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決裂

対立

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ご飯を食べて、お風呂に入りベッドに座っていると窓の方に気配を感じた。

「津薙ね。来ると思ってた。三若も来てくれたのね」
窓際に先日会った津薙がいた。隣に小柄な女の人が立っていた。名前は、考えなくてもわかった。

『美沙希様。またお目にかかれて嬉しゅうございます。このような状況でなければ、どれほどに良かった事でしょう』
複雑な気持ちを表すかのように微笑む津薙。
隣の三若が口を開く。
『美沙希様。本当に姫様によく似ていらっしゃって』
津薙と同じような優しい微笑みを浮かべた。
「ありがとう。早速聞くけど《巫女姫》の狙いがこの『石』の力ってどういう事なの?彼女は何をしようとしているの?私達は何をするの?私達も狙われてるの?」
立て続けに質問を投げかける。
津薙と三若が、顔を見合わせて重そうに答えた。
『《巫女姫》様が狙ってらっしゃるのは、その『石』に間違いはございません。ですが…』
そこで言葉を切った三若の後を津薙が引き取る。
『申し上げにくい事ですが、《巫女姫》様が直接、美沙希様方にお手をお出しになる事は出来かねます』
「って事は…まさか、姫の手紙に書いてあった事が本当だって…事?」
2人は何とも言えない表情をする。
その時、《巫女姫》を誰かと似ていると思った事を思い出した。
『美沙希様。残念ながら、今、美沙希様が思い浮かべていらっしゃる事、その通りでございます』

津薙と三若が去ってからも、しばらく放心していたかもしれない。眠れなかった。
朝を待って、利津と若葉に連絡を入れて早めに学校に向かう。葉月と理沙と未奈がこないだろう屋上に人目につかないように集まった。ドアは鍵が掛かってるが、ドアの隣の窓の鍵、実は壊れていて開く事を知ってる。
2人に、昨日、津薙と三若から聞いた話をする。
「こんな早くから呼び出すから、何かあったんだとは思ったけど」
眠そうな利津に不安げな表情の若葉。
「話の展開についていけませんわ」
「つまり、私達が姫の助けになって《巫女姫》と対決!って言っても、直接対決は出来ないわけで…」
「だとすれば、あたし達と同じように《巫女姫》を助ける誰かがいる。と」
私の言葉に利津が続けて言った。
「なんだか急展開ですわね。それで美沙希の考えは?」
「そこよ。《巫女姫》の助けになる誰かは『誰が《巫女姫》と似ているか』を考えればいいのよ」
利津と若葉が目を丸くして顔を見合わせ、私を見る。
「美沙希、あんた本気で言ってんの?」
私は2人を見て大きく頷いた。
「間違いない。この話を知ってるのは私達だけだし…それに…」
言いながら、姫からの手紙を取り出して2人に差し出す。手紙を受取り、読み進めていく2人の顔がみるみる驚きと戸惑いを帯びていく。
「美沙希、これ…」
「信じられませんわ…」
「気持ちはわかる。私もずっとそうだった。だけど、私達と対立するのは、《巫女姫》に手を貸そうとしているは葉月よ。そして、利津と若葉と同じように、理沙と未奈がいる」
「そんな…じゃ、わたくし達は葉月達と?そんな事、考えたくありませんわ」
若葉の顔が曇る。
「確かにそうだけど、こっちがそう思ってたって向こうはその思いに応えちゃくれない」
利津が何かを吹っ切るように呟いた。
「そうですわね」
若葉も頷く。
「昨日の友は今日の敵ってね。私達は姫を守るしかない」
気が重い。だけど、姫の為に今ある自分達の為に友達と対立するしかない。

教室に戻った私達に葉月と理沙、未奈が近付いてくる。昨日までの顔付きとどこか違う。彼女達も私達と向かい合う。という事だろう。
葉月が顔で『他の教室へ』と合図する。
誰も使ってない教室へ移動する。
「はーい、《姫巫女》様、ようこそ」
悪戯っぽい微笑みを浮かべて、理沙が明るく言った。
「はーい、お招きありがとう。《巫女姫》様」
同じような明るさで答えたのは利津。
これから対立しようとしてるのに、緊張感のない。
「やめなさい。2人とも。大人気ない」
葉月とハモる私。
「意外な光景ですわね。大人っぽい2人がまるで子供の喧嘩ですわ」
「これで話し合いになるのかなぁ?」
若葉と未奈は呆れ顔だ。

しばらくの沈黙。
先に口を開いたのは葉月だった。
「美沙希。最初から気がついてたわよね。私達が美沙希達とは違う内容の夢を見てたって事」
そう言って、笑みを浮かべた葉月の顔は自信に満ちているように見えた。
「知ってたわ。姫からの手紙で。まさかと信じられなかったけど、本当だったなんて皮肉ね」
「そう。だったら話は早いわね。《巫女姫》様の為にあんた達3人のその『石』、私達にちょうだい」
理沙が手のひらを差し出す。
「そうはいかない。渡せるわけない。『石』から手を引くのはそっちだよ」
差し出された手を利津が払った。
「冗談でしょ?《巫女姫》様の為にも『石』はもらうわ!」
未奈が勢いよく言って胸を張る。
「そちらが《巫女姫》の為だと仰るなら、わたくし達だって《姫巫女》様の為に『石』は守りますわ!」
若葉が返す。
「ふふっ。《姫巫女》がどうなろうと知った事?彼女が消える事が目的なのよ?」
「葉月…そんな事させない。姫は私が守ってみせる」
そう言って、私達3人は教室を飛び出した。
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