僕が可愛いって本当ですか?

さよ

文字の大きさ
上 下
11 / 21
本編

祝福を

しおりを挟む
 完全回復したところで、家から一歩も出ない生活で眠っていたときとそれほど変わらないのでは……と幸多は少し落ち込んだ。
 食事の用意も洗濯も、デンドルムがうっとりした表情で幸多を眺めながら「オレがいる間は甘えとけ」なんて言って全て先に片付けてしまう。
 まあ、デンドルムの家はヒューの家よりも魔法が多く使われていて、洗濯なんて洗って干す必要もなく……。

 ただ、お風呂がない。魔力のない幸多は清潔にするためにヒューかデンドルムに頼むことになった。

「魔法できれいにする二人にはお風呂なんて必要ないし……」

 つくって、なんて言えない。
 服といえば、デンドルムの趣味なのか黒色の服が増えた。幸多が上下黒を着るとヒューがすねるので、どちらか片方はヒューに選んでもらって着ている。
 二人はというと、それほど興味もないのか簡素な服が多い。動きやすいというのもあるかもしれないが。

 大きく環境が変わって戸惑うことも多いけれど、新しく知る世界は面白く、幸多は楽しんでいた。

 そして、数日があっという間に過ぎ、日が落ちた頃。
 二つのブレスレットを持ち、緊張したヒューが幸多の側へと歩み寄る。

「俺と、結婚してください」

 幸多は笑顔で頷き、ヒューは自分と幸多の手首にブレスレットを付けた。

「俺と同じように、言葉を続けて。――幸多を受け入れ夫夫ふうふとなる」
「……ヒューを受け入れ、夫夫となる」

 ブレスレットについている魔石がぼんやりと光を放ち、お互いの魔石へと光が吸い込まれて消えていった。

「おめでとう。今度はオレの番であることを願うよ」

 デンドルムは余計な一言を発してヒューに睨まれていたが、幸多はおかしそうに笑うのだった。
 幸せそうな幸多を見てデンドルムの頬も緩む。

「邪魔者は退散するかぁ。あんま無理させんなよー」

 白い髪を揺らしてケラケラ笑い、また明日な、と手を振りながら出て行った。

◇ ◇ ◇

 ヒューと幸多は寝室へ着くまで何度もキスをした。ベッドの横で舌を絡ませ、くちゅりと音を立てながら熱い息をこぼす。

「……んっ」

 舌でなぞられ声を出す幸多の口が、唾液に濡れていやらしく光っていた。
 二人でベッドへ倒れ込み、二センチほどの宝石のような物をヒューが取り出した。形は楕円で透明のそれは、メイの実だという。

「今は怖いだろうから、幸多がこれを使っても良いと思えるまで待つつもりだ」
「……」

 それを眺め、確かに怖いが今を逃したらいつまでも言い出せずにズルズルと先延ばしにしてしまう気がした。思い切ってヒューに伝える。

「今日、使って」
「でも……大丈夫か?」
「一緒に育ててくれるんでしょう?」
「もちろんだ」
「なら、大丈夫だよ」
「わかった」

 お互い裸になり、ヒューは幸多の頭を優しくなでた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R-18】踊り狂えその身朽ちるまで

あっきコタロウ
恋愛
投稿小説&漫画「そしてふたりでワルツを(http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/630048599/)」のR-18外伝集。 連作のつもりだけどエロだから好きな所だけおつまみしてってください。 ニッチなものが含まれるのでまえがきにてシチュ明記。苦手な回は避けてどうぞ。 IF(7話)は本編からの派生。

【全57話完結】美醜反転世界では俺は超絶美人だそうです

兎騎かなで
BL
「ええ!? 俺が美人でモテモテなんて、ありえないよー!?」 チビでデブでブスと、三重苦が揃った冴えない大学生、田中昴。大学でフテ寝したらいつの間にか異世界に。そこで出会ったイケメン達につきあえって言われたり、誘惑されたり、主になってくれって言われたり!?俺、日本に帰りたいから今は恋愛なんて無理なんだけどー! 礼儀正しい美形執事、ムードメーカーな美オカマ、ツンデレ眼帯イケメンの三人に情熱的に迫られて、主人公はドキドキキュンキュン心臓が忙しくなります。 男性妊娠があり得る世界観です。 また、血が出たり戦ったりと残酷なシーンも少々含まれますので、苦手な方はそっとブラウザバックでお願いします。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

