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四百珊瑚

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継続編

第二十四話 転校生

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 一が高校に入学してすでに3ヶ月が経った。期末テストが1ヶ月後に迫り、一は休み時間にも勉強し始めたのに対し、彰悟は勉強していなかった。

 「お前もう勉強してるの?!早いなぁ。」

 彰悟は少し驚いていた。

 「まだみんな休み時間はアイドルとかテレビとかゲームの話ばっかしてるぞ。」

 「僕は要領が悪いから…。それに、勉強は好きな方だから!」

 「ふーん、そうなんだ。」

 彰悟は少しどうでもよさそうな感じで返事をした。

 「おーい、彰悟。」

 すると彰悟の友人が彰悟に声を掛けた。

 「あ、わりぃ。またな!」

 と言って、彰悟は一に背を向けた。最近彰悟は一以外の生徒と一緒にいることが増えた。事件がきっかけで、仲良くなり始めたときは他の生徒は不思議そうに二人を見ていた。なにせつい昨日までいじめていた者といじめられていた者が幼い頃からの親友のように接しあっていたのだ。周りは驚いており、彰悟の友達も近寄りがたそうにしていた。
 だが、最近になって彰悟が一以外の友達とまた仲良くなり出したのに対し、一は未だに彰悟以外には友達と呼べる存在がいなかった。

………

 「おい!最近お前少しおかしいぞ?どうしたんだ?五代なんかとつるむようになりやがって?俺たちには随分冷たくなったな?」

 人通りの少ない階段の踊り場で、彰悟は友人3人から詰問されていた。

 「別に俺が誰と仲良くしたっていいだろ。それに、お前らにも話しかけられたら、こうやってついてきたりしてるだろ。」

 彰悟は言い返した。

 「それはそうだが…。だって五代だぞ?!お前、この前まで俺らと一緒にあいつのことをいじめて楽しんでただろ。」

 「それはもう昔のことだ。それに、あの頃の俺は間違ってた。本当はいじめなんかしたくなかった。その時の償いもしたくて今は五代と仲良くさせてもらってるんだ。」

 「償いねぇ。それじゃお前は仕方なく仲良くしてあげてるわけだ。」

 3人組の中でも主犯格の男子、末永が彰悟を挑発するようなことを言う。

 「違う!そんなんじゃない!俺は一のことが好きだ!」

 彰悟は少しムキになってそう言った。

 「あいつのことが好きだ!か、お前ひょっとしてこっちか。フハハハハハ。」

 末永は彰悟をさらに挑発する。

 「ち、違う!俺はゲイじゃない!」

 何故か彰悟はムキになって叫んだ。

 「ふん。まぁいい。とりあえずお前、あいつと関わるのは辞めろ。お前らが仲良くしてるの見てるだけで俺は吐き気がするんだよ。特に俺は五代の笑顔が気に入らねぇ!あいつには苦しみがお似合いなんだよ!」

 末永はとても怒っているようだった。壁を思い切り蹴り、廊下全体が揺れた。

 「な?!なんだと?!そんなことできるわけないだろ!」

 「お前、嫌だって言うのか?この俺の言うことが聞けねぇのか?!あ?!」

 すさまじい気迫で末永は怒鳴り散らす。

 「まぁ、俺も鬼じゃねぇ。一週間やる。それまでに腹くくれ。お前は賢いやつだって信じてるぜ。お前は俺にとって利をもたらすやつだからな。人望もあるし、これからもお前とは仲良くやりてぇのよ。を期待してるぜ。ククク。」

 末永と他の二人は捨て台詞を残し、彰悟を背に去っていった。彰悟は驚いていた。なにせ彰悟は末永のことをずっと心からの親友だと思っていたのだ。まさか末永が自分のことを都合のいい道具のように思っているとは、この瞬間まで全く気づかなかった。彰悟のなかで何かが萎縮し始めたとき、朝礼の予鈴が鳴り響いた。

