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【第七章】 この世界は黒と白のどっちだと思う?と同胞が言っていた
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しおりを挟む少しすると、パーカーが干し柿を持って戻ってきた。
皿に乗っている干し柿は四つ。
パーカー自身は食べるつもりがないらしい。
「干し柿を考えた者は天才なのじゃ」
皿が置かれるなり、リディアが干し柿を手に取った。
パーカーにうながされ、残りの面々も干し柿を口に運ぶ。
「お腹が空いていたこともあって、ものすごく美味しく感じます」
「本当ですね。糖分が染み渡ります」
「あっ! ショーン、髪が乱れてるわよ」
干し柿を味わっていると、ヴァネッサが俺の髪の乱れに気付いた。
確かに結んでいるはずの髪がはらはらと落ちてきている気がする。
「じゃあ結び直しましょうかね」
「ショーンくんはかなり髪が伸びましたよね」
「これはリディアさんに魔法で伸ばしてもらったんですよ」
結局、武闘大会の前に髪を伸ばしてもらってから、ずっとそのままにしている。
「鬱陶しいから早く切れと言っておるんじゃがのう。安易に伸ばさなければ良かったのじゃ」
リディアがじとっとした目で俺のことを見た。
俺としては、結んでいるから鬱陶しいというほどではないのだが、見ている側からすると邪魔なのだろうか。
俺も髪を洗うときだけは面倒だが。
「ねえ。伸びる前からそうだったけど、ショーンのそれって地毛なの?」
「実は私も思ってました。オシャレだな、って」
二人が何のことを言っているのかはすぐに分かった。
俺の髪色のことだ。
俺の髪は、黒い髪にピンク色の毛が混ざっている。
「これは地毛ですよ。染めたわけでもないのに、ところどころ変な色の毛が生えてくるんですよね」
「ちょっと。変な色って言わないでよ。その色、あたしの髪色に似てるじゃない!」
「あっ、すみません。でもヴァネッサさんは俺とは違って、その髪色が似合っていると思いますよ」
そんなつもりはなかったのだが、失言をしてしまったようだ。
確かに俺のピンク色の毛は、ヴァネッサの珊瑚色の髪色に似ていると言えるかもしれない。
「ショーン、本当にそう思ってるの? 許されたくて適当なことを言ってるんじゃないでしょうね!?」
「思ってますよ。活発なヴァネッサさんによくお似合いの色です」
「本当に本当? ショーンは、あたしの髪が綺麗だと思ってくれてるの?」
「はい。俺の髪はさておき、ヴァネッサさんは綺麗ですよ」
「…………あ、ありがと」
ヴァネッサは何故か自身の頬を押さえながらそっぽを向いた。
するとその様子を見ていたドロシーがくすくすと笑い始めた。
「ヴァネッサちゃんってば、かーわいい」
「からかわないでよ、ドロシー」
「からかってなんかいませんよ。いつの世も、恋する乙女は可愛いものです」
「……妾はなんだかむず痒くなってきたのじゃ」
リディアが自身の身体を掻きむしり始めた。
自身のことを魔王だと偽っていたリディアに思うところはあるが、こうしていると仲良しパーティーのように感じられる。
少なくともリディアは、ヴァネッサやドロシーを害そうとはしていないようだ。
そんなことを考えながら、俺は自身の髪をほどいた。
結び直す前に、手櫛で軽く梳かしていく。
すると。
「ああっ、ああああああ!?!?」
突然、パーカーが叫んだ。
また発作が出たのかもしれない。
「……パーカーさん?」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
「落ち着いてください、パーカーさん」
パーカーは床に頭を擦りつけながら、狂ったようにひたすら謝罪をしている。
「私が悪かった! 全部私と彼らのせいだ! 君には本当に申し訳ないことをした!」
「どうしよう!? 食堂のときみたいに教会へ連れて行った方が良いのかしら!?」
ヴァネッサも軽くパニックを起こしている。
場がより混乱するから、とりあえずヴァネッサだけでも落ち着いてほしい。
「私は殺される覚悟が出来ている! 君には私を殺す権利がある!」
「大丈夫ですよ。ここにいる誰も、パーカーさんを殺したりはしません」
ヴァネッサと違い、ドロシーは冷静なようだ。
ゆっくりとした口調で、パーカーを落ち着かせようとしている。
「いいや。君は私たちを許せないと思って、それで研究所を焼いたのだろう!?」
「パーカーさん、安心してください。研究所と関係のある人はここにはいませんよ」
「いるじゃないか、そこに!」
そう言ってパーカーが指差したのは、俺だった。
「ショーンくん、どういうことか分かりますか?」
「いいえ。俺にもパーカーさんが何の話をしているのかさっぱり……」
「申し訳なかった、被検体X! 君を置いて逃げて悪かった!」
「被検体X?」
そういえばその単語は、盗賊団のアジトにあった日記で見た気がする。
しかしどうして今その単語を?
パーカーが困惑する俺の手を、がしっと握った。
「俺が……ですか?」
「そうだ! 君が、残酷な仕打ちに耐えかねて研究所を焼いた、被検体Xだ!」
「俺が、被検体X……?」
その瞬間、頭の中に凄惨な記憶が雪崩れ込んできた。
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