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3.親友ができました
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「夜ご飯って言っても、大したものは作れないんだよ。ホント、簡単なものだけ」
「いや、それでもすごいよ。家のお手伝いもして、勉強もできるなんてさ、かっこよすぎでしょ」
僕たちは宿題を終わらし、用意してもらったおやつを頬張っていた。
おやつを用意してくれたお母さんは、僕が宿題を終わらせて明日の仕度も完了したことを報告すると、ものすごく喜んでいた。
「もう!博人君さまさまね!博人君さえ良ければ、毎日うちに寄ってくれていいんだからね!」
上機嫌のお母さんが部屋から出て行くのを見届けて、博人は照れたように頭をかいた。
「いや、すごいありがたがられてるけど、俺にとってもすごくありがたい話なんだよな」
「え?何が?」
「こうして、放課後誰かと過ごせるっていうのが・・・、すごく嬉しい。やっぱさ、家に帰って一人の時間が長いとさ、寂しく思うときもあるわけで」
「・・・そうか。そうだよね。博人が嫌じゃなかったら、毎日来て。面倒くさくなったときには、帰っていいからさ」
「うん。うざくなったら、帰るわ」
「ははは、そうして」
お互い笑い合う。
「なんかさ。ミステリー研究会って何だよ?って思ったけど、この出会いには感謝だな」
僕の言葉に、博人は恥ずかしそうにうつむいた。
「柊ってさぁ、恥ずかしいこと結構言ってくるよね。褒め言葉とか、さ」
「そうなの?でも、いい!と思ったことは伝えないとね。伝えて損することって、なくない?」
博人は少し考え込む。
「確かに。誰も損はしないのか」
「そうなんだよ。僕も言いたいことを伝えられて嬉しいし、言われた側が嫌じゃなければいいかなって」
なるほどね。と博人は頷き、ふと真顔に戻った。
「けど、やっぱり変じゃね?ミステリー研究会って」
「結局、何でもありって部活なんだよね?」
僕はゆみりさんの言葉を思い出す。
『この部活の活動内容は、ぶっちゃけ自由です。あ、表向きはミステリー小説などを読んで研究するってことになっているけど、ミステリーや謎なんてものは、実は私たちの周りに潜んでいるの。
私たちはそれを見つけて、解き明かす!そんな感じ』
正式な部活の日は火曜日と木曜日なんだけど、ミステリー研究会はそれ以外の日も、帰りに必ず図書室に寄ることを義務付けられた。
そして、窓際の鉢植えの順番を確認する。
いつもは真ん中に置かれている赤い鉢植えが、一番左端に来ていたら、『緊急会議あり』ということで、図書室に待機しなければならない。
「なんか面倒だけど、図書室で待ち合わせして、鉢植え確認して帰ればいいよね?」
「だな!そもそも、緊急会議なんてあんのかな」
「それな!」
僕は緊急会議があろうとなかろうと、博人と一緒に帰ってこうやって宿題ができるのなら満足だった。
やがて町内で夕方を知らせるチャイムが鳴り、博人が腰を上げた。
「じゃあ、俺はそろそろ帰るよ」
「うん。今日はありがとう。明日からよろしく」
念押しで、さらに約束を取り付ける。
博人は、ニヤリと笑って頷いた。
玄関で博人を見送っていると、お母さんがビニール袋を持って来て博人に手渡す。
「博人君、これお裾分け。小岩井家のお口に合うといいんだけど」
博人は驚いた表情をしたけど、すぐにしっかりと袋を受け取り頭を下げた。
「ありがとうございます!いただきますっ」
玄関の外まで見送ると、博人は袋の中身を覗き込んだ。
「うわっ。やっべ。めっちゃ、うれしい」
その姿に、僕まで嬉しくなった。袋を覗き込むと、使い捨てのパックに肉じゃがとから揚げが入っているのが見えた。
「俺、肉じゃがとか、まだうまく作れなくって。すごくうれしい。柊のお母さんに、改めてお礼言っておいて」
「うん。分かった」
手を振って歩き出す博人に、僕はふと声をかけた。
「ねぇ!博人が入りたかった部活って何?」
博人はピタリと立ち止まり、振り返る。その顔には得意気な表情が浮かぶ。
「料理部」
再び僕に背を向けて遠ざかって行く後ろ姿に、僕は猛烈に感動していた。
仕事で帰りが遅いお母さんのために、夜ご飯の仕度をする博人。きっともっと色々作れるようになりたいと思って、料理部を希望したんだ。
僕は決意した。ここに、野島(母)家、料理部を発足する。
