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青葉、青々、生い茂る
3-2
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コンコン
書類にペンを走らせる音の中、外からノックの音が聞こえた。
「どうぞ」
「失礼します」
入ってきたのは親衛隊の子だった。
確かこの子は書記のところの親衛隊員だったかな?
「隊長に用があって来ました」
俺に?
「なんでしょうか」
会長に用があるものだと思っていたためびっくりした。
席を立ち親衛隊の子の所へ行こうとしたら、そのままで。と片手でやんわりと静止された。
もう片方の手にはA4サイズぐらいの茶封筒を持っている。
差し出された反射で茶封筒を受け取り「なんだろう」と思っていると
「体育祭の資料です」
と教えてもらった。
でもなんで親衛隊員から?
「副隊長は今日体調が優れないので早退しました。
なので同じクラスの僕が代わりに来たんです」
「あ、そうなんですか。
ありがとうございます」
後で小野先輩にはメッセージを送っておこう。
てか、さっきから”親衛隊の子”と呼んでいたが先輩だったのか…!
「あと伝言預かってて、『いい加減僕のこと來って名前で呼んでよ』と言ってました。
ではこれで失礼しますね」
「はい。…え、え?何その伝言?え?」
先輩は俺の困惑には目もくれず生徒会室を出て行った。
いい加減と言っていたが、言われたのは初めてだ。
誰かと勘違いしているのだろうか?となると今受け取った書類も本当に俺宛のものなのか心配になる…。
小野先輩、頭がこんがらがるぐらい体調がよろしくないのだろうか。
「おい」
「え?はい」
受け取った茶封筒の中身を確認していると今までペンを走らせていた会長が声を掛けてきた。
「その…」
「はい」
「…」
斜め下を見たまま動かない。
どうしたらいいのか分からず、会長を見たまま続きを待つ。
「…來って、あの」
「あぁ、親衛隊副隊長です」
「…」
会長は何とも言えない微妙な顔をした。したいであろう質問の意図は組めていなかったようだ。
そういえば小野先輩って副会長と付き合っているし、名前は知っているか。
「…名前で呼び合いたくなる程、仲が良いのか?
その、外野が言うのもなんだが、あまり仲が良くなると恋人である副会長が不安になると思う…。
あ、いや、仲良くするなとか、副会長が嫉妬深いとか、そういうことを言いたいのではなくてな。
苗字から名前で呼び合う仲になるっていうのは、二人の仲に進展があったと、そういう、なんというか、例えば、先輩と後輩の関係より深い関係になったと受け取れるようだが」
「えっと…」
普段の会長とは別人かのように、まとまっていない文を早口で喋る。
友人であり仕事仲間である副会長が不安にならないよう注意してくれている、ということだろうか。
「俺は別に嫉妬とか羨ましいとかそういうので言っているんではなくてでな―――」
「大丈夫ですよ」
「え?」
焦っている会長に申し訳なくなり、まだ続きそうな説得を過ぎる。
安心させるために。
「会長が思っているようなことにはならないですよ。
俺と小野先輩の会話の半分は先輩の惚気ですからね。仲を壊そうなんて思いつきもしませんよ。
俺は尊敬していて人として好き、という感じなので恋愛感情ではないですし」
「そうか…」
「はい」
会長の困り顔というか焦り顔というか、は少し和らいだ。
いらぬ誤解は解けただろうか?
俺が特別好きなのはアナタだ。と、そう言えたら良いのに。
「コーヒー淹れてくる」
「あ、俺も飲みたいので淹れてきますよ」
「じゃあ、頼む」
俺はカップを受け取り備え付けのキッチンに向かった。
「小野に恋人がいなかったら好きになっていたかもしれないのか?」
生徒会長の呟きは誰に届くことなく消えた。
書類にペンを走らせる音の中、外からノックの音が聞こえた。
「どうぞ」
「失礼します」
入ってきたのは親衛隊の子だった。
確かこの子は書記のところの親衛隊員だったかな?
「隊長に用があって来ました」
俺に?
「なんでしょうか」
会長に用があるものだと思っていたためびっくりした。
席を立ち親衛隊の子の所へ行こうとしたら、そのままで。と片手でやんわりと静止された。
もう片方の手にはA4サイズぐらいの茶封筒を持っている。
差し出された反射で茶封筒を受け取り「なんだろう」と思っていると
「体育祭の資料です」
と教えてもらった。
でもなんで親衛隊員から?
「副隊長は今日体調が優れないので早退しました。
なので同じクラスの僕が代わりに来たんです」
「あ、そうなんですか。
ありがとうございます」
後で小野先輩にはメッセージを送っておこう。
てか、さっきから”親衛隊の子”と呼んでいたが先輩だったのか…!
「あと伝言預かってて、『いい加減僕のこと來って名前で呼んでよ』と言ってました。
ではこれで失礼しますね」
「はい。…え、え?何その伝言?え?」
先輩は俺の困惑には目もくれず生徒会室を出て行った。
いい加減と言っていたが、言われたのは初めてだ。
誰かと勘違いしているのだろうか?となると今受け取った書類も本当に俺宛のものなのか心配になる…。
小野先輩、頭がこんがらがるぐらい体調がよろしくないのだろうか。
「おい」
「え?はい」
受け取った茶封筒の中身を確認していると今までペンを走らせていた会長が声を掛けてきた。
「その…」
「はい」
「…」
斜め下を見たまま動かない。
どうしたらいいのか分からず、会長を見たまま続きを待つ。
「…來って、あの」
「あぁ、親衛隊副隊長です」
「…」
会長は何とも言えない微妙な顔をした。したいであろう質問の意図は組めていなかったようだ。
そういえば小野先輩って副会長と付き合っているし、名前は知っているか。
「…名前で呼び合いたくなる程、仲が良いのか?
その、外野が言うのもなんだが、あまり仲が良くなると恋人である副会長が不安になると思う…。
あ、いや、仲良くするなとか、副会長が嫉妬深いとか、そういうことを言いたいのではなくてな。
苗字から名前で呼び合う仲になるっていうのは、二人の仲に進展があったと、そういう、なんというか、例えば、先輩と後輩の関係より深い関係になったと受け取れるようだが」
「えっと…」
普段の会長とは別人かのように、まとまっていない文を早口で喋る。
友人であり仕事仲間である副会長が不安にならないよう注意してくれている、ということだろうか。
「俺は別に嫉妬とか羨ましいとかそういうので言っているんではなくてでな―――」
「大丈夫ですよ」
「え?」
焦っている会長に申し訳なくなり、まだ続きそうな説得を過ぎる。
安心させるために。
「会長が思っているようなことにはならないですよ。
俺と小野先輩の会話の半分は先輩の惚気ですからね。仲を壊そうなんて思いつきもしませんよ。
俺は尊敬していて人として好き、という感じなので恋愛感情ではないですし」
「そうか…」
「はい」
会長の困り顔というか焦り顔というか、は少し和らいだ。
いらぬ誤解は解けただろうか?
俺が特別好きなのはアナタだ。と、そう言えたら良いのに。
「コーヒー淹れてくる」
「あ、俺も飲みたいので淹れてきますよ」
「じゃあ、頼む」
俺はカップを受け取り備え付けのキッチンに向かった。
「小野に恋人がいなかったら好きになっていたかもしれないのか?」
生徒会長の呟きは誰に届くことなく消えた。
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