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おじさん、巻き込まれるの巻
第12話 おじさん、怒る
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俺に返り討ちにされた男の一人。
そいつが振り向いて叫ぶ。
「おい、あんた! あんたこういう時のためにいるんだろうが! いっつも偉そうに命令ばっかしやがって! あんたが責任持って……って、あれ? いない……?」
離れたところから俺たちを観察していた男。
そいつの姿が跡形もなく消え去っていた。
(あの一瞬で……?)
周囲の気配を探るが反応はない。
「……まだやるかい?」
「ぐ……! 覚えてろ、てめぇら!」
男たちは捨て台詞を残して逃げ去っていた。
「よかったのか、逃がしても? 騎士団の方で締め上げてやってもよかったんだが」
「あぁ、あいつらは『命令された』って言ってただろ。おそらく捕まえても何も知らんよ」
「ふぅむ……まるで」
盗賊ギルドのようだ。
互いにそう思うが口に出さない。
孤児院の子供や院長たちの前だ。
わざわざ口に出して不安にさせる必要はない。
「さて、と……。ごめんね、怖かったね?」
しゃがんで子どもたちに声を掛ける。
「……」
あれ……?
もしかして怖がらせちゃったかな?
一瞬の間の後。
「ううん! おじさん、すごかった!」
「かっこいい!」
「ねぇねぇ、今のなんなの!?」
「おじさん、勇者なの?」
「ばぁ~か! 見てみろよ! 髪長いし賢者様だよ!」
俺は、爆発するかのように押しかけてきた子どもたちにもみくちゃにされる。
「ちょちょちょ……!」
「あはは……! ケント、もうすっかり子どもたちの英雄ね!」
「わぁ~い! えいゆ~!」
「えいゆ~おじさん!」
「ちょっ、セオリアも笑ってないで助け……ぐぇ!」
「ふふ……ケントにも弱点があったなんてね!」
「ったくぅ~、なんだよそれぇ~……」
わ~わ~きゃ~きゃ~と騒ぐ子どもたちが飽きるまでもみくちゃにされた後、孤児院の中に通された俺たちは『マム』と呼ばれる院長から事情を聞かされた。
「なるほど。数年前から地上げ屋が来るようになった、と」
「ええ、なんでもここに大きな施設を建てるとかで」
「でも孤児院って国の土地なんじゃないのか? そんなことを勝手にしていいのか?」
「いえ、公にはされいませんが、ここは創始者クレイブ様の個人で所有する土地なのです」
「へぇ、そうだったんだ。その人は?」
「それがもうずっと行方がわからず……。さいわい院は皆様からのご寄付でどうにかやっていけているのですが……」
「なるほど。じゃあ『何者』が『何の目的』で『何』を建てようとしてるのか。まずはそれを知ることからだな……」
「ケント、もしかして……」
「あぁ、せっかく知り合った縁だ。もし解決出来るようなら力になりたいと思ってる。それとも、魔物大量暴走の調査や冒険者ギルドの復興、騎士団の指導を優先したほうがいいか?」
「いいえ、私としては育った孤児院を助けてくれようとしてるのは嬉しいんだけど……その……ケントがあまりにも色々と背負い過ぎじゃないかなって……」
セオリアは心配そうに呟く。
「心配するなって。こちとら十年間なにも背負ってこなかったんだ。これくらいなんてこたねぇよ。それに……最初に背負わせたのはお前だろ?」
「それはそうだが……! うぅ……」
俺たちのやりとりを静かに見守っていたマムが諭すように優しく告げる。
「セオリア、あなたは本当にいい人を見つけたのね。あなたはいつも一人で全部抱え込んでいたから。こういう風に頼ることの出来る人を見つけられた……本当によかったわね、セオリア」
「そんな、マム……」
「ってことでだ。マムもこう言ってることだし、一旦俺に預からせてくれ。俺としてもちょっと気になることもあってな」
「気になること?」
「あぁ」
消えた男。
あいつは俺を知ってるふうだった。
なにか情報を引き出せる可能性があるとしたらあいつから──だな。
◇
帰り道。
視界の悪い裏路地を抜けた瞬間だった。
「ケント、危な──!」
先に大通りに出た俺の後ろ。
まだ裏通りに体を残してるセオリアが、俺に向かって手を伸ばした。
その腕に。
上から降ってきた男の短刀が刺さ──る。
寸
前
で。
ギィン──!
俺はセオリアの腰から剣を抜き取り、男の短刀を受け止めた。
ハラリ──。
セオリアの腕につけていたミサンガが切れ、地面に落ちる。
「貴様──セオリアを狙ったな!」
降ってきた男。
見覚えがある。
いつの間にか姿を消していた地上げ屋たちの元締め。
俺を見て驚いた反応を見せた男。
横一線の大きなキズが鼻にある目つきの悪い男。
そいつは細い目を見開くと不気味な笑い声を上げた。
「ぎゅっ……ぎゅぎゅぎゅぎゅ……! ケント……ケント・リバぁー……! やはり本物……! ぎゅぎゅぎゅ……俺は、てめえを殺して再び名を揚げてやる……!」
やはり俺を知っている……!?
