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第四幕 VS大手レコード会社
ACT104
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一同が会した一回目の話し合いから一週間。
思いの外早く、目下の目的――作曲家(ユーチューバー)が見つかった。
「ホントに見つかったの?」
私の問いに高野さんは、さも当然と言った具合に頷いた。
「まあ、私ならもう少し早く突きとめてたけど」
「たまに思うんだけど、高野さんって怖いよね」
「怖い? 何が?」
「隠し事できない感じ? 敵に回したら怖そう」
冗談のつもりで言ったのだが、「そうね。少なくとも結衣の事なら破滅させることくらい訳ないわね」なんて言うもんだからガクブル。
高野さんが言うには、投稿されていた動画を詳しく見てみればところどころに場所を特定できる情報が映っているとの事……やっぱり高野さんって怖い!
「だから結衣。私を怒らせないでね」
「なに? 高野さん?」
高野さんは腕時計の文字盤を私に向けて、
「レッスンの時間まであと20分。スタジオまで車で15分。あと5分で支度できるのよね?」
鋭い眼光が私を射抜く。
「もちろんですとも!?」
私はダッシュで身支度を始めた。
…………
……
…
「それで、ここが……」
値踏みするように目の前の一軒家を見つめる。
ごく普通の家だ。
それ以上でもそれ以下でもない。
「ここが私たちの曲を作ってくれる人の家なのね?」
「正確には「予定」ですど」
住宅街に突如として現れた人気女優と人気アイドル。
騒ぎになる前にさっさと片を付けたい。
そもそも、何で私がMIKAと一緒に作曲の交渉に出向いているのだ?
普通、こういうのは交渉専門のスタッフとかがやるんじゃないの?
しかしそこで私は思い出す。
私たちがCDを出すレーベルは普通じゃない。
最下層、底辺の弱小レーベルだ。
その結果、まさかの歌手自らが交渉に赴くという事態が発生。
純粋な人員不足だ。
なんで人気アイドル二人が弱小レーベルからCDを出すのか疑問に思って尋ねてみたが、回答は得られなかった。
きっと深い理由があるのだろう。
それ即ち、面倒事である。
私にその問題が飛び火し、巻き添えを食わない事を祈るばかりである。
……って、良く考えれば充分に巻き込まれている。
時すでに遅しというヤツだ。
「高野さんたちに任せた方がいいんじゃない?」
「はぁ……、あのマネージャーさんは優秀だけど、あくまで裏方。ステージに立つのは私たち。私たちに曲を作ってもいいと思わせるには本人が訊ねる方がいい」
分かったような、分からなかったような……
そんな事より、ため息つかれた!?
私、先輩なんですけど!?
そんな事を思っている間に、MIKAはインターホンを押していた。
思いの外早く、目下の目的――作曲家(ユーチューバー)が見つかった。
「ホントに見つかったの?」
私の問いに高野さんは、さも当然と言った具合に頷いた。
「まあ、私ならもう少し早く突きとめてたけど」
「たまに思うんだけど、高野さんって怖いよね」
「怖い? 何が?」
「隠し事できない感じ? 敵に回したら怖そう」
冗談のつもりで言ったのだが、「そうね。少なくとも結衣の事なら破滅させることくらい訳ないわね」なんて言うもんだからガクブル。
高野さんが言うには、投稿されていた動画を詳しく見てみればところどころに場所を特定できる情報が映っているとの事……やっぱり高野さんって怖い!
「だから結衣。私を怒らせないでね」
「なに? 高野さん?」
高野さんは腕時計の文字盤を私に向けて、
「レッスンの時間まであと20分。スタジオまで車で15分。あと5分で支度できるのよね?」
鋭い眼光が私を射抜く。
「もちろんですとも!?」
私はダッシュで身支度を始めた。
…………
……
…
「それで、ここが……」
値踏みするように目の前の一軒家を見つめる。
ごく普通の家だ。
それ以上でもそれ以下でもない。
「ここが私たちの曲を作ってくれる人の家なのね?」
「正確には「予定」ですど」
住宅街に突如として現れた人気女優と人気アイドル。
騒ぎになる前にさっさと片を付けたい。
そもそも、何で私がMIKAと一緒に作曲の交渉に出向いているのだ?
普通、こういうのは交渉専門のスタッフとかがやるんじゃないの?
しかしそこで私は思い出す。
私たちがCDを出すレーベルは普通じゃない。
最下層、底辺の弱小レーベルだ。
その結果、まさかの歌手自らが交渉に赴くという事態が発生。
純粋な人員不足だ。
なんで人気アイドル二人が弱小レーベルからCDを出すのか疑問に思って尋ねてみたが、回答は得られなかった。
きっと深い理由があるのだろう。
それ即ち、面倒事である。
私にその問題が飛び火し、巻き添えを食わない事を祈るばかりである。
……って、良く考えれば充分に巻き込まれている。
時すでに遅しというヤツだ。
「高野さんたちに任せた方がいいんじゃない?」
「はぁ……、あのマネージャーさんは優秀だけど、あくまで裏方。ステージに立つのは私たち。私たちに曲を作ってもいいと思わせるには本人が訊ねる方がいい」
分かったような、分からなかったような……
そんな事より、ため息つかれた!?
私、先輩なんですけど!?
そんな事を思っている間に、MIKAはインターホンを押していた。
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