ONE

四百珊瑚

文字の大きさ
上 下
31 / 60
継続編

第三十一話 歪んだ愛情

しおりを挟む
 「愛してるよ、はるか。」

 その言葉が暗闇のなかで響き渡り、はるかは目を覚ました。大量の汗をかき、過呼吸になりながら起きる。最近は同じ夢を見て、同じように苦しみながら起きる。

 「また同じ夢…。」

 目から涙が溢れた。目を擦りながら、ダイニングへ向かう。ダイニングには朝食の匂いが漂っていた。

 「あらおはようはるか。」

 そこには料理をしている母がいた。母に実際に会うのは数週間ぶりだ。

 「ごめんなさいね。昨日は疲れていて、早く眠ってしまったわ。昨日の帰りは遅かったのね?体は大丈夫?」

 昨夜もはるかは仕事の都合で深夜に帰宅した。母はもう寝てしまっていて、久々に母の姿を見て、話したいのは山々だったが、起こすのも悪いと思い、入浴した後就寝した。

 「大丈夫だよ!元気いっぱい!」

 全エネルギーを振り絞って無理やり笑顔を作った。

 「そう…。ならよかったわ。ごめんなさいね、実の家族なのになかなか会えなくて…。そういえば、とはうまくいってる?」

 「え?うん…。おとうさんとっても優しいよ…。」

 「そう…。よかったわ。でも、何かおとうさんとうまくいかないことがあったら、私に相談していいわよ。まだ難しいこともあるでしょ。」

 「そうだね…。だけど、お母さん、ずっと悲しくて、寂しかったでしょ。私も寂しかった。だけど、折角に巡りあえて再婚したんだから、娘の私に気を使わず、幸せになって!」

 「ふふっ。大人らしいことを言うようになったわね。だけどあなたはいつまでも私の愛しい娘よ。」

 「えへへ。ママ大好き!」

 母からの優しい言葉に喜び、母の懐にはるかが抱きついた瞬間、ダイニングの扉が開いた。

 「おぉ!おはようのぞみさん、それにはるか!」

 はるかのが現れて、はるかの母とはるかに挨拶した。

 「おはようございます文人ふみとさん!」

 それに対してはるかの母が返事をした。

 「あ、おはようお義父さん…。」

 はるかも返事をした。

 「あ、そういえば昨日刑事さんがいらしたのよ。何か近所の方から、うちから騒音がするって言われたらしくてね。二人とも何か知らないかしら?」

 昨日の神谷たちとのやり取りをふと思い出したのぞみが二人に聞いてみた。

 「いや、僕は知らないな。」

 文人が答えた。

 「…。私も、…知らない。」

 しばらく間をおいて、はるかも返事をした。

 「やっぱりそうよねぇ…。後で刑事さんにお伝えしなくちゃ。あらいけない!目玉焼きが焦げちゃうわ!ちょっと待ってて!」

 そう言って母が慌ててキッチンに向かった。そして、ダイニングにおかれた大きな机の周りに並んだ椅子に腰掛けていたはるかの対面に、義父も座った。

 「

 のぞみに聞こえないよう、義父が小声ではるかに囁く。

 「…。」

 はるかは何も言わなかった。いや、
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

裏切りの代償

志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。 家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。 連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。 しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。 他サイトでも掲載しています。 R15を保険で追加しました。 表紙は写真AC様よりダウンロードしました。

夜の詩と記憶

りんごひめ
恋愛
大学生のアキラは、毎日通うカフェで運命的な出会いを果たす。カフェの静かな時間、彼の目に留まったのは、透き通るような美しさを持つ一人の女性。彼女の名はエミ。彼女が持っていた本『夜の詩』に引き寄せられたアキラは、彼女との会話をきっかけに心を通わせていく。エミは優しく、明るい笑顔を持ち、アキラの心に深い感動を与える。 二人は日々のデートを重ね、幸せな時間を過ごす。海岸での散歩、カフェでの静かなひととき、彼女の笑顔が心を温かくする。だが、突然の悲劇が二人を引き裂く。この悲劇とアキラはどうぶつかっていくのか…?

竜焔の騎士

時雨青葉
ファンタジー
―――竜血剣《焔乱舞》。それは、ドラゴンと人間にかつてあった絆の証…… これは、人間とドラゴンの二種族が栄える世界で起こった一つの物語――― 田舎町の孤児院で暮らすキリハはある日、しゃべるぬいぐるみのフールと出会う。 会うなり目を輝かせたフールが取り出したのは―――サイコロ? マイペースな彼についていけないキリハだったが、彼との出会いがキリハの人生を大きく変える。 「フールに、選ばれたのでしょう?」 突然訪ねてきた彼女が告げた言葉の意味とは――!? この世にたった一つの剣を手にした少年が、ドラゴンにも人間にも体当たりで向き合っていく波瀾万丈ストーリー! 天然無自覚の最強剣士が、今ここに爆誕します!!

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

サラマ・アンギュース~王位継承者

若山ゆう
ファンタジー
神の民〈サラマ・アンギュース〉を探し出せ――第一級神官にして第三王位継承者のエルシャは、300年ぶりといわれる神託を聞いた。 サラマ・アンギュースとは、神の力を宿すという不思議なかけらの持ち主。その力には破壊・予見・創造・操作・記憶・封印の6種類があり、神の民はこれらの神力を操るが、その詳細やかけらの数はわかっていない。 神は、何のために彼らを探し出せと命じたのか? 絶大な力を誇る彼らが、人々から忌み嫌われる理由とは? 従者であり親友のフェランとともに旅に出たエルシャは、踊り子の少女ナイシェとの出会いをきっかけに、過酷な運命に身を投じることとなる――。 勇気と絆に彩られた、戦いの物語。逃れられない運命の中で、彼らは何を失い、何を得るのか。 ※「完結」しました! ※各部初めに、あらすじ用意しています。 ※本編はじめにワールドマップあります。

処理中です...