【完結】気がつけば推しと婚姻済みでかつ既に妊娠中だったけど前世腐男子だったので傍観者になりたい

愛早さくら
BL
けど、無理だった! というタイトル通りの話です。 ある日突然前世を思い出した主人公ルニアはこの世界で前世で好きだった学園物異世界BL小説の世界にとてもよく似ていることに気付く。 しかし、物語の舞台だった学園はすでに1年前に卒業していて、その上、自分は終盤で断罪され処刑されるはずの悪役令息のようであるにもかかわらず、何故か幼い頃からの婚約者であり前世からの押しだった王太子ラティと問題なく婚姻済みでその上既に妊娠までしていた。 いったい何がどうなっているのか。 よくよく思い返してみると今世のことも基本的には思い出せるのに肝心の学園時代の記憶だけが曖昧で……――しかも小説の主人公だったはずの受けは自分の従者になっている? 混乱したルニアは思わず伴侶であるラティに全てぶちまけ傍観者になりたいので離縁して欲しいと懇願していた。 「そんなの、するはずないだろ?」 にっこり笑っているにもかかわらず内心激怒していたラティに軟禁されて――……?!これ、溺愛どころか執着されてる?!てゆっかラティってヤンデレでは? ってなってるルニアが色々諸々思い出して諦めて今を受け入れるようになるまでのお話。の予定です! あんまり何も起こりません、いつも通り。 ・似たようなネタを何度でもこするのは好きだからです。受けちゃんには知らない間に妊娠していて欲しい欲望。 ・他の異世界話と同じ世界観。でも今度は国ごと新規です。 ・短編にしたい。(野望 ・転生主人公 ・男女関係なく子供が産める魔法とかある異世界が舞台。 ・R18描写があるお話にはタイトルの頭に*を付けます。

カレンデュラに愛を込めて〜悪役令息は美醜逆転世界で復讐を誓う〜

天宮叶
BL
十八歳の誕生日パーティの日、事故で階段から落ち、頭を打った衝撃で前世の記憶を思い出した悪役令息のカレンデュラは、この世界が前世とは美醜が逆転した世界だと気がつく。 カレンデュラは、国で一番醜いと言われている第一王子の元へと嫁ぐことが決まっており、前世の記憶を取り戻し改心したカレンデュラは、第一王子と良好な関係を築きたいと願う。しかし、初めて第一王子と顔を合わせた日、彼が前世で自分のことをいじめていたクラスメイトの阿佐谷の生まれ変わりだと気が付き、復讐を決意する。しかし、第一王子であるエルヴィスは、過去を忘れカレンデュラとの関係をやりなおしたいと伝えてくる。 愛が憎しみへ、憎しみが愛へと変化する、復讐ラブストーリー。 ※両性表現、過激表現、無理矢理rシーンが含まれます

【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される

鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。 レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。 社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。 そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。 レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。 R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。 ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。

壁の花令嬢の最高の結婚

晴 菜葉
恋愛
 壁の花とは、舞踏会で誰にも声を掛けてもらえず壁に立っている適齢期の女性を示す。  社交デビューして五年、一向に声を掛けられないヴィンセント伯爵の実妹であるアメリアは、兄ハリー・レノワーズの悪友であるブランシェット子爵エデュアルト・パウエルの心ない言葉に傷ついていた。  ある日、アメリアに縁談話がくる。相手は三十歳上の財産家で、妻に暴力を働いてこれまでに三回離縁を繰り返していると噂の男だった。  アメリアは自棄になって家出を決行する。  行く当てもなく彷徨いていると、たまたま賭博場に行く途中のエデュアルトに出会した。  そんなとき、彼が暴漢に襲われてしまう。  助けたアメリアは、背中に消えない傷を負ってしまった。  乙女に一生の傷を背負わせてしまったエデュアルトは、心底反省しているようだ。 「俺が出来ることなら何だってする」  そこでアメリアは考える。  暴力を振るう亭主より、女にだらしない放蕩者の方がずっとマシ。 「では、私と契約結婚してください」 R18には※をしています。    

試される愛の果て

野村にれ
恋愛
一つの爵位の差も大きいとされるデュラート王国。 スノー・レリリス伯爵令嬢は、恵まれた家庭環境とは言えず、 8歳の頃から家族と離れて、祖父母と暮らしていた。 8年後、学園に入学しなくてはならず、生家に戻ることになった。 その後、思いがけない相手から婚約を申し込まれることになるが、 それは喜ぶべき縁談ではなかった。 断ることなったはずが、相手と関わることによって、 知りたくもない思惑が明らかになっていく。

処理中です...