勇者パーティーから追放されたけど、最強のラッキーメイカーがいなくて本当に大丈夫?~じゃあ美少女と旅をします~

竹間単

文字の大きさ
上 下
169 / 172
【第八章】 美少女と、研究施設で罪を知る

●169

しおりを挟む

「ヴァネッサさん?」

「正直、前半の話にはついていけてないけれど。後半の件に関しては口を挟ませて」

 話に混ざるのは構わないが、何も知らないはずのヴァネッサは、俺とクシューとの会話に対して何を言うつもりなのだろう。

「えっと、何か気になる点でもありましたか?」

「あったわ。リディアが打算的にショーンに近づいたことに対する、ショーンの反応よ」

 戸惑う俺にヴァネッサは、自分が何に意見したいのかを明瞭に告げた。

「ショーンはリディアに騙されたってショックを受けているみたいだけど、それって何かおかしくない? ショーンは別にリディアに金品を騙し取られたわけじゃないわよね? ただ解説を交えながら、一緒に世界を見て回っただけなんでしょ?」

「はい」

「それのどこにショックを受ける要素があるのよ」

 どこにって、リディアは俺の正体を知っているからこそ近づいてきて、俺の能力のことを知っていたのにあえて黙っていて、そのまま一緒に旅をして…………あれ。
 俺は、特にリディアから不利益を被るようなことをされた経験がない。
 真実を教えてもらえなかったのはその通りだが、それは俺がリディアと旅をしなかったとしても、同じことだ。

「狙いがあって近づいたという、最初の出会い方は良くなかったのかもしれないけど、初対面が最悪なことなんていくらでもあるわよ。大事なのは、その後どう行動するかでしょ。旅の中で、ショーンはリディアに酷いことをされたの?」

「酷いことは……されてません」

 痴女のような振る舞いをされたことはあるが、俺が嫌がったらやめてくれた。
 武闘大会に参加させられたこともあるが、あれだってリディアが勝手に参加登録をしたわけではない。最終的に参加を決めたのは俺だ。
 俺が潜入した盗賊団のアジトにも、リディアは助けに来てくれた。

「ショーンくんと私の出会いも、決して良いものではなかったと思います。あのときの私は、村人の死体と生活をしていましたから。多くの人の価値観では、死体を動かすのは良くないことなんでしょう?」

 リディアとの旅を思い出す俺に、ドロシーが告げた。
 その通り、初めてドロシーに出会ったときの印象は、決して良いものではなかった。
 俺にはあの頃のドロシーは、狂っているようにすら見えていた。
 少なくとも、こうして一緒に旅をする仲になるとは思いもしなかった。

「それでも、ショーンくんは私と親しくしてくれています。第一印象最悪だとしても、仲良くすることは出来るんです」

 ドロシーが俺の手を握って、そう言った。
 その様子を見ていたクシューが、片眉を上げる。

「なーんかさ、誰も彼もショーンにだけ優しくねえ? 俺、ショーンと同じ顔なんだけど。同じような扱いをしてくれてもいいじゃん」

 クシューは自分の顔を指差しながら笑顔を作っている。
 すると笑顔のクシューに、リディアが舌を出してあかんべえをした。

「嫌じゃ。ショーンと同じ顔だろうと、お前は性格が捻じ曲がっておる。優しくするなんてお断りなのじゃ」

「リディアの意地悪ー! そういうところも好きだけど!」

 クシューはスイスイと空中を移動し、リディアの周りを飛び回った。
 リディアは飛び回るクシューに対して、虫を追い払うように手でシッシッとしている

「さっきから気になってたんだけど、あの人はショーンとリディアの知り合いなの?」

「ショーンくんの知り合いというのは彼の顔を見れば分かりますが、リディアちゃんも知り合いなんですよね? どんなお知り合いなんですか?」

 リディアと戯れるショーンを指差して、ヴァネッサとドロシーが質問した。
 俺とリディアはクシューと昔馴染みのように会話をしているのに、二人にはクシューが誰なのかを紹介していない。
 気になって当然だ。

「ショーンとは同じ主から生み出された同胞、リディアとは現魔王と前魔王または秘書官の関係だぜ」

「…………え?」

 俺が答えるよりも早く、クシューが自己紹介をした。
 その単語だけは避けようと思っていた、地雷ワードを使って。

「今、なんて言いました?」

「だーかーらー、俺は魔王だった頃のリディアと戦ったことがあるんだよ。そんで俺が勝ったから、俺が新しい魔王になって、リディアは魔王の座を降りて俺の秘書官をやってたんだよ」

