上 下
14 / 172
【第一章】 勇者パーティーから追放されたら、美少女に拾われた!?

●14

しおりを挟む

 俺は倒れている勇者パーティーの面々に近付くと、全員の脈を確認した。
 どうやら気絶しているだけで、全員生きてはいるらしい。

「早く近くの村までワープして、回復してあげてください。ワープ用のアイテムは持ってましたよね?」

「うるさい! 荷物持ちが僕に指図するな!」

「そんなことを言っている場合では……」

「うるさいうるさいうるさい! お前は役立たずで底辺の荷物持ちで、僕は誰からも賞賛されるエリートの勇者なんだ。お前は僕に意見できる立場じゃねえんだよ!」

 俺が勇者と言い争っていると、魔王リディアが耳打ちをしてきた。

「どうやらこの者、ダンジョンを閉じずに村へ逃げ帰り笑いものにされることが嫌みたいだぞ。器の小さい男じゃ」

 勇者らしい理由だ。
 いや、この場合は「勇者らしい」ではなく「この男らしい」が適切な表現か。

 正直、勇者パーティーがボロボロになっているところを見るのはいい気味だが、助かる命が消えていくのを無視することは出来ない。
 俺は勇者のようなクズにはなりたくないから。

「ダンジョンを閉じたら、近くの村までワープしてくれるんですね?」

「荷物持ちにダンジョンが閉じられるわけねえだろ。それとも一緒にいる女が戦ってくれるのか!?」

 勇者は魔王リディアを指差した。
 しかし魔王リディアは瞬きすらしない。

 ボスモンスターに関しては、魔王リディアは手出しをしない。
 俺たちは、道中にそう決めた。

 そして今、魔王リディアはボスモンスターに対して自分は戦闘の意志が無いという合図を送ってくれている。
 そのおかげでボスモンスターは逃げずにこの場にとどまっているのだ。

「ボスモンスターとは、俺が戦います」

「勇者パーティーが負けたのに、荷物持ちに何が出来るんだよ!?」

「どうやって倒すかはまだ分かりませんが、可能性はゼロではないと思います」

 攻撃を受けないようにボスモンスターから十分な距離をとる。
 そして、俺は――――ユニークスキルを使った。



 精神を、因果の世界へダイブさせる。
 全身の力を抜き、ここではないどこかへと意識を飛ばす。
 ふわりふわりと現実世界の輪郭が歪んでいく。

 意識の向かった先、因果の世界は、自分の足すらも見えないほどに真っ暗だ。
 しかし目の前には、幾千万の因果の糸が伸びている。
 幾千万の因果の糸が絡み合い、繋がり合い、未来へと伸びている。

 手近な因果の糸を掴むと、その因果の先の未来の映像が脳内に直接流れてくる。
 どの因果の糸を掴んでも、因果の先に見える未来は、俺がボスモンスターに倒されるものばかりだ。

「これも違う、これも、これも……」

 糸を手繰るたびに残念な未来ばかりが見えてくる。
 俺が心臓に致命傷を受ける未来、首に致命傷を受ける未来、頭に致命傷を受ける未来、じわじわと苦しみながら倒れる未来、戦い続けて力尽きる未来、ボスモンスターから逃亡してダンジョン内で餓死する未来。

「……あった、これだ!」

 俺はその中からやっと見つけた欲しい未来へと続く因果の糸を掴むと、因果の内容を確認した。

 確認の終わった俺は、また全身から力を抜く。
 そして現実世界を強くイメージする。
 今度は因果の世界の輪郭がふわりふわりと歪んでいく。


「ボスモンスターを倒す方法が分かりました!」

「ようやく戻ってきおったか」

 因果の世界から戻ってきた俺は……地面に生えていたキノコを次から次へと採取した。
 そしてキノコを抱えたままボスモンスターに近付くと、咆哮するボスモンスターの口の中に、採ったキノコをまとめて投げ込んだ。

「考えてみるとおかしいんですよ。こんなにキノコがあるのに、ボスモンスターに踏まれた形跡がありません。踏まれているキノコには、すべて人間が踏んだあとがついています。つまりこのボスモンスターは、キノコを踏むことさえ避けるほどに、このキノコを苦手としているんです」

 俺が説明をしている間に、ボスモンスターは悶え苦しんで暴れ回り、動かなくなった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

勇者PTを追放されたので獣娘たちに乗り換えて楽しく生きる

まったりー
ファンタジー
勇者を支援する為に召喚され、5年の間ユニークスキル【カードダス】で支援して来た主人公は、突然の冤罪を受け勇者PTを追放されてしまいました。 そんな主人公は、ギルドで出会った獣人のPTと仲良くなり、彼女たちの為にスキルを使う事を決め、獣人たちが暮らしやすい場所を作る為に奮闘する物語です。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

処理中です...