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還ってきた「辺境の街」編

第108話 暴漢、床を舐め回す

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 ボクが必死の思いで人間界に戻ってきてからメダニアでやったこと。

 ・蜘蛛になる
 ・女体化する
 ・お洋服買って自分のかわいさを認識する
 ・ゼノスを尋問じんもん
 ・ドミーを尋問←new!

 え、いる?
 一日に二回も別人を尋問する人。
 え~っと……ボク、一ヶ月前まではただの一般冒険者だったんだけど……。

『それが今じゃ、悪魔や魔物と一緒になって人間や神を尋問する謎の半魔神だからな』

 暇なのかな?
 最近、やたらと解説的な突っ込みを入れてくるようになったサタン。
 いちいち反応しててもキリがないので、無視しよ。
 で、例によって(?)椅子に縛りつけられているドミーに目を向ける。
 金髪で襟足えりあし長め。
 背は少し低めで手足は短い。
 橙色だいだいいろの肌をした、一重ひとえの男。

「オレを誰と思ってるっ!? オレは縄抜け名人だぞ!? こんな縄くらい楽勝で……ラクショ~で……って、あれ?」

「あ~、無駄だよ。キミのスキル『虚勢ブラフ』はもう使えない」

「──ッ! てめぇ、このクソアマッ! なんで誰にも教えてないオレのスキルを……!」

 ピクッ──。

「クソアマ……?」

 なんだろう。
 無性にカチンと来るのはボクが今、女の子だから?
 そうだな、ちょうどいい。
 奪ったばかりのスキルを使ってみることにしよう。


 【虚勢ブラフ


 おお、なんだか万能感。
 口に出したことが本当に現実化しそうな……。


「ドミー・ボウガンは、地面を舐めて暴言を謝罪する」


 ガタッ!

 
 ドミーを縛り付けた椅子が前につんのめる。

「な、なんで……! か、体が勝手に……! うぐ、うぐぐ……! べろっ……べろべろべろべろべろ~~~~~っ! しゅ、しゅみましぇ~~~ん! ク、クショアマだにゃんて失礼なこと言っとぅぇ……しゅません、べっろべろべろ、でしたぁ~~~!」

 謝りながらベロベロと床を舐め回すドミー。
 顔から床に着地したもんだから、鼻から血がダラダラと流れて床に広がっている。

 うわぁ……。

「え、ちょっと待って、無理」
暴漢ぼうかんさん、床汚いですよ?」
「ふむ、これが人間の、床掃除か?」
「あらぁ~、これ逆に床が汚くなってるんじゃないかしらぁ~?」

 ドン引きな女性陣を尻目に、ラルクくんは慌てて鼻血ダラダラのドミーに『回復ヒール』をかけてあげている。

 うん……このスキル、ヤバすぎるな……。

『おい、お前にはオレの体を預けてるから忠告しとくけど過信かしん禁物きんもつだぞ。どんなスキルも一長一短だ。それにスキルを使い続けると……』

(うん、使用者に影響が出るんだよね? その影響が出てるのが……)

『まさに目の前の男だな。スキルを使い続けて増長ぞうちょうした結果だ。こいつみたいになりたくなかったら、使いどきはよく考えろよ? なんてったって、お前の体から出たらオレ様は消滅だからな』

(うん、ご忠告ありがと)

 さて。
 おそらくこれまでに『虚勢ブラフ』を使いまくって、自己がゆがみに歪みまくってきたのであろう、この床べろんべろん男。
 ドミー・ボウガンから、色々聞いていくとするかぁ。
 町を出るまでにまたちょっかい出されたんじゃ面倒だ。

 それに。

 ボクたちが町を出て行っても、ラルクくんの教会はずっとここに残るわけで。
 町を出るにしても禍根かこんを残さないにしたことはないよね。

 ってことで。
 本日二度目の──尋問タイムの始まりだ。


 【尋問タイム 対象:ドミー・ボウガン】


 Q.名前は?
 A.ドミー・ボウガンです。

 Q.年齢は?
 A.二十二歳です。

 Q.出身は?
 A.イシュタム……です。

 Q.本当の出身は?
 A.うっ……トウキョウトのオウジです。

 Q.そこは異世界Bn6?
 A.Bn6……? ああ、そういえば、あのボンクラ女神がそんなこと言ってたような……。はぁ、多分それです。

 Q.どうやってこっちの世界に渡ったの?
 A.ヤマギシのやつをイジメ……ゴホン、一緒に遊んでたら、なんかピカーって光に包まれて。んで、天界からの地上ですよ。

 Q.天界と女神について教えて。
 A.天界はよくわかんないっすよ。真っ白だったし。女神は……なんて言ったかな、ザリエル? とかいう女神だった気がするッス。金髪ボブでオッパイでっけぇ気弱な感じの。いかにも仕事できなさそうな感じだったッスね。

 Q.つまり、神にこっちの世界に呼ばれたと?
 A.そうっすね。

 Q.それがなんでこんなところで弩弓どきゅう兵を?
 A.はぁ……話せば長いんですけど。つまんで言うと、神が召喚しょうかんしたかったのは山崎だけだったんスよ。オレは巻き込まれたってわけで。んで、特になにもひいでてなかったオレは、こうして公務員コウムインやらせてもらってるわけッス。

 Q.コウムイン?
 A.あ~、ようするに国仕くにづかえってやつッスね。一番食いっぱぐれがない手堅い仕事ッスよ。こっちでは手堅てがたく生きることに決めたんで。

 Q.それが、なんでこんなところでチンピラみたいな真似をしてる?
 A.チンピラ……っていうか、ほら、オレのスキルがアレじゃないッスか。それでちょっとだけ見栄みえを張り続けてるうちに……ね? 勝手にみんなに持ち上げられたってわけッス。

 Q.じゃあ、お前が「もうボクたちに手を出すな」と言えば、みんな従うか?
 A.あ~、どうッスかねぇ……。ほら、今のオレ、スキル使えないんでしょ? それだと言うこと聞かせられるかどうか……。

 Q.お前にスキルを再び使えるようにさせる気はない。他に、町の連中を従わせられる奴はいないのか?
 A.あ~、それならやっぱ『ディー』ッスかね。

 Q.ディー?
 A.ほら、元々はあなた方を娼館しょうかんに売り飛ばそうとしたわけじゃないッスか。そこのボスっすよ。女ッス。これがまたチョ~いい女で……。

 Q.そのディーにはどこに行けば会える?
 A.オレなら案内できますよ。その、スキルさえまた使えるようにしてもらえれば……

 Q.また床を舐めたいのかな?(にっこり)
 A.ウソっす! 案内します! ご案内しますよ! はい、六名様ァ! 喜んでェ! 


 【尋問タイムおわり】


 うん。
 今だと、ちょうどゼノスもいない。
 あんな色欲しきよく権化ごんげを連れて娼館に行くだなんて考えただけでもゾッとする。
 ってことで。
 ボクたちは急遽きゅうきょ、この町を裏から仕切ってるらしい『ディー』という女性に会いに行くことになった。
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