上 下
128 / 390

114話・昇格試験 6

しおりを挟む
 それでも、まだ時間があったので、一度冒険者ギルドに顔を出す事にした。
 お昼時もあってか、ギルド内の酒場も冒険者たちで賑わっていた。
 僕は、マリヤさんにムエルトがどうなったのか、尋ねようと、受付に行こうとした所で、足を止め、酒場のテーブルにいたある人物の元へ行く。

「おう、ノーリ。さっきぶり!!」

 僕に気づいたカールさんがそう言ってくる。

「試験官の仕事お疲れ様です、カールさん。」

 と返事を返し、

「それで、その顔は、いったいどうしたんですか?」

 気になった事について聞いてみる。
 カールさんの顔っていうか頬が、先程見たよりも腫れていた。

「あぁ、これな… さっき、お前模擬戦しただろ?」

「カールさんに、無理やりさせられた模擬戦ですね。」

「うっ… そう、それだ。それで、どうやらその模擬戦の件がギルマスまで話が通っていたらしくてな、模擬戦終了後、試験官の報酬を貰いに行ったら、そのまま奥の部屋に案内されて、ギルマスからこってり絞られた結果がこれだ… しかも、報酬も1割減額されちまったよ…」

「まぁ、何というか自業自得ですね…」

「いや、まぁ、それは、そうなんだがな…」

 カールさんは、そう言い苦笑いする。

「腫れていた原因は分かりましたけど、回復薬とかで治したりしないんですか?」

「それがな、治したらまた殴るって言われているから、治すに治せないんだよ…」

「そうなんですね…」

 僕も、苦笑いするしかなかった。

「それより、ノーリは、ここにいてていいのか?」

「マリヤさんに聞きたい事があるので、それを聞いたら、むかう予定です。」

「そうか。まぁ、頑張れよ!!」

「はい!!」

 カールさんと別れた僕は、最初の目的通り、マリヤさんのいる受付へむかい、あいつの状態を確認しておく。
 マリヤさん曰く、あいつの骨折は、無事に繋がったようだ。だけど、いくら試験官が許可を出したとはいえ、ムエルトのした事は、試験妨害と判断され、3ヶ月間昇格試験を受ける事が出来なくなり、1ヶ月の間、ギルドが用意する依頼(街のどぶ掃除や誰も受けない低額の依頼)を強制で受けないといけなくなったらしい。
 因みに、僕への罰は特になかった。それどころか、ギルドが用意した試験官が迷惑をかけたという事で、カールさんが減額させていた分のお金を迷惑料として渡された。それを受け取った後、待ち合わせ場所へむかった。





 僕は、待ち合わせ時間の少し前に、到着する。僕が到着した時には、既に、僕以外の試験生たちは、到着していた。依頼者と試験官の冒険者パーティーは、まだ来ていなかったので、僕を含めた試験生5人で改めて、自己紹介を始める。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

全部未遂に終わって、王太子殿下がけちょんけちょんに叱られていますわ。

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に仕立て上げられそうだった女性が、目の前でけちょんけちょんに叱られる婚約者を見つめているだけのお話です。 国王陛下は主人公の婚約者である実の息子をけちょんけちょんに叱ります。主人公の婚約者は相応の対応をされます。 小説家になろう様でも投稿しています。

子爵令嬢マーゴットは学園で無双する〜喋るミノカサゴ、最強商人の男爵令嬢キャスリーヌ、時々神様とお兄様も一緒

かざみはら まなか
ファンタジー
相棒の喋るミノカサゴ。 友人兼側近の男爵令嬢キャスリーヌと、国を出て、魔法立国と評判のニンデリー王立学園へ入学した12歳の子爵令嬢マーゴットが主人公。 国を出る前に、学園への案内を申し出てきた学校のOBに利用されそうになり、OBの妹の伯爵令嬢を味方に引き入れ、OBを撃退。 ニンデリー王国に着いてみると、寮の部屋を横取りされていた。 初登校日。 学生寮の問題で揉めたために平民クラスになったら、先生がトラブル解決を押し付けようとしてくる。 入学前に聞いた学校の評判と違いすぎるのは、なぜ? マーゴットは、キャスリーヌと共に、勃発するトラブル、策略に毅然と立ち向かう。 ニンデリー王立学園の評判が実際と違うのは、ニンデリー王国に何か原因がある? 剣と魔法と呪術があり、神も霊も、ミノカサゴも含めて人外は豊富。 ジュゴンが、学園で先生をしていたりする。 マーゴットは、コーハ王国のガラン子爵家当主の末っ子長女。上に4人の兄がいる。 学園でのマーゴットは、特注品の鞄にミノカサゴを入れて持ち歩いている。 最初、喋るミノカサゴの出番は少ない。 ※ニンデリー王立学園は、学生1人1人が好きな科目を選択して受講し、各自の専門を深めたり、研究に邁進する授業スタイル。 ※転生者は、同級生を含めて複数いる。 ※主人公マーゴットは、最強。 ※主人公マーゴットと幼馴染みのキャスリーヌは、学園で恋愛をしない。 ※学校の中でも外でも活躍。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

