7 / 60
昇天編
第七話 刑事
しおりを挟む
刑事、神谷光蔵は疲れきっていた。喫煙所のベンチに腰掛け、頭を抱えて「はぁっ…。」と深いため息をついた。そしてジャケットのポケットからセブンスターのソフトパックを取りだし、煙草を吸いはじめた。天然パーマが若干入ったボサボサの髪にやや黒い皮膚と180cmの高い身長、年は40代半ばだが30代と言われても違和感のない男前なルックスの神谷には煙草がよく似合っていた。
「あーっ!神谷さん!まーたこんなところでタバコなんか吸ってー!」
と甲高い声で叫んでいるのは神谷の後輩、近藤桜だ。身長は150cm前後、年は25歳。警察官には身長制限があるのだが、ギリギリでその制限を乗り越えた近藤は中学生くらいに見える。髪型はショートボブで、メイクはナチュラルで童顔、非常に可愛らしい容姿をしており、見かけによらず強気な性格をしている。一部の男性職員の中には熱烈なファンもいる。しかしこの近藤、身長はギリギリだが大学は名門大学の法学部卒で、警察官採用試験ではかなりの高得点で合格した。しかも、教養試験だけでなく、体力検査などの試験を含めてだ。ただ、少し天然である。
「もー!神谷さん!そんなもん吸って体ボロボロにしてる暇あるなら資料整理なんなりすることがあるでしょ!」
「いやー、桜ちゃん、おじさんをいたわってよ~。それと俺、煙草吸うと元気がでる体質なの。そんな俺も昨日徹夜で野球場周辺の捜索やってくたくただよ~。」
「こんなおじさんいたわる必要ありません!私もて・つ・や、でした!さっさと仕事してください!」
と、この二人の夫婦漫才のような会話が始まると、もう他の者は手の施しようがない。もはやこの鳴神警察署特務課では毎度恒例の光景となりつつある。
「仕事っていったってこんな場末の部署のダメなおっさんがやることなんかないよ~」
と、まったりとした口調で神谷は言う。
「んも~!なんでこんなダメなオッサンが刑事なの~!神谷さんそんなだからいつまでたっても出世できないんですよー!」
と、かなり失礼なことを上司に向かって近藤はズカズカと言う。
「ちょっとちょっとそんなこと言わないでよ~桜ちゃん。僕はこの鳴神警察署の中で巡査部長として立派に仕事をしてるよ!市内のおばちゃんの中には僕のファンだっているよ!」
そうなのだ、この神谷と言う男、警察官らしからぬ物腰柔らかすぎる言動から地域のおばさまから熱烈に指示されているのだ。おばさまだけでなくご老人や子供からも人気がある。いや、というよりはむしろ子供からなめられているのかもしれない。
「んなことどうでもいいです!神谷さんほんとは優秀な人なのに!これじゃ刑事の才能の宝の持ち腐れですよ!」
意外なことに神谷は警察組織きっての優秀な刑事だ。国家公務員Ⅰ種試験に合格し、俗に言うキャリア組になれた可能性が高いとも言われている近藤もその能力は認めているほどだ。身体能力は軍人並みと噂されており、意外なことに非常に頭も切れる。操作において判断力、分析力、記憶力、観察力、行動力、どれをとっても非常に優秀だ。
しかしそんな優秀な二人が鳴神警察署の窓際部署である特務課にいるかというと、まぁそれには様々な理由があるのだ。
「おっ!桜ちゃんたまには俺のこと褒めてくれるじゃん!もっともっと褒めて~」
「んもう!こんなおっさんとコンビなんて嫌~!」
「しょうがないじゃん、桜ちゃんまだ交番勤務から刑事になって何ヵ月かしかたってないんだからぁ。こんな優しい先輩が色々教えてあげてるんだから感謝しなさいよ~。」
「散々遊ばれてるの間違いじゃないですか?っていうか、こんな無駄話してないでさっさと聞き込み調査行きますよ!」
近藤は強引に神谷の手首を引っ張り、外に連れ出そうとした。
「いててっ!桜ちゃん、ちょっそんな引っ張んないでぇ。ダンディーな俺とデートしたい気持ちはわかるけどぉ。」
「誰がこんな冴えないおっさんとデートなんかいくもんですか?!つまんない冗談言ってないでさっさと歩いて下さい!」
こうして徹夜明けの二人の凸凹コンビの1日が始まった。
「あーっ!神谷さん!まーたこんなところでタバコなんか吸ってー!」
と甲高い声で叫んでいるのは神谷の後輩、近藤桜だ。身長は150cm前後、年は25歳。警察官には身長制限があるのだが、ギリギリでその制限を乗り越えた近藤は中学生くらいに見える。髪型はショートボブで、メイクはナチュラルで童顔、非常に可愛らしい容姿をしており、見かけによらず強気な性格をしている。一部の男性職員の中には熱烈なファンもいる。しかしこの近藤、身長はギリギリだが大学は名門大学の法学部卒で、警察官採用試験ではかなりの高得点で合格した。しかも、教養試験だけでなく、体力検査などの試験を含めてだ。ただ、少し天然である。
「もー!神谷さん!そんなもん吸って体ボロボロにしてる暇あるなら資料整理なんなりすることがあるでしょ!」