こいつ……元冒険者か!?
そいつが振り向いて叫ぶ。
「おい、あんた! あんたこういう時のためにいるんだろうが! いっつも偉そうに命令ばっかしやがって! あんたが責任持って……って、あれ? いない……?」
離れたところから俺たちを観察していた男。
そいつの姿が跡形もなく消え去っていた。
(あの一瞬で……?)
周囲の気配を探るが反応はない。
「……まだやるかい?」
「ぐ……! 覚えてろ、てめぇら!」
男たちは捨て台詞を残して逃げ去っていた。
「よかったのか、逃がしても? 騎士団の方で締め上げてやってもよかったんだが」
「あぁ、あいつらは『命令された』って言ってただろ。おそらく捕まえても何も知らんよ」
「ふぅむ……まるで」
盗賊ギルドのようだ。
互いにそう思うが口に出さない。
孤児院の子供や院長たちの前だ。
わざわざ口に出して不安にさせる必要はない。
「さて、と……。ごめんね、怖かったね?」
しゃがんで子どもたちに声を掛ける。
「……」
あれ……?
もしかして怖がらせちゃったかな?
一瞬の間の後。
「ううん! おじさん、すごかった!」
「かっこいい!」
「ねぇねぇ、今のなんなの!?」
「おじさん、勇者なの?」
「ばぁ~か! 見てみろよ! 髪長いし賢者様だよ!」
俺は、爆発するかのように押しかけてきた子どもたちにもみくちゃにされる。
「ちょちょちょ……!」
「あはは……! ケント、もうすっかり子どもたちの英雄ね!」
「わぁ~い! えいゆ~!」
「えいゆ~おじさん!」
「ちょっ、セオリアも笑ってないで助け……ぐぇ!」
「ふふ……ケントにも弱点があったなんてね!」
「ったくぅ~、なんだよそれぇ~……」
わ~わ~きゃ~きゃ~と騒ぐ子どもたちが飽きるまでもみくちゃにされた後、孤児院の中に通された俺たちは『マム』と呼ばれる院長から事情を聞かされた。
「なるほど。数年前から地上げ屋が来るようになった、と」
「ええ、なんでもここに大きな施設を建てるとかで」
「でも孤児院って国の土地なんじゃないのか? そんなことを勝手にしていいのか?」
「いえ、公にはされいませんが、ここは創始者クレイブ様の個人で所有する土地なのです」
「へぇ、そうだったんだ。その人は?」
「それがもうずっと行方がわからず……。さいわい院は皆様からのご寄付でどうにかやっていけているのですが……」
「なるほど。じゃあ『何者』が『何の目的』で『何』を建てようとしてるのか。まずはそれを知ることからだな……」
「ケント、もしかして……」
「あぁ、せっかく知り合った縁だ。もし解決出来るようなら力になりたいと思ってる。それとも、魔物大量暴走の調査や冒険者ギルドの復興、騎士団の指導を優先したほうがいいか?」
「いいえ、私としては育った孤児院を助けてくれようとしてるのは嬉しいんだけど……その……ケントがあまりにも色々と背負い過ぎじゃないかなって……」
セオリアは心配そうに呟く。
「心配するなって。こちとら十年間なにも背負ってこなかったんだ。これくらいなんてこたねぇよ。それに……最初に背負わせたのはお前だろ?」
「それはそうだが……! うぅ……」
俺たちのやりとりを静かに見守っていたマムが諭すように優しく告げる。
「セオリア、あなたは本当にいい人を見つけたのね。あなたはいつも一人で全部抱え込んでいたから。こういう風に頼ることの出来る人を見つけられた……本当によかったわね、セオリア」
「そんな、マム……」
「ってことでだ。マムもこう言ってることだし、一旦俺に預からせてくれ。俺としてもちょっと気になることもあってな」
「気になること?」
「あぁ」
消えた男。
あいつは俺を知ってるふうだった。
なにか情報を引き出せる可能性があるとしたらあいつから──だな。
◇
帰り道。
視界の悪い裏路地を抜けた瞬間だった。
「ケント、危な──!」
先に大通りに出た俺の後ろ。
まだ裏通りに体を残してるセオリアが、俺に向かって手を伸ばした。
その腕に。
上から降ってきた男の短刀が刺さ──る。
寸
前
で。
ギィン──!
俺はセオリアの腰から剣を抜き取り、男の短刀を受け止めた。
ハラリ──。
セオリアの腕につけていたミサンガが切れ、地面に落ちる。
「貴様──セオリアを狙ったな!」
降ってきた男。
見覚えがある。
いつの間にか姿を消していた地上げ屋たちの元締め。
俺を見て驚いた反応を見せた男。
横一線の大きなキズが鼻にある目つきの悪い男。
そいつは細い目を見開くと不気味な笑い声を上げた。
「ぎゅっ……ぎゅぎゅぎゅぎゅ……! ケント……ケント・リバぁー……! やはり本物……! ぎゅぎゅぎゅ……俺は、てめえを殺して再び名を揚げてやる……!」
やはり俺を知っている……!?
こいつ……元冒険者か!?
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