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【第七章】 この世界は黒と白のどっちだと思う?と同胞が言っていた

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「今回のボスはキツネ型ですか」

 ボスモンスターのキツネには、尻尾が五本生えている。
 あの尻尾が攻撃用でなければいいのだが。

「すごい! 大きいです! カッコイイです!」

「嬉しそうね、ドロシー」

「はい。あのキツネくん、絶対に仲間にしたいです! 私の仲間になってくださーい!」

 ドロシーがボスモンスターに向かって叫んだ。
 「仲間になってください」という言葉自体は可愛らしいが、ドロシーが言うと意味が変わってくる。
 ネクロマンサーの言う「仲間になってください」は、即ち「死んでください」だ。

 案外ネクロマンサーの決め台詞としてはカッコいいかもしれない、などとどうでもいいことを考えていると、リディアがボスモンスターに話しかけた。

「妾は一切の攻撃をしないから安心するがいい。お前の相手はこの三人がする」

 ボスモンスターに紹介されてしまった。
 思わず頭を下げる。

「お前が三人を戦闘不能にしたら、大人しくダンジョンから出て行こう。どんな結果になろうとも、妾はお前を攻撃しないと約束する。ただし三人が死ぬ事態だけは防がせてもらうぞ」

 そして俺たちを見る。

「……ということじゃ。死にそうなときだけは防御してやるが、大怪我なら見守る。痛い思いをしたくないのであれば、上手く立ち回ることじゃ」

 ヴァネッサとドロシーが俺のことを見た。
 作戦会議をしたいのだろう。

「私たちだけで勝てるでしょうか。ダンジョン内で味方が増えなかったので、私が操れるのは毒蜂さんたちだけです」

「その分、あたしが頑張るしかないわね!」

「ヴァネッサさんは回避に集中するべきかと……」

「失礼ね!? あたしだって戦えるわよ!」

 ヴァネッサが予想通りの反応をした。
 予想外だったのは、ドロシーだ。

「ヴァネッサちゃんに怪我をしてほしくはありませんが、私もヴァネッサちゃんは戦うべきだと思います。私の毒蜂さんもショーンくんの短剣も、強敵相手に致命傷を与えるほどの攻撃は出来ませんから」

「ほら、ドロシーもこう言ってるじゃない」

 そう言われてしまうと、頷くしかない。
 この中でボスモンスターに致命傷を与えられるのは、長剣を持つヴァネッサだけだ。

「では俺と毒蜂が囮になって、ヴァネッサさんがボスモンスターを倒す流れで行きましょうか」

「分かりました。私はキツネくんの周りで毒蜂さんを飛び回らせますね」

「お願いします。ヴァネッサさんは、ボスモンスターが俺を狙って攻撃を繰り出した瞬間に、ボスモンスターを叩いてください。その際、尻尾には注意してくださいね」

「ええ。渾身の一撃をお見舞いするわ」

 俺たちはリディアに向かって頷いた。
 ボスモンスターが俺たちの作戦会議を攻撃もせずに待っていてくれたのは、リディアがいたからだろう。

 リディアは片手を上げると、勢いよく振り下ろした。

「始め!」

 リディアの掛け声とともに、ボスモンスターが火の玉を出現させた。
 どうやらこのボスモンスターは、魔法を使うタイプらしい。
 いくつもの火の玉が縦横無尽に飛んでくる。

 これに悲鳴を上げたのはドロシーだった。
 ドロシーの毒蜂が、次々に炎に焼かれていったのだ。

 次々に焼かれていく。
 まるで、あの日のように。

「…………うっ」

 突如襲った頭痛に眩暈がする。
 頭を押さえながらよろめくと、強い力で体当たりをされた。

「ちょっと! 囮は逃げ回ってこそでしょ!?」

 目を開けると、先程まで俺がいた場所は炎で焦げていた。

「ヴァネッサさんに助けられる日が来るとは思いませんでした」

「あたしもショーンを助ける日が来るとは思わなか……って、助けられたくせに失礼ね!?」

「お二人とも。長期戦は毒蜂さんたちが燃やされちゃうので不利です。早めに終わらせましょう!」

「らしいわよ。ほら、シャキッとしなさい」

 ヴァネッサが俺の手を引いて立ち上がらせてくれた。
 ボスモンスターを見ると、執拗に毒蜂を焼き払っている。
 どうやら俺が倒れている間の時間稼ぎはドロシーがしてくれていたらしい。
 ボスモンスターの怒りを毒蜂に集中させるために、積極的な攻撃を行なって多くの毒蜂を犠牲にしてしまったようだ。

 俺は砂埃をはらいながら、再び短剣を構えた。

「今度は俺が相手です。燃やせるものなら燃やしてみてください!」



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