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彼のことを知ったのは、今の学校に転校する一ヶ月前のことだった。
私はその時、年端も行かない少女たちが何人も行方不明になっていることが許せなくて、誘拐事件の調査をしていた。
親の知り合いにいる警察関係者をお酒で酔わせて話を聞いたり、近隣の住民に聞き込みを行ったりして情報を集めていた。
けれど、どれだけ探して見ても痕跡は一切見つからなかった。随分と慣れているのだろう。いかに私が聡明であると言っても警察ですら難航している事件を解明することは出来なかった。
だから、あの出会いは本当に偶然と幸運の産物と言えるだろう。
街の外れにある裏山。近くには不法投棄現場があり、人の気配はない。誘拐をするには打ってつけのような場所だった。
そこを調査していた時に本当に偶然見つけてしまったのだ、私と同じくらいの歳の一人の少年の姿を。
その少年の近くには大きな黒い鞄があって、何かを待っているようだった。
私はその少年のことが気になって、息を殺して観察し続けていると、やがて一台のワゴンがやってきた。恐らく迎えの車なのだろう。
彼は重そうに鞄を持ち上げ、車のトランクにそれを仕舞いと車に乗車すると、そのままどこかに行ってしまった。
聡明な私は見逃さなかった。彼が鞄を持ち上げた時、その鞄が中に何かいるように少しだけ動いたのを。
「見つけた」
私はその時、年端も行かない少女たちが何人も行方不明になっていることが許せなくて、誘拐事件の調査をしていた。
親の知り合いにいる警察関係者をお酒で酔わせて話を聞いたり、近隣の住民に聞き込みを行ったりして情報を集めていた。
けれど、どれだけ探して見ても痕跡は一切見つからなかった。随分と慣れているのだろう。いかに私が聡明であると言っても警察ですら難航している事件を解明することは出来なかった。
だから、あの出会いは本当に偶然と幸運の産物と言えるだろう。
街の外れにある裏山。近くには不法投棄現場があり、人の気配はない。誘拐をするには打ってつけのような場所だった。
そこを調査していた時に本当に偶然見つけてしまったのだ、私と同じくらいの歳の一人の少年の姿を。
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私はその少年のことが気になって、息を殺して観察し続けていると、やがて一台のワゴンがやってきた。恐らく迎えの車なのだろう。
彼は重そうに鞄を持ち上げ、車のトランクにそれを仕舞いと車に乗車すると、そのままどこかに行ってしまった。
聡明な私は見逃さなかった。彼が鞄を持ち上げた時、その鞄が中に何かいるように少しだけ動いたのを。
「見つけた」
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