「嫌々じゃがな。秘書官になれば、クシューの寝首をかけると思って務めておった」

 リディアが相変わらず周りを飛び続けるクシューをにらんだ。

「俺を殺すのは無理だって分かってるくせに、諦めきれないところが可愛いんだよなあ。俺は相手の魔力を吸い取って主に送ることが出来るし、そもそも未来を掴めるから負けることはないのにさ」

 実際にはそんなことは起こっていないが、俺にはドロシーの髪が逆立っているように見えた。
 現在の魔王は、ドロシーの村を襲うように指示した張本人でもある。
 ドロシーにとって、クシューは村人たちの仇だ。

「……あいつが、現魔王……!」

 それからのドロシーの行動は素早かった。
 勢いよくクシューに飛びかかり、そしてクシューの後ろからは、いつの間にか出現させていたキツネのモンスターを飛びかからせていた。

「このーーーーーっ!!」

 しかしクシューはひらりと身を躱すと、何でもないことのようにドロシーを嘲笑う。

「俺の話、聞いてた? 未来を掴めるんだから、俺が負けることはあり得ないんだってば」

 なおもドロシーがキツネのモンスターと毒蜂を使ってクシューを攻撃するが、どの攻撃も危なげなくクシューに躱された。

「分かんねえかなー。いくらやったって、お前じゃ俺には傷一つ付けられねえよ。お前が必死に攻撃してる最中でも、俺なら優雅なティータイムを過ごせる。それほどまでに、俺とお前の間には力の差があるんだよ」

 クシューの言葉は、事実だろう。
 リディアですら倒すことの出来るクシューを相手に、ドロシーでは手も足も出ない。
 自分でもそのことを察したのか、ドロシーは泣きながら、クシューへの攻撃を止めた。

「ドロシー!」

 真下を向いて、地面に涙で水玉模様を作るドロシーに、ヴァネッサが駆け寄る。

「ショーンの仲間っぽいから今回は殺さないでやったけど、次はねえから。俺に殺気を持って近づいた瞬間に、お前の首を落とす」

 無傷のクシューは、ドロシーを見下ろしながら述べた。
 自分なら簡単にドロシーを殺すことが出来ると、それだけの能力差があると、ハッキリと告げることで、ドロシーの心を折るつもりなのだろう。

 効果はてきめんだった。
 耐えきれなくなったドロシーは、泣きながらこの場を去ってしまった。
 どこに向かうでもなく、研究施設の敷地を出て、森の中を走って行った。

「待って、ドロシー!」

 いつもヴァネッサの言葉に従うドロシーは、しかし今回は従うことはなかった。
 振り向くことさえせずに、どんどん姿が小さくなる。

「……ごめん。あたしも行くわ。ドロシーを一人には出来ないもの」

 そう言い残したヴァネッサも、ドロシーを追って森の中へと消えて行った。

 残されたのは、俺とクシューとリディアの三人だけだ。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。

真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆ 【あらすじ】 どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。 神様は言った。 「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」 現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。 神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。 それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。 あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。 そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。 そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。 ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。 この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。 さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。 そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。 チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。 しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。 もちろん、攻略スキルを使って。 もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。 下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。 これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

神様の願いを叶えて世界最強!! ~職業無職を極めて天下無双する~

波 七海
ファンタジー
※毎週土曜日更新です。よろしくお願い致します。  アウステリア王国の平民の子、レヴィンは、12才の誕生日を迎えたその日に前世の記憶を思い出した。  自分が本当は、藤堂貴正と言う名前で24歳だったという事に……。  天界で上司に結果を出す事を求められている、自称神様に出会った貴正は、異世界に革新を起こし、より進化・深化させてほしいとお願いされる事となる。  その対価はなんと、貴正の願いを叶えてくれる事!?  初めての異世界で、足掻きながらも自分の信じる道を進もうとする貴正。  最強の職業、無職(ニート)となり、混乱する世界を駆け抜ける!!  果たして、彼を待っているものは天国か、地獄か、はたまた……!?  目指すは、神様の願いを叶えて世界最強! 立身出世!

処理中です...