「いやー、桜ちゃん、おじさんをいたわってよ~。それと俺、煙草吸うと元気がでる体質なの。そんな俺も昨日徹夜で野球場周辺の捜索やってくたくただよ~。」
「こんなおじさんいたわる必要ありません!私もて・つ・や、でした!さっさと仕事してください!」
と、この二人の夫婦漫才のような会話が始まると、もう他の者は手の施しようがない。もはやこの鳴神警察署特務課では毎度恒例の光景となりつつある。
「仕事っていったってこんな場末の部署のダメなおっさんがやることなんかないよ~」
と、まったりとした口調で神谷は言う。
「んも~!なんでこんなダメなオッサンが刑事なの~!神谷さんそんなだからいつまでたっても出世できないんですよー!」
と、かなり失礼なことを上司に向かって近藤はズカズカと言う。
「ちょっとちょっとそんなこと言わないでよ~桜ちゃん。僕はこの鳴神警察署の中で巡査部長として立派に仕事をしてるよ!市内のおばちゃんの中には僕のファンだっているよ!」
そうなのだ、この神谷と言う男、警察官らしからぬ物腰柔らかすぎる言動から地域のおばさまから熱烈に指示されているのだ。おばさまだけでなくご老人や子供からも人気がある。いや、というよりはむしろ子供からなめられているのかもしれない。
「んなことどうでもいいです!神谷さんほんとは優秀な人なのに!これじゃ刑事の才能の宝の持ち腐れですよ!」
意外なことに神谷は警察組織きっての優秀な刑事だ。国家公務員Ⅰ種試験に合格し、俗に言うキャリア組になれた可能性が高いとも言われている近藤もその能力は認めているほどだ。身体能力は軍人並みと噂されており、意外なことに非常に頭も切れる。操作において判断力、分析力、記憶力、観察力、行動力、どれをとっても非常に優秀だ。
しかしそんな優秀な二人が鳴神警察署の窓際部署である特務課にいるかというと、まぁそれには様々な理由があるのだ。
「おっ!桜ちゃんたまには俺のこと褒めてくれるじゃん!もっともっと褒めて~」
「んもう!こんなおっさんとコンビなんて嫌~!」
「しょうがないじゃん、桜ちゃんまだ交番勤務から刑事になって何ヵ月かしかたってないんだからぁ。こんな優しい先輩が色々教えてあげてるんだから感謝しなさいよ~。」
「散々遊ばれてるの間違いじゃないですか?っていうか、こんな無駄話してないでさっさと聞き込み調査行きますよ!」
近藤は強引に神谷の手首を引っ張り、外に連れ出そうとした。
「いててっ!桜ちゃん、ちょっそんな引っ張んないでぇ。ダンディーな俺とデートしたい気持ちはわかるけどぉ。」
「誰がこんな冴えないおっさんとデートなんかいくもんですか?!つまんない冗談言ってないでさっさと歩いて下さい!」
こうして徹夜明けの二人の凸凹コンビの1日が始まった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。
ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」
そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。
長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。
アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。
しかしアリーチェが18歳の時。
アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。
それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。
父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。
そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。
そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。
──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──
アリーチェは行動を起こした。
もうあなたたちに情はない。
─────
◇これは『ざまぁ』の話です。
◇テンプレ [妹贔屓母]
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)電子書籍発売中!
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
どうぞお好きに
音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。
王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる