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桜、季節、もう少し
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しおりを挟む「ねえ、君?」
もうすぐ進級する季節。
あともう少しでここ、聖塔学園を卒業する先輩に声を掛けられた。
「なんですか?」
声のした方へ振り向けば可愛いと言えば可愛いと言えるし、かっこいいと言えばかっこいいとも言える”かっこ可愛い”顔のした人が立っていた。
この学校のトップ10に入るだろう有名人だ。
それはなぜか、この学校の生徒会の親衛隊総隊長だからだ。
ここで1つこの学園の説明をする。
ここ聖塔学園は、古くから山奥にそびえ立つ小中高一貫の全寮制男子校である。特殊な制度があり、全生徒の上に立つ生徒会執行部は生徒の人気投票により決定されている。
行事の運営や学校の規約の改廃等仕事は様々であるため、遊び半分にできるものではない。が、過去遡っても仕事を全うできなかった者はいない。天は二物を与えたか。人気投票で決定されたにも関わらず運営が回らなかったことはないのだ。
親衛隊に総隊長ができあがった理由はここからだ。
外見至上主義の中決定された生徒会ではあるが、彼らは仕事もでき人を惹き寄せるカリスマもあった。
そのため、1生徒に変わりないはずの生徒会メンバーに対して、一部の生徒は崇拝していた。アイドル化とも言えよう。
抜け駆けなんぞしようものなら親衛隊が動き制裁が行われていた。
エスカレートしていった彼らを止める者は同じ隊に所属する中にはおらず、隊外部の者はとばっちりを受けたくないため何もできなかった。
親衛隊といううものの印象が下がっていった結果、長くなるので省くがなんやかんやあり、親衛隊総隊長という役職を設置することとなった。火の付きやすい過激派親衛隊の抑制だ。
ちなみに、裕福層が通う学校のため云百年と歴史を誇るが、改築を重ねているのか古さを感じない。
今に戻ろう。
主人公は親衛隊に全く関りがない。この総隊長とも全く関りがないため、なぜ話しかけられたのか見当がつかない。
「初対面でいきなり申し訳ないんだけど、僕の跡を継いでくれないか?」
跡を継いてくれ、何の跡か。
そう聞こうか迷ったが、この人の言う跡は総隊長しかないだろう。と思い
「お断りします」
これがまだ仲の良い先輩だったら考えたかもしれない…いや、さすがにないか。
断ったのに何も変化のない表情。予想通りの返答だったのだろうか。
「お願いだよ。信じてもらえないかもしれないが、君しかいないんだ。
確かに親衛隊は嫌われているし制裁が起これば仕事が大変だ。めんどくさいことも多い」
「なぜ俺に?」
何も分からない主人公はこう聞くしかなかった。
よく考えなくても選ばれる要素がないのだ。
身長は生徒会で二番目に高い生徒会長を越している。
容姿だって愛らしくもなければ美人というわけでもない。
美形というカテゴリーに入れはしない平凡顔である。
なぜかこの学園の顔面偏差値は高い。目が肥えた者が多いこの世界で美形にカテゴライズされることはないだろう。
人脈も普通といったところだ。
もしかしたら何よりも大事なのかもしれないが、生徒会は好きでも嫌いでもない。
そんな自分が1隊当たり数十人×親衛隊を持っている人数をまとめること等できるはずがない。
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