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【第五章】 美少女と、魔物の住処で性(さが)を知る

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 ここへは呪いのアイテムを見せてもらいに来たのだった、と当初の目的を思い出した俺は、ケイティとレイチェルに直球で聞いてみることにした。

「二人が呪いのアイテムを持っていると聞いたのですが、見せてくれませんか?」

「呪いのアイテムですか? もちろんいいですよ。役に立たないものですけど」

 二人は、すぐに俺の頼みを承諾してくれた。
 あとは二人の持っている呪いのアイテムが、俺のユニークスキル・ラッキーメイカーの能力を消してくれるものだと良いのだが。

「ショーン様は、呪いのアイテムに興味があるんですか?」

「はい、諸事情ありまして……」

「呪いのアイテムはコレクターが多いらしいですね。普通のアイテムだと思って近付いた人間を落胆させられますから」

 知らなかった。
 そんな悪戯っ子みたいな感覚で、呪いのアイテムを集めている魔物もいるのか。
 魔物に親近感が湧いてしまう話だ。

「あはは。そんな理由でコレクターになる魔物もいるんですね」

「もちろん自分の住処に保管して、外には一切出さないコレクターもいますけどね」

 こちらの方が、俺の知っているコレクターの人物像と合致している。
 コレクターは自身のコレクションを他人に触られることを嫌うイメージだ。

 俺とレイチェルが会話をしている間、ケイティはずっと部屋の中を漁っていた。
 今や部屋の中は、どこに収納していたのか不思議になるほどの物で溢れている。
 服の系統に合わせて付けるアクセサリーを変えているのか、可愛いネックレスから地味な髪留め、ギラギラした腕輪など、様々な種類のアクセサリーが床に散らばっている。

 先程は二人が人間をさらうわけがないと思ったが、ジャンルがバラバラのアクセサリーを見て、嫌な考えが頭をよぎってしまった。

 もしかしてケイティとレイチェルは、アクセサリーのコレクターなのではないだろうか。
 アクセサリーを奪うために、若い女をさらっているのではないだろうか。

 一度気になってしまうと、いてもたってもいられなくなってしまったため、隣にいたレイチェルに疑問をぶつけてみることにした。

「あのさ、アクセサリーを奪うために人間を襲う魔物っていると思う?」

「うーん、強い魔物ならそういう者もいるかもしれませんね。ですが弱い魔物にとって、人間を襲うことは死活問題です。アクセサリーのためだけにそんなリスクを冒す者は少ないと思います」

「じゃあレイチェルたちは、アクセサリーが欲しくて人間を襲ったことはないんだね?」

「はい、ありません。アクセサリーは絶対に必要なものではなく、あくまでもオシャレです。オシャレのために命を危険には晒せません。それにアクセサリーが無くてもレイチェルたちは可愛いですから」

 注意深く観察したが、レイチェルに嘘を吐いている様子は無かった。
 そもそも魔物の姿である俺相手に、人間を襲った事実を隠す必要が無い。
 レイチェルの言葉を聞いて、俺は改めて彼女たちは犯人ではないと考え、安堵した。

「うーん、どこにあったかな…………あ、あった!」

 ようやく目的の品を見つけたらしいケイティが、俺たちの元へとやってきた。

「これです。これが呪いの招き猫です」

 ケイティが持っていたのは、半分が金色に、半分が黒色に塗られた招き猫だった。
 すぐにアイテムの説明文を確認する。

「なになに。この招き猫を店の前に置くと、どんどん客が寄ってくる。同時に幽霊の類も寄ってくる……呪いのアイテムらしい効果ですね」

 残念ながら、俺の求めている呪いのアイテムではないが。
 しかしそんな俺の事情を知らないケイティは、俺の手の上に呪いの招き猫を乗せた。

「必要ならショーン様に差し上げます。ショーン様にプレゼントを贈るのは、ケイティにとって誇らしい出来事ですから」

「……すみません。どうやらその呪いの招き猫は、俺が探している呪いのアイテムではなかったみたいです」

「なるほど。ショーン様には探している呪いのアイテムがあるんですね? レイチェルたちも一緒に探しましょうか?」

 呪いのアイテム探しを手伝ってくれるつもりなのは嬉しいが、若い二人の人生を俺のために消費させるのは申し訳がない。
 二人には叶えたい大きな夢があるのだから、二人の時間はその夢を叶えるために使ってほしい。

「お気持ちだけで十分ですよ。あとこの招き猫はお返ししますね。アイドルにとっては役に立ちそうなアイテムですよ。客が寄ってきますからね」

 幽霊も寄ってくるが。

 でもまあ、二人は魔物だから、幽霊を怖がらないかもしれない。
 ……魔物に幽霊が怖いかを聞いたことがないから分からないが。

「ですが、探し物なら人数が多い方が……」

 なおも手伝ってくれようとするケイティとレイチェルに、激励の言葉を贈る。

「二人にはアイドルになる夢があるんですから、そっちを優先してください。アイドルは、他のことに気を取られながら達成できる夢ではないはずです。夢に向かってまっすぐ進めば、きっと二人はアイドルになれますから!」

 俺の言葉を聞いた二人は、目に涙を浮かべた。

「ショーン様、レイチェルたちのことをこんなに応援してくださって……光栄です!」

「絶対にアイドルになろうね、レイチェル」

「うん。一緒に頑張ろうね、ケイティ」

 ケイティとレイチェルは抱き合って、一緒にアイドルになろうと何度も言い合った。
 きっとこういうキラキラしたものを見たときに、尊い、という単語を使うのだろう。



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