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【第五章】 美少女と、魔物の住処で性(さが)を知る
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しおりを挟む「くそっ、厄介な飛び方をしやがって」
ケイティとレイチェルは勇者パーティーの頭上を飛び回っている。
不規則な飛び方のため、勇者パーティーはなかなか二人に攻撃が定まらないようだ。
そのうちに飛び回る二人が、耳を刺すような高音を発し始めた。
この攻撃は勇者たちだけではなく、観戦中の俺にもダメージが入った。
反射的に耳を塞ぐが、耳を塞いでも高音は頭に響いてくる。
勇者たちも俺と同じように、耳を塞ぎながら顔を歪ませているようだ。
「この高音、頭痛がしてくるわ」
ふと自分が、武闘大会で嫌な音攻撃をしたことを思い出した。
あのときの観客も同じような目に遭ったはずだ。
そりゃあ、俺に対する悪口も言いたくなる。
時間差で、自分があのときの観客に対して酷いことをしたのだと理解した。
そんなことを考えているうちに、だんだんと前後不覚になってきた。
最初から座っていなければ、倒れていた可能性がある。
現に僧侶と魔法使いは、その場で膝をついている。
「もう立っていられません。平衡感覚がおかしくなっています」
こんなにも全員に影響を与える超音波攻撃を受けて、魔王リディアはどうしているのだろうと隣を見ると、何でもない顔をして座っていた。
すまし顔をする魔王リディアの耳の周りには光の粒が飛んでいる。
魔王リディアは自身の耳に何かしらの防音魔法を掛けているようだ。
……ついでに、俺にも防音魔法を掛けて欲しかった。
「僧侶か魔法使い、僕たちに防音魔法を掛けろよ!」
「無茶言わないでよ。魔法には集中力が必要なんだから……今は無理」
「わたくしも、難しいです」
戦況は、超音波攻撃のおかげでケイティとレイチェルが優勢かというと、そうでもなかった。
二人は自身で言っていた通り強い魔物ではないらしく、攻撃自体は素手で殴ったり爪で引っかいたり、石を当てたりする程度だった。
とても威力が高そうには見えない。
もし二人が攻撃の得意な魔物と組んでいたら、二人が超音波でかく乱しつつ、攻撃の得意な魔物が攻撃を行なう見事な連係プレーが生まれていたことだろう。
しかしこの場に、そのような魔物はいない。
「このっ!」
片手で耳を押さえながら、戦士が大剣を振った。
あの重い大剣を片手で振り回すなんて、戦士は俺とは鍛え方が違うのだろう。
「ケイティ、大丈夫?」
「避けたから平気」
大剣はケイティにもレイチェルにも当たらなかったが、大剣を振った際の風圧が二人を吹き飛ばした。
二人は上手く旋回して木に叩きつけられることは防いだが、吹き飛ばされたせいで二人の超音波攻撃が乱れた。
「今のうちに防音魔法を掛けます!」
「じゃああたしは攻撃するわ。覚悟しなさい!」
その隙を見逃さなかった僧侶が勇者パーティーに防音魔法を掛け、魔法使いがケイティとレイチェルに向かって魔法攻撃を放った。
魔法使いの放った魔法は、範囲も大きく威力も高そうだ。
しかしケイティとレイチェルはその魔法攻撃を上手くかわした。
そして……。
二人の避けた魔法が、二人の後ろにいた俺の元へと飛んできた。
あ、と思ったときにはもう遅かった。
今からでは避けきれない。
「えっ。観戦中に、俺は死ぬの?」
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