91 / 111
第三幕 新たな戦場――苦戦続きのバラエティー
ACT90
しおりを挟む
ワールド陸上の様な、日本を熱狂の渦に巻き込む一大イベントがない日常に戻ったとたんに『お笑い革命~至高の笑い発信基地局~』の視聴率がV字回復。
まあ、V字と言うほど視聴率は落ち込んではいなかったんだけどね。
しかし、そんな事はどうでもいい。
そんな事より……なんで私は真希とカラオケボックスに来ているのだろう?
いや私が真希の口車に乗せられたというだけの話なんだけど。
今、私と真希は祝勝会という名目でカラオケボックスに来ていた。
綾人と瑞樹。後、なぜか極秘来日をしてきたシェリルの3人を加えた5人での祝勝会はごく普通のカラオケボックスで開催された。
そう、普通と言うのが重要なのだ。
最早ルーティーンと化した週一回の『お笑い革命~至高の笑い発信基地局~』のスタジオ収録終わり。
真希が珍しく声を掛けてきて、
「結衣。祝勝会するわよ」
「は?」
私は嫌悪感を隠すことなく口元を歪めた。
私たちは決して仲良くなったわけではない。
一時的に休戦。そして共闘したに過ぎない。
「そんなに嫌がらなくてもいいじゃない。それに普通に祝勝会をしようってだけで何か仕掛けようって訳じゃないわよ。それに普通の女子高生は訳もなくカラオケに行くものなのよ」
「そ、そうなの……確かにそんな気がしてきたわ」
私は売れっ子女優だ。
普通の生活とは無縁な人種。故に私は普通に憧れを抱いている。
その憧れが原因で、変装して学校潜入なんていうとんでも計画を実行に移して、いろいろ大変な目に合ったんだけど、それでも私の普通への憧れは変わっていない。
そんな私は、普通の女子高生という言葉の響きに釣られてほいほいカラオケについてきてしまったのだ。
さすがに真希と二人きりと言うのは気まずいから、綾人と真希を呼び出したという訳だ。
それは真希の方も同じで、実の妹であるシェリルを呼んでいた。
「シェリル日本に来てたんだ」
「ん? 今朝こっちに着いた」
「今朝? 何かのプロモーション?」
「違うよ~。お姉ちゃんに呼ばれたから来た。だから時差ボケひどいのよ。めちゃくちゃ眠い」
真希の妹と言うだけでアメリカから呼び出しを食らう。
シェリルには同情するほかない。
ドンマイ、シェリル。
せめてアナタの分のお金は払ってあげる……あれ? 私、シェリルにお金を貸してるよね?
むしろここは奢ってもらってもいいんじゃない?
「でも私の出番はなかったわね」
少し残念そうにシェリルが言う。
「出番って?」
瑞樹はハリウッド女優シェリル・マクレーンを前にしても、かつての同級生、逢里詩乃と同様に尋ねた。
「お姉ちゃんに頼まれごとしててね。なんとかって言うアイドルを叩いて欲しいって」
なんとかって言うアイドルとはMIKAの事だろう。
真希が長年ひた隠しにしてきた罪を告白するがごとく神妙な顔を作って、
「妹に、MIKAは私に比べるといかに無能な存在なのか語ってもらおうって思ったのよ。
ハリウッド女優の発言力は時に真実さえも捻じ曲げてしまうのよ」
その言い分では真希がMIKAに劣る存在という事になるわよ!? まあ、あえてツッコんだりはしないけど。
真希はやはり策略家で、この策略が私に向かなかったことに心から安堵した。
「え、えっ? 逢里? でも……どう見ても日本人じゃないよな? なんか外国《アッチ》の映画で見たことがあるような?」
綾人は首を傾げ続ける。
瑞樹には話していたが、綾人にはシェリルの事は話していなかった。
終始混乱状態の綾人を1人置き去りにして、祝勝会と言う名の普通のカラオケを楽しんだ。
しかし後日、よくよく考えてみると普通じゃない気がして瑞樹に確認してみると、「日本の売れっ子女優2人に、世界的陸上選手とハリウッド女優が同席するカラオケは普通じゃないよ」と断言された。
やっぱり私は普通じゃないんだ。
普通って難しい。
そんな感傷に浸りながら、私は今日も自分の日常(普通)を謳歌する。
まあ、V字と言うほど視聴率は落ち込んではいなかったんだけどね。
しかし、そんな事はどうでもいい。
そんな事より……なんで私は真希とカラオケボックスに来ているのだろう?
