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決断

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 その日の夜。カトラさんが、控えめに声をかけてきた。

「……ねえ。昼に話してた、ことだけど」

「……はい」

 ひと息吸って。彼が口を開く。

「僕は、確かめない。……貴方の心は、読まない」

 小さな絶望が、生まれる。心のどこかで覚悟していたのだ。……やはり、信用するのは難しかったのだろう。諦めるしかない。仕方の無いことだ。
 しかし、言葉とは裏腹な彼の穏やかな表情に俺は面食らった。

「……気持ち悪くないって、言ってくれただけでいいんだ。確かめなくても、きっとそうだって思えるから。例え嘘だとしても、貴方の言葉を、真意を隠してくれた優しさを信じていたい」

 声は、僅かに和らいだように思う。

 カトラさんがそう言うのなら、無理に心を読んでもらうことはしなくていいだろう。触って確かめるのは簡単だ。だけどその選択をするのは、彼にとって強い決心が要るものだっただろうから。心の読める彼が、ただの言葉に賭けてくれた。それを退けるのは無粋だ。

「……なんか、すごく嬉しいです」


「……ふふ、それだけ。貴方もあまり無理しないでね……おやすみ」

「ええ。おやすみなさい」

***

「ユウト、時間だ。――なんだか、晴れやかな顔をしているな」


「……カトラさんと何かあったか?」

「えっ、なんで……」

「……ふ、伊達にパーティを組んでいないさ。何があったかはわからないが……良いことなら、良かった」

 優しい眼差しをするロイに、俺は胸がいっぱいになって──うん、と返した。
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