………

 「あ、おかえり!」

 彰悟が教室に入ると、真っ先に一が声をかけてきた。

 「あ、あぁ。」

 彰悟はそっけなく返事をした。なにか様子が変だ、と一は彰悟の異変に気づいた。その直後に教室の黒板側の扉が開き、担任の田中先生が登場した。

 「おーい、お前ら席につけぇ。朝礼始めるぞぉ。」

 どこか気の抜けた、しかし教室中に響き渡るような田中先生の独特の声がいつもと変わらず聞こえた。

 「えー、今日はな、まず、お前らに紹介する者がいる。おーい、入ってきていいぞ~。」

 田中先生がそういうと、ガララっと扉が開き、目を疑うほど美しい少女が姿を見せた。しかし僕はこの子をどこかで見たことがある気がする…。他校の制服を着ているから転校生だろうか。見たとしたら、どこでだろうか…。
 普通なら「おぉー!」とか騒ぎだす者がいるはずだが、少女のあまりの美しさに皆、言葉を失い、教室は静寂に包まれた。少女は美しい顔立ちをしていたが、どこか幼い雰囲気を放っていた。目はぱっちりと大きく、色白で鼻筋は細く、色白であった。金髪でロングヘアー、身長は140cm程で、腰の辺りまで髪が垂れていた。
 クラスメイトたちの目の前を颯爽と歩き、教卓の前で立ち止まった少女は、田中先生に促されるよりも前に自ら口を開いた。

 「はじめまして!わたし、芳野はるかっていいます!これからよろしくね!」

 少女が自己紹介をすると、なぜか教室が妙にざわつき始めた。そう思った次の途端、一気に皆が叫びだした。

 「えー!うそ!芳野はるかってあの芳野はるか?!あのアイドルの?」

 「うそ!はるるじゃん!え?!ほんと?!」

 「え?!誰?!有名人?!」

 「ドュフフフフフ!はるるタソブヒヒ!ktkrwwwwwwwwww」

 どうやら芳野はアイドルのようだ。それもかなり人気があるらしい。アイドルに全く興味のない僕でもどこかで見たことがあるくらいなのだから、おそらくすごい人気なのだろう。それにしても皆の叫びようは凄かった。

 「ほらほら皆落ち着け!知ってるものもいると思うが、芳野は芸能活動をしていて、大変忙しい。もしかしたら今後、仕事の関係で学校を休むこともあるかもしれない。だけど、芳野は普通科の高校で勉強して、大学にも進学し、ごく普通の16歳として生活したいそうだ。みんな、快く芳野を迎えてくれ。席はそうだな…。角の空いてる席があるからそこにしよう。隣の席は…五代だな。よし、五代、これも何かの縁だ、昼休みか放課後に芳野に軽く学校案内をしてやってくれ。頼んだぞ。」

 「えー?!五代が隣ぃ?!私が隣がいいー!」

 「マジかよ?!俺が隣がいい!」

 「ブヒヒ。拙者ははるるタソの吐いた二酸化炭素吸ってるだけで満足でござる!」

 みんなの凄まじい文句の嵐が起こった。なんか明らかに一人変な方がいらっしゃるが面倒くさそうだから放っておこう…。
 芳野はそれらを振り払うかのように歩きだし、僕の隣の席に座した。

 「君、五代くんて言うの?よろしくね!名前は何て言うの~?」

 「…一。」

 それにしても田中先生も割りと適当な理由で僕を選ぶとは…いい先生なのだが…。正直僕は、この芳野という少女が苦手だ。話し方がいちいち鼻につくと言うか、タイプではない、とでも言ったらよいのだろうか。。こんな僕よりも、芳野のことを良く思っている生徒たちはたくさんいるようだし、他の生徒にやらせた方がいいのではと思ってしまう…。だが、先生から頼まれた以上、僕はやらないと罪悪感を感じる性質であった。

 「一くんかぁ。五代一くん!数字だらけだね!あとで一緒に校内ブラブラするの、楽しみ!」

 僕はちっとも楽しみじゃない。それに、やはりいちいちムカついてしまう。なんかこう、。僕ははぁっと深いため息をつき、これからの学校生活に波乱が満ちそうな予感がしていた。 。
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