異世界スナイパー  ~元自衛隊員が剣と弓の異世界に転移したけど剣では敵わないので鉄砲鍛冶と暗殺者として生きていきます~ 

マーシー・ザ・トマホーク
ファンタジー
陸上自衛隊第一空挺団所属の石動 勤は、休暇中の北海道でエゾ鹿猟を楽しんでいた。 ところが狩猟中に手負いのヒグマに襲われ、撃退するも強烈な前足での攻撃を受けて気を失い、沢へ転落してしまう。 眼が覚めて気が付くと、そこは見知らぬ森で、エルフや世界樹がある「剣とちょびっと魔法」の世界だった。 スナイパーでガンマニアの石動は、この世界に銃が存在しない事を知り、ショックを受ける。 世界樹の化身から「渡り人」としての目的を尋ねられた石動は、自分の欲望の赴くままに「鉄砲鍛冶でもして銃を造る!」と宣言してしまう。 とは言え、銃を使うことはプロでも造るのは全くの素人である石動は、「渡り人」のスキルや周りの人たちに助けられつつ、試行錯誤し苦労しながら鉄砲鍛冶の道を歩んでいくことになる。 本人は自覚せずとも新兵器である銃の影響は大きく、それにより石動の運命も変わっていくのだった・・・・・・。 *ガンマニアのおっさんが自分が読みたいと思う小説を書いてみました。  色々と読みずらい点もあるでしょうが、広い心で楽しんでいただけると嬉しいです。  また、本職の自衛官やハンターの方にはご不満な点もあると思いますが、御寛恕願います。  ガチのマニアの方には物足りない点もあると思いますが、一般の方が読んで退屈しないよう、マニアックな部分は出来るだけ軽い描写で済ませている事をご理解ください。例えばライフルのサイトインなど細かく書くと普通の人は読み飛ばすと思いましたので・・・・・・。  それでも読みにくいのは筆者の力量のせいです。  火薬や雷管など化学物質の描写もわざと暈したり、必要な成分を書かなかったりしています。  筆者の知識不足もありますが、自己規制のためとご理解願います。 *「小説家になろう」「カクヨミ」様でも公開中の作品を加筆修正したものです。

人質から始まった凡庸で優しい王子の英雄譚

咲良喜玖
ファンタジー
アーリア戦記から抜粋。 帝国歴515年。サナリア歴3年。 新国家サナリア王国は、超大国ガルナズン帝国の使者からの宣告により、国家存亡の危機に陥る。 アーリア大陸を二分している超大国との戦いは、全滅覚悟の死の戦争である。 だからこそ、サナリア王アハトは、帝国に従属することを決めるのだが。 当然それだけで交渉が終わるわけがなく、従属した証を示せとの命令が下された。 命令の中身。 それは、二人の王子の内のどちらかを選べとの事だった。 出来たばかりの国を守るために、サナリア王が判断した人物。 それが第一王子である【フュン・メイダルフィア】だった。 フュンは弟に比べて能力が低く、武芸や勉学が出来ない。 彼の良さをあげるとしたら、ただ人に優しいだけ。 そんな人物では、国を背負うことが出来ないだろうと、彼は帝国の人質となってしまったのだ。 しかし、この人質がきっかけとなり、長らく続いているアーリア大陸の戦乱の歴史が変わっていく。 西のイーナミア王国。東のガルナズン帝国。 アーリア大陸の歴史を支える二つの巨大国家を揺るがす英雄が誕生することになるのだ。 偉大なる人質。フュンの物語が今始まる。 他サイトにも書いています。 こちらでは、出来るだけシンプルにしていますので、章分けも簡易にして、解説をしているあとがきもありません。 小説だけを読める形にしています。

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した

白い彗星
ファンタジー
異世界に召喚された少女は、危機に瀕した世界を救うために勇者として、魔王を討つ冒険に出た。 仲間と共に、死闘を繰り広げ、危険を突き進む少女はついに、魔王と呼ばれる存在を討ち、世界を救う。 世界を救った少女は『英雄』となった。 魔王を討つことで役目を終えた少女は、元いた世界に帰ることができたが……そこで待っていたのは、思いもよらない現実。 異世界に召喚されたことで、彼女の世界は、壊されてしまっていた。 「復讐、してやる……!」 『英雄』として異世界を救った少女は、かつて世界を救うために使ったその力で……その世界に復讐することを、決意する。 かつて過ごした世界を、共に旅をした友を、少女の復讐の炎が燃やし尽くしていく。 悲しみと怒りを抱いた少女が行き着く先とは……そして復讐のその先に、待っているものとは……? 小説家になろう、ノベルピア、カクヨムでも連載しています。

処理中です...