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13.エピローグ

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 部活が終わる時間となり、僕と博人。そしてゆみりさんと並んで、校門に向かう。ふと、ゆみりさんが足を止めて校舎を振り返った。
「私。この学校、好きよ」
 僕も博人も、校舎を眺める。まだ子どもたちの気配が残る学校。そんな子供たちを、今も見守ってくれている気がした。
「私も、この学校に救われた。この学校で過ごす時間がなかったら、私はまだ目覚めてなかったと思う」
 ゆみりさんが、僕と博人に振り返る。
「君たち二人が、ミステリー研究会に入ってくれたしね!これからも、一緒にミステリーに挑んで行こうね!」
 ゆみりさんのかわいいガッツポーズにも、いまいち気乗りがしない。もう、怖い思いはこりごりなんですけど。
「博人君」
 突然背後から声がして、僕は振り返った。
「あれ。真琴(まこと)じゃん。なんでここにんの?」
 博人が駆け寄った先に、髪の長いきれいな女の子がいた。うん?誰?
「買い物でこの近くに来たから、会えるかなと思って待ってた。よかった、会えて!」
 不思議そうに見つめる僕に振り返り、博人は照れながら言った。
「あ。前に話した、俺の彼女。津田 真琴(つだ まこと)さん。西小学校に通ってる」
 西小学校は、双葉小学校の隣の学区にある。
「どうも、こんにちは」
 彼女と紹介されても否定しない姿に、本当に彼氏彼女なのかと愕然とする。
「じゃあ、俺は真琴を送っていくから。また明日な!」
 そそくさと真琴さんと並んで帰って行く博人の後ろ姿を、呆然と見送る。
 僕たち、まだ小学校三年生だよ?!早くない?ねぇ、早くない?!
「幼なじみかぁ。いいよね。年少さんからだっけ?」
 僕は頷いたものの、ふと我に返って、恐る恐るゆみりさんの顔を見る。
「ゆみりさん、その話どこで聞きました・・・?」
「うん?あー、病室だったかな?」
 僕は焦る。その話の前にはゆみりさんに絶対聞かれたくない話をしていたんだけど?!
「他に、何か聞いてました、か?」
「他に?ひいらぎ君の日記がどうとか・・・?あ、いやいや。何も聞いてないよ?」
 これ、絶対に聞いてるやつだ!!僕は顔から火が出そうだった。うわー、勘弁してよー。
「私たちだって、大人になっても仲良くできてたら立派な幼なじみになるね」
「はぁ、まぁ、そうですね」
 僕は照れ隠しで、素っ気ない口調で答える。
「だからずっと、ミステリー研究会の部員でいてね!」
「いや、僕はそろそろサッカーを始めないと」
「かけ持ちは認めるので、どうぞどうぞ」
 余裕の切り返しに、僕は言葉に詰まる。やっぱりゆみりさんには敵わないや。
 二人で校門出て歩き始めたとき、感じたことのない感覚に襲われた。心をざらりと舐められたような不快感。
 ゆみりさんも、胸に手を当てて立ち止まっていた。
 僕はゆみりさんと顔を見合わせた。
 もしかして、これが?
 何かが起こるという予兆。
 僕たちに、防いでほしいと伝えている。
 どこかに、事件の火種が潜んでいる。僕たちに、それを見つけろと言われている気がした。
「明日、緊急会議だね」
 ゆみりさんが、強い眼差しで宣言する。
 僕たちの新たな謎解きが、再び幕を開ける。

                おわり
 


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