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四百珊瑚

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継続編

第二十七話 怒り

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 はるかが転校してきて3日経った。はるかは当たり前のようにクラスに馴染み、はるかの周りにはいつも人だかりができていた。
 しかし、僕は彰悟以外に未だに友達がいない上、元々いじめられていたと言うこともあって、どうも人の集まりは苦手だ。そしてクラスメイトたちも僕のことを敬遠してる節がある。はるかの隣の席で、このままずっと気まずい気持ちで座しているのも気が引けたので、僕はトイレで用を足すことにした。
 そういえば今日はもう昼休みだと言うのに彰悟と一度も喋っていない。今日に限らず3日程前から彰悟に避けられているような気がしなくもない。そんなまさかなと思いつつ、トイレのドアを開けた。

 「お、当人のお出ましだぜ~!」

 すると突然高らかな声が聞こえてきた。少し驚きながら、中を見ると、三人の生徒がいた。ついこの間まで彰悟と一緒に僕をいじめていた奴等だ。確か名前は末永と、それから、名前は忘れたが末永の付き人じみた生徒が二人。

 「おい、五代!最近彰悟の調子はどうだぁ?」

 驚くべきことに末永から彰悟の話題が飛んできた。何か知っているのか? 

 「五代くぅん。君、これから矢本とはあまり関わらない方がいいぞ。矢本も、お前とはいやいや付き合ってた、って言ってたぜ!」

 末永がまた口を開いた。

 「なんだって?!彰悟がそんなことを?」

 「そうだ。あいつはとことん自己中なやつでな。お前のこといじめて悪いことしたなぁって罪悪感から、お前と仲良くしてやってたるしいが、どうやらそれにも飽きたみたいでな。ごめんな。」

 「

 僕は末永に反抗した。

 「なんだとてめぇこのやろう!お前、末永の言うことが信じられねぇのか?!」

 取り巻きの一人が、今にも殴りかかりそうな気迫で、荒々しい声で僕を怒鳴り付けた。昔の僕なら間違いなく怯えて何もできなかっただろう。しかし、今の僕は違う。今まで数々の怪物と戦ってきた。その度に何回も死にかけた。こんなやつ、もはや恐れるに値しないと言わんばかりに僕も臨戦態勢に入った。

 「おいおい!まぁ、落ち着け迫田!」

 意外なことに末永が止めに入った。

 「ま、今日はこの辺でおいとまするわ!よく考えとけよ!」

 満面の笑みを浮かべた末永と、対照的に無愛想な表情を浮かべた取り巻きは僕に背を向けて、去っていった。

………

 「あいつ、ほんとにいじめられてた五代か?めっちゃキャラ変わってね?俺に反論するなんてさ。」

 トイレから出て数歩歩いたところで、末永と迫田と一緒にいた、谷崎がそう言った。

 「おい?お前今なんていった?」

 先程まで笑みを浮かべていた末永の顔が、不気味に歪み始めた。

 「え?だから五代が別人みたいだったって…。」

 「その後だよ!てめぇ何て言った?」

 「五代が、俺にはん…」

 言い終わらずに末永の拳が飛んだ。

 「ぐはっ!」

 末永の拳は、谷崎の腹にもろに食い込んだ。谷崎はその場に倒れこんだ。

 「俺じゃねぇだろ!てめぇなんかなにもしてねぇだろうが!おい谷崎ぃ!」

 そう言って末永は倒れた谷崎をさらに蹴り続けた。

 「ご、ごめんなさい!」

 谷崎は必死に謝るも、末永は止まる気配がない。

 「おい!よせって!」

 慌てて迫田が止めに入った。

 「うるせぇなぁ!カスは黙ってろよ!」

 末永はさらに迫田を殴り飛ばした。流石に末永も息があがってきて、動きを止めた。

 「おい!どうした!」

 末永が動きを止めて数秒後に、異変に気づいた教員がやって来てそう尋ねた。

 「あぁ、先生すいません。こいつら、つまんないことで喧嘩し出して…。僕が止めようとしてんですが、ダメでした。」

 末永はそう言った。

 「本当か?お前が二人を殴り飛ばしたんじゃないのか?」

 「そんな…。僕、そんなことしてないです…。な、そうだよな、迫田、谷崎。」

 末永は、教員に背を向けて、そう言いながら二人を睨み付けた。

 「そ、そうです…。俺たちが勝手に喧嘩し出して、末永は、俺たちを止めようとしてました…。」

 迫田は末永に口裏を合わせた。この時谷崎は気を失いかけていて、まともに喋れなかった。

 「…。そうか、とりあえず二人を保健室につれていって、そのあと詳しい話を聞こう…。末永は後で職員室に来るように…。」

 教員はそう言って、他の教員も呼んで二人を保健室に連れていくため、その場から去っていった。

 「あ~。疲れたぁ。」

 あくびをしながら末永は次の授業に向かっていった。
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