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本編
祝福を
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完全回復したところで、家から一歩も出ない生活で眠っていたときとそれほど変わらないのでは……と幸多は少し落ち込んだ。
食事の用意も洗濯も、デンドルムがうっとりした表情で幸多を眺めながら「オレがいる間は甘えとけ」なんて言って全て先に片付けてしまう。
まあ、デンドルムの家はヒューの家よりも魔法が多く使われていて、洗濯なんて洗って干す必要もなく……。
ただ、お風呂がない。魔力のない幸多は清潔にするためにヒューかデンドルムに頼むことになった。
「魔法できれいにする二人にはお風呂なんて必要ないし……」
つくって、なんて言えない。
服といえば、デンドルムの趣味なのか黒色の服が増えた。幸多が上下黒を着るとヒューがすねるので、どちらか片方はヒューに選んでもらって着ている。
二人はというと、それほど興味もないのか簡素な服が多い。動きやすいというのもあるかもしれないが。
大きく環境が変わって戸惑うことも多いけれど、新しく知る世界は面白く、幸多は楽しんでいた。
そして、数日があっという間に過ぎ、日が落ちた頃。
二つのブレスレットを持ち、緊張したヒューが幸多の側へと歩み寄る。
「俺と、結婚してください」
幸多は笑顔で頷き、ヒューは自分と幸多の手首にブレスレットを付けた。
「俺と同じように、言葉を続けて。――幸多を受け入れ夫夫となる」
「……ヒューを受け入れ、夫夫となる」
ブレスレットについている魔石がぼんやりと光を放ち、お互いの魔石へと光が吸い込まれて消えていった。
「おめでとう。今度はオレの番であることを願うよ」
デンドルムは余計な一言を発してヒューに睨まれていたが、幸多はおかしそうに笑うのだった。
幸せそうな幸多を見てデンドルムの頬も緩む。
「邪魔者は退散するかぁ。あんま無理させんなよー」
白い髪を揺らしてケラケラ笑い、また明日な、と手を振りながら出て行った。
◇ ◇ ◇
ヒューと幸多は寝室へ着くまで何度もキスをした。ベッドの横で舌を絡ませ、くちゅりと音を立てながら熱い息をこぼす。
「……んっ」
舌でなぞられ声を出す幸多の口が、唾液に濡れていやらしく光っていた。
二人でベッドへ倒れ込み、二センチほどの宝石のような物をヒューが取り出した。形は楕円で透明のそれは、メイの実だという。
「今は怖いだろうから、幸多がこれを使っても良いと思えるまで待つつもりだ」
「……」
それを眺め、確かに怖いが今を逃したらいつまでも言い出せずにズルズルと先延ばしにしてしまう気がした。思い切ってヒューに伝える。
「今日、使って」
「でも……大丈夫か?」
「一緒に育ててくれるんでしょう?」
「もちろんだ」
「なら、大丈夫だよ」
「わかった」
お互い裸になり、ヒューは幸多の頭を優しくなでた。
食事の用意も洗濯も、デンドルムがうっとりした表情で幸多を眺めながら「オレがいる間は甘えとけ」なんて言って全て先に片付けてしまう。
まあ、デンドルムの家はヒューの家よりも魔法が多く使われていて、洗濯なんて洗って干す必要もなく……。
ただ、お風呂がない。魔力のない幸多は清潔にするためにヒューかデンドルムに頼むことになった。
「魔法できれいにする二人にはお風呂なんて必要ないし……」
つくって、なんて言えない。
服といえば、デンドルムの趣味なのか黒色の服が増えた。幸多が上下黒を着るとヒューがすねるので、どちらか片方はヒューに選んでもらって着ている。
二人はというと、それほど興味もないのか簡素な服が多い。動きやすいというのもあるかもしれないが。
大きく環境が変わって戸惑うことも多いけれど、新しく知る世界は面白く、幸多は楽しんでいた。
そして、数日があっという間に過ぎ、日が落ちた頃。
二つのブレスレットを持ち、緊張したヒューが幸多の側へと歩み寄る。
「俺と、結婚してください」
幸多は笑顔で頷き、ヒューは自分と幸多の手首にブレスレットを付けた。
「俺と同じように、言葉を続けて。――幸多を受け入れ夫夫となる」
「……ヒューを受け入れ、夫夫となる」
ブレスレットについている魔石がぼんやりと光を放ち、お互いの魔石へと光が吸い込まれて消えていった。
「おめでとう。今度はオレの番であることを願うよ」
デンドルムは余計な一言を発してヒューに睨まれていたが、幸多はおかしそうに笑うのだった。
幸せそうな幸多を見てデンドルムの頬も緩む。
「邪魔者は退散するかぁ。あんま無理させんなよー」
白い髪を揺らしてケラケラ笑い、また明日な、と手を振りながら出て行った。
◇ ◇ ◇
ヒューと幸多は寝室へ着くまで何度もキスをした。ベッドの横で舌を絡ませ、くちゅりと音を立てながら熱い息をこぼす。
「……んっ」
舌でなぞられ声を出す幸多の口が、唾液に濡れていやらしく光っていた。
二人でベッドへ倒れ込み、二センチほどの宝石のような物をヒューが取り出した。形は楕円で透明のそれは、メイの実だという。
「今は怖いだろうから、幸多がこれを使っても良いと思えるまで待つつもりだ」
「……」
それを眺め、確かに怖いが今を逃したらいつまでも言い出せずにズルズルと先延ばしにしてしまう気がした。思い切ってヒューに伝える。
「今日、使って」
「でも……大丈夫か?」
「一緒に育ててくれるんでしょう?」
「もちろんだ」
「なら、大丈夫だよ」
「わかった」
お互い裸になり、ヒューは幸多の頭を優しくなでた。
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