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93話・茨

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「えぇ、そうですよ。茨に続いて2人目の女の子ですね」

 いばらの聞いてきた事は、思っていた通りの質問だったので、そう答える。

「やっぱり、そうだよね!! やったー!!」

 私の答えを聞いた茨は、飛び跳ねながら喜びを全身で表す。
 茨が、1番始めに鬼神化を授かってから、その後鬼神化を授かった4人は皆男性だった。そのせいか、茨が密かに、同姓の鬼人の事を待っていた事は察していた。
 だから、心から喜んでいる茨を微笑ましく見ていたけど、茨は気づいているかどうか分からないが、飛び跳ねた時、茨の後ろで鏡を見ていた4人の顔すれすれを茨の拳が通りすぎたので、少し距離をとった4人から止めてくれという視線を感じた。

「茨、嬉しいのは分かりますが、とりあえず落ち着きなさい」

 私がそう言うと、後ろの4人がほっとした顔をする。

「はーい!!」

 茨は、元気良く返事をし、再び鏡をちらちら見ながら、

「お師匠様。この子、今神足通じんそくつうの練習してるみたいだけど、もしかして、もうここには来たんですか?」

 私に別の質問をしてくる。

「えぇ、ちょうど鬼神化スキルを使ってくれたんで、ここに来て貰い、あなた達が戻ってくる少し前に、戻りましたね」

「!? そうなんですね…」

 少し残念そうにしながら、そっと振り返り、後ろにいた星と金の事をキッと怒気の孕んだ目で睨みつける。
 睨まれた星と金は、顔が少し青くなっていた。
 私はそっと、星と金の2人を見た際に、宿命通しゅくみょうつうを使い、何があったのか確認してみる。
 確認した結果、どうやら、星と金の2人が、遠征から戻ってくる時、思ってたよりも疲れていたようで、茨の提案で、予定していた時間よりも、少し長めに休んで帰ってきたみたいだった。

「茨、そのくらいにしておきなさい」

「…分かりました」

 注意された茨は、しぶしぶ視線を鏡へ戻す。

「茨、何があったのか聞きはしませんが、会える機会が失くなった訳ではないので、そこまで落ち込まなくていいと思いますよ」

「そうだった!!」

 配下召喚の事を忘れていたのか、茨は、途端に元気になる。

「だから、早く会いたいかも知れませんが、楽しみが延びたと思って待ってみてはどうですか?」

「そうですね、分かりました。お師匠様の言う通り、楽しみに待っていようと思います!! だから、お師匠様も、その子が来たらすぐ教えて下さいね」

「なるべくそうするようにしますが、紹介は、ちゃんとラス君の時間がとれる時にですよ」

「はーい…」

「それじゃあ茨、その前にする事があるでしょ?」

 私はそう言いながら、2人を指す。
 茨は、私の指差す方を見て、

「あ!! 星と金も睨んじゃってごめんね…」

 すぐ2人に謝った。
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