僕は家の何に駆け込みながら、叫んだ。
「お母さ~ん!僕たちに料理を教えて!!」
「いや、それでもすごいよ。家のお手伝いもして、勉強もできるなんてさ、かっこよすぎでしょ」
僕たちは宿題を終わらし、用意してもらったおやつを頬張っていた。
おやつを用意してくれたお母さんは、僕が宿題を終わらせて明日の仕度も完了したことを報告すると、ものすごく喜んでいた。
「もう!博人君さまさまね!博人君さえ良ければ、毎日うちに寄ってくれていいんだからね!」
上機嫌のお母さんが部屋から出て行くのを見届けて、博人は照れたように頭をかいた。
「いや、すごいありがたがられてるけど、俺にとってもすごくありがたい話なんだよな」
「え?何が?」
「こうして、放課後誰かと過ごせるっていうのが・・・、すごく嬉しい。やっぱさ、家に帰って一人の時間が長いとさ、寂しく思うときもあるわけで」
「・・・そうか。そうだよね。博人が嫌じゃなかったら、毎日来て。面倒くさくなったときには、帰っていいからさ」
「うん。うざくなったら、帰るわ」
「ははは、そうして」
お互い笑い合う。
「なんかさ。ミステリー研究会って何だよ?って思ったけど、この出会いには感謝だな」
僕の言葉に、博人は恥ずかしそうにうつむいた。
「柊ってさぁ、恥ずかしいこと結構言ってくるよね。褒め言葉とか、さ」
「そうなの?でも、いい!と思ったことは伝えないとね。伝えて損することって、なくない?」
博人は少し考え込む。
「確かに。誰も損はしないのか」
「そうなんだよ。僕も言いたいことを伝えられて嬉しいし、言われた側が嫌じゃなければいいかなって」
なるほどね。と博人は頷き、ふと真顔に戻った。
「けど、やっぱり変じゃね?ミステリー研究会って」
「結局、何でもありって部活なんだよね?」
僕はゆみりさんの言葉を思い出す。
『この部活の活動内容は、ぶっちゃけ自由です。あ、表向きはミステリー小説などを読んで研究するってことになっているけど、ミステリーや謎なんてものは、実は私たちの周りに潜んでいるの。
私たちはそれを見つけて、解き明かす!そんな感じ』
正式な部活の日は火曜日と木曜日なんだけど、ミステリー研究会はそれ以外の日も、帰りに必ず図書室に寄ることを義務付けられた。
そして、窓際の鉢植えの順番を確認する。
いつもは真ん中に置かれている赤い鉢植えが、一番左端に来ていたら、『緊急会議あり』ということで、図書室に待機しなければならない。
「なんか面倒だけど、図書室で待ち合わせして、鉢植え確認して帰ればいいよね?」
「だな!そもそも、緊急会議なんてあんのかな」
「それな!」
僕は緊急会議があろうとなかろうと、博人と一緒に帰ってこうやって宿題ができるのなら満足だった。
やがて町内で夕方を知らせるチャイムが鳴り、博人が腰を上げた。
「じゃあ、俺はそろそろ帰るよ」
「うん。今日はありがとう。明日からよろしく」
念押しで、さらに約束を取り付ける。
博人は、ニヤリと笑って頷いた。
玄関で博人を見送っていると、お母さんがビニール袋を持って来て博人に手渡す。
「博人君、これお裾分け。小岩井家のお口に合うといいんだけど」
博人は驚いた表情をしたけど、すぐにしっかりと袋を受け取り頭を下げた。
「ありがとうございます!いただきますっ」
玄関の外まで見送ると、博人は袋の中身を覗き込んだ。
「うわっ。やっべ。めっちゃ、うれしい」
その姿に、僕まで嬉しくなった。袋を覗き込むと、使い捨てのパックに肉じゃがとから揚げが入っているのが見えた。
「俺、肉じゃがとか、まだうまく作れなくって。すごくうれしい。柊のお母さんに、改めてお礼言っておいて」
「うん。分かった」
手を振って歩き出す博人に、僕はふと声をかけた。
「ねぇ!博人が入りたかった部活って何?」
博人はピタリと立ち止まり、振り返る。その顔には得意気な表情が浮かぶ。
「料理部」
再び僕に背を向けて遠ざかって行く後ろ姿に、僕は猛烈に感動していた。
仕事で帰りが遅いお母さんのために、夜ご飯の仕度をする博人。きっともっと色々作れるようになりたいと思って、料理部を希望したんだ。
僕は決意した。ここに、野島(母)家、料理部を発足する。
僕は家の何に駆け込みながら、叫んだ。
「お母さ~ん!僕たちに料理を教えて!!」
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