男の子に駆け寄った。
女性は自分が濡れることも厭わず、男の子を力強く抱きしめると、男の子も女性に抱きしめられたことで緊張の糸が切れたのか、わんわんと声をあげて泣き始めた。
女性こそがその男の子の母親のようであった。
息子も無事助けたし、一件落着だ。
とりあえず土手まで登って元いた場所まで戻ろう、と川原の斜面をゆっくりと登る。
斜面を上り切った薫の視界に広がる光景は、薫の知っている日野の街ではなかった。
無機質なコンクリートでできたビルや家々は姿を消し、一面に広がる田圃とその間に茅葺き屋根の家がぽつぽつとあるだけだ。
「すみません、この子を助けていただいたのに、何のお礼も伝えておらず…。」
土手から上がってきた女性が後ろから薫に声をかけた。
振り返れば、先ほど助けた小さな男の子の手を繋ぎ、恐る恐るといった風にこちらを見ている女性が立っていた。
「母上…?」
女性は目を見開いて薫を見た。
彼女の装いは、現代のそれではなく時代劇に出てくる町娘そのものであった。
「あ、えっと・・・。」
薫は女性に何と言えば良いのか考えがまとまらず、餌を求める鯉のように口をパクパクさせるだけで言葉が出てこな
かった。
「し、失礼しました。他人の空似でございます。」
ここはどこなのか?
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「ここは、どこですか。」
ようやく口をついて出た言葉に女性はキョトンとして薫を見た。
「何処と申しますと、多摩川でございます。」
「そうではなくて、住所が知りたいんです。日野のどこなのか。最寄りの駅でも構いません!」
「ここは、石田村です。近場の宿場町までは少し遠いですけれど。」
「いしだ、むら??」
村なんて東京の奥地か離島ぐらいにしか存在しない。
遠い昔、江戸時代にはそう呼ばれている場所もあったらしいけれど。まさか、ね。
「私、石田村の彦五郎の妻、のぶとお申します。この子は私の弟、歳三と言いまして、このたびは歳三を助けていた
だき本当にありがとうございました。」
「あ、いえ、私は東雲薫と言います。」
会社勤めをしています、と言いかけたが、彼女の姿があまりにも薫の知っている現実からかけ離れていたせいで口に出せなかった。
「と、とりあえず、わ、私はこれで。」
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踏み込んでは行けない領域に踏み込んでしまったらしい。
「すみません。私も見間違うほど私達の母上に似ているものですから、歳三も勘違いをしているようです。」
「そういうことでしたか。」
あはは、と作り笑いを浮かべてその場を去ろうとしたが、男の子は行くなと言わんばかりに足にひっついて離さない。
「行ってはならぬ!」
困った薫に助け舟を出したのは女性だった。
「あ、あの、体が濡れてはお辛くありませんか。家はすぐ近くですし、体を温められてはいかがですか。」
薫にとって願ってもない申し出に、よろしくお願いしますと彼女の後をついていくことにした。
彼女の家は家というよりも屋敷という方がふさわしく、大きな門をくぐるとその先には立派な日本庭園と昔ながらの茅葺き屋根の家があった。
家の下男、女中らは薫の装いを見て、変なやつが来たと言わんばかりに怪訝な顔をしたが、のぶの「この人は歳三の恩人だから丁重にもてなすように」という言葉に薫から目を背け散り散りにどこかへ消えてしまった。
そして、すぐに着替えが用意され、風呂場へ案内され、気づけば薫は五右衛門風呂のお湯に浸かっていた。
ついさっきまでのんびり寝転がっていただけだったのに、よくわからない場所に連れてこられて今まで入ったこともなかった五右衛門風呂に浸かっている。
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