【完結】僕らのミステリー研究会

SATO SATO

文字の大きさ
上 下
3 / 13

3.親友ができました

しおりを挟む
「夜ご飯って言っても、大したものは作れないんだよ。ホント、簡単なものだけ」
「いや、それでもすごいよ。家のお手伝いもして、勉強もできるなんてさ、かっこよすぎでしょ」
 僕たちは宿題を終わらし、用意してもらったおやつを頬張っていた。
 おやつを用意してくれたお母さんは、僕が宿題を終わらせて明日の仕度も完了したことを報告すると、ものすごく喜んでいた。
「もう!博人君さまさまね!博人君さえ良ければ、毎日うちに寄ってくれていいんだからね!」
 上機嫌のお母さんが部屋から出て行くのを見届けて、博人は照れたように頭をかいた。
「いや、すごいありがたがられてるけど、俺にとってもすごくありがたい話なんだよな」
「え?何が?」
「こうして、放課後誰かと過ごせるっていうのが・・・、すごく嬉しい。やっぱさ、家に帰って一人の時間が長いとさ、寂しく思うときもあるわけで」
「・・・そうか。そうだよね。博人が嫌じゃなかったら、毎日来て。面倒くさくなったときには、帰っていいからさ」
「うん。うざくなったら、帰るわ」
「ははは、そうして」
 お互い笑い合う。
「なんかさ。ミステリー研究会って何だよ?って思ったけど、この出会いには感謝だな」
 僕の言葉に、博人は恥ずかしそうにうつむいた。
「柊ってさぁ、恥ずかしいこと結構言ってくるよね。褒め言葉とか、さ」
「そうなの?でも、いい!と思ったことは伝えないとね。伝えて損することって、なくない?」
 博人は少し考え込む。
「確かに。誰も損はしないのか」
「そうなんだよ。僕も言いたいことを伝えられて嬉しいし、言われた側が嫌じゃなければいいかなって」
 なるほどね。と博人は頷き、ふと真顔に戻った。
「けど、やっぱり変じゃね?ミステリー研究会って」
「結局、何でもありって部活なんだよね?」
 僕はゆみりさんの言葉を思い出す。

『この部活の活動内容は、ぶっちゃけ自由です。あ、表向きはミステリー小説などを読んで研究するってことになっているけど、ミステリーや謎なんてものは、実は私たちの周りに潜んでいるの。
 私たちはそれを見つけて、解き明かす!そんな感じ』

 正式な部活の日は火曜日と木曜日なんだけど、ミステリー研究会はそれ以外の日も、帰りに必ず図書室に寄ることを義務付けられた。
 そして、窓際の鉢植えの順番を確認する。
いつもは真ん中に置かれている赤い鉢植えが、一番左端に来ていたら、『緊急会議あり』ということで、図書室に待機しなければならない。
「なんか面倒だけど、図書室で待ち合わせして、鉢植え確認して帰ればいいよね?」
「だな!そもそも、緊急会議なんてあんのかな」
「それな!」
 僕は緊急会議があろうとなかろうと、博人と一緒に帰ってこうやって宿題ができるのなら満足だった。
 やがて町内で夕方を知らせるチャイムが鳴り、博人が腰を上げた。
「じゃあ、俺はそろそろ帰るよ」
「うん。今日はありがとう。明日からよろしく」
 念押しで、さらに約束を取り付ける。
 博人は、ニヤリと笑って頷いた。
 玄関で博人を見送っていると、お母さんがビニール袋を持って来て博人に手渡す。
「博人君、これお裾分け。小岩井家のお口に合うといいんだけど」
 博人は驚いた表情をしたけど、すぐにしっかりと袋を受け取り頭を下げた。
「ありがとうございます!いただきますっ」
 玄関の外まで見送ると、博人は袋の中身を覗き込んだ。
「うわっ。やっべ。めっちゃ、うれしい」
 その姿に、僕まで嬉しくなった。袋を覗き込むと、使い捨てのパックに肉じゃがとから揚げが入っているのが見えた。
「俺、肉じゃがとか、まだうまく作れなくって。すごくうれしい。柊のお母さんに、改めてお礼言っておいて」
「うん。分かった」
 手を振って歩き出す博人に、僕はふと声をかけた。
「ねぇ!博人が入りたかった部活って何?」
 博人はピタリと立ち止まり、振り返る。その顔には得意気な表情が浮かぶ。
「料理部」
 再び僕に背を向けて遠ざかって行く後ろ姿に、僕は猛烈に感動していた。
 仕事で帰りが遅いお母さんのために、夜ご飯の仕度をする博人。きっともっと色々作れるようになりたいと思って、料理部を希望したんだ。
 僕は決意した。ここに、野島(母)家、料理部を発足する。
 僕は家の何に駆け込みながら、叫んだ。
「お母さ~ん!僕たちに料理を教えて!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

守護霊のお仕事なんて出来ません!

柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。 死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。 そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。 助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。 ・守護霊代行の仕事を手伝うか。 ・死亡手続きを進められるか。 究極の選択を迫られた未蘭。 守護霊代行の仕事を引き受けることに。 人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。 「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」 話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎ ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。

【完結】またたく星空の下

mazecco
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 君とのきずな児童書賞 受賞作】 ※こちらはweb版(改稿前)です※ ※書籍版は『初恋×星空シンバル』と改題し、web版を大幅に改稿したものです※ ◇◇◇冴えない中学一年生の女の子の、部活×恋愛の青春物語◇◇◇ 主人公、海茅は、フルート志望で吹奏楽部に入部したのに、オーディションに落ちてパーカッションになってしまった。しかもコンクールでは地味なシンバルを担当することに。 クラスには馴染めないし、中学生活が全然楽しくない。 そんな中、海茅は一人の女性と一人の男の子と出会う。 シンバルと、絵が好きな男の子に恋に落ちる、小さなキュンとキュッが詰まった物語。

おなら、おもっきり出したいよね

魚口ホワホワ
児童書・童話
 ぼくの名前は、出男(でるお)、おじいちゃんが、世界に出て行く男になるようにと、つけられたみたい。  でも、ぼくの場合は、違うもの出ちゃうのさ、それは『おなら』すぐしたくなっちゃんだ。  そんなある日、『おならの妖精ププ』に出会い、おならの意味や大切さを教えてもらったのさ。  やっぱり、おならは、おもっきり出したいよね。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

ちょっとだけマーメイド~暴走する魔法の力~

ことは
児童書・童話
星野桜、小学6年生。わたしには、ちょっとだけマーメイドの血が流れている。 むかしむかし、人魚の娘が人間の男の人と結婚して、わたしはずっとずっと後に生まれた子孫の一人だ。 わたしの足は水に濡れるとうろこが生え、魚の尾に変化してしまう。 ――わたし、絶対にみんなの前でプールに入ることなんてできない。もしそんなことをしたら、きっと友達はみんな、わたしから離れていく。 だけど、おぼれた麻衣ちゃんを助けるため、わたしはあの日プールに飛び込んだ。 全14話 完結

ホントのキモチ!

望月くらげ
児童書・童話
中学二年生の凜の学校には人気者の双子、樹と蒼がいる。 樹は女子に、蒼は男子に大人気。凜も樹に片思いをしていた。 けれど、大人しい凜は樹に挨拶すら自分からはできずにいた。 放課後の教室で一人きりでいる樹と出会った凜は勢いから告白してしまう。 樹からの返事は「俺も好きだった」というものだった。 けれど、凜が樹だと思って告白したのは、蒼だった……! 今さら間違いだったと言えず蒼と付き合うことになるが――。 ホントのキモチを伝えることができないふたり(さんにん?)の ドキドキもだもだ学園ラブストーリー。

鎌倉西小学校ミステリー倶楽部

澤田慎梧
児童書・童話
【「鎌倉猫ヶ丘小ミステリー倶楽部」に改題して、アルファポリスきずな文庫より好評発売中!】 https://kizuna.alphapolis.co.jp/book/11230 【「第1回きずな児童書大賞」にて、「謎解きユニーク探偵賞」を受賞】 市立「鎌倉西小学校」には不思議な部活がある。その名も「ミステリー倶楽部」。なんでも、「学校の怪談」の正体を、鮮やかに解明してくれるのだとか……。 学校の中で怪奇現象を目撃したら、ぜひとも「ミステリー倶楽部」に相談することをオススメする。 案外、つまらない勘違いが原因かもしれないから。 ……本物の「お化け」や「妖怪」が出てくる前に、相談しに行こう。 ※本作品は小学校高学年以上を想定しています。作中の漢字には、ふりがなが多く振ってあります。 ※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。 ※本作品は、三人の主人公を描いた連作短編です。誰を主軸にするかで、ジャンルが少し変化します。 ※カクヨムさんにも投稿しています(初出:2020年8月1日)

とじこめラビリンス

トキワオレンジ
児童書・童話
【東宝×アルファポリス第10回絵本・児童書大賞 優秀賞受賞】 太郎、麻衣子、章純、希未の仲良し4人組。 いつものように公園で遊んでいたら、飼い犬のロロが逃げてしまった。 ロロが迷い込んだのは、使われなくなった古い美術館の建物。ロロを追って、半開きの搬入口から侵入したら、シャッターが締まり閉じ込められてしまった。 ここから外に出るためには、ゲームをクリアしなければならない――

処理中です...