いや私が真希の口車に乗せられたというだけの話なんだけど。
今、私と真希は祝勝会という名目でカラオケボックスに来ていた。
綾人と瑞樹。後、なぜか極秘来日をしてきたシェリルの3人を加えた5人での祝勝会はごく普通のカラオケボックスで開催された。
そう、普通と言うのが重要なのだ。
最早ルーティーンと化した週一回の『お笑い革命~至高の笑い発信基地局~』のスタジオ収録終わり。
真希が珍しく声を掛けてきて、
「結衣。祝勝会するわよ」
「は?」
私は嫌悪感を隠すことなく口元を歪めた。
私たちは決して仲良くなったわけではない。
一時的に休戦。そして共闘したに過ぎない。
「そんなに嫌がらなくてもいいじゃない。それに普通に祝勝会をしようってだけで何か仕掛けようって訳じゃないわよ。それに普通の女子高生は訳もなくカラオケに行くものなのよ」
「そ、そうなの……確かにそんな気がしてきたわ」
私は売れっ子女優だ。
普通の生活とは無縁な人種。故に私は普通に憧れを抱いている。
その憧れが原因で、変装して学校潜入なんていうとんでも計画を実行に移して、いろいろ大変な目に合ったんだけど、それでも私の普通への憧れは変わっていない。
そんな私は、普通の女子高生という言葉の響きに釣られてほいほいカラオケについてきてしまったのだ。
さすがに真希と二人きりと言うのは気まずいから、綾人と真希を呼び出したという訳だ。
それは真希の方も同じで、実の妹であるシェリルを呼んでいた。
「シェリル日本に来てたんだ」
「ん? 今朝こっちに着いた」
「今朝? 何かのプロモーション?」
「違うよ~。お姉ちゃんに呼ばれたから来た。だから時差ボケひどいのよ。めちゃくちゃ眠い」
真希の妹と言うだけでアメリカから呼び出しを食らう。
シェリルには同情するほかない。
ドンマイ、シェリル。
せめてアナタの分のお金は払ってあげる……あれ? 私、シェリルにお金を貸してるよね?
むしろここは奢ってもらってもいいんじゃない?
「でも私の出番はなかったわね」
少し残念そうにシェリルが言う。
「出番って?」
瑞樹はハリウッド女優シェリル・マクレーンを前にしても、かつての同級生、逢里詩乃と同様に尋ねた。
「お姉ちゃんに頼まれごとしててね。なんとかって言うアイドルを叩いて欲しいって」
なんとかって言うアイドルとはMIKAの事だろう。
真希が長年ひた隠しにしてきた罪を告白するがごとく神妙な顔を作って、
「妹に、MIKAは私に比べるといかに無能な存在なのか語ってもらおうって思ったのよ。
ハリウッド女優の発言力は時に真実さえも捻じ曲げてしまうのよ」
その言い分では真希がMIKAに劣る存在という事になるわよ!? まあ、あえてツッコんだりはしないけど。
真希はやはり策略家で、この策略が私に向かなかったことに心から安堵した。
「え、えっ? 逢里? でも……どう見ても日本人じゃないよな? なんか外国《アッチ》の映画で見たことがあるような?」
綾人は首を傾げ続ける。
瑞樹には話していたが、綾人にはシェリルの事は話していなかった。
終始混乱状態の綾人を1人置き去りにして、祝勝会と言う名の普通のカラオケを楽しんだ。
しかし後日、よくよく考えてみると普通じゃない気がして瑞樹に確認してみると、「日本の売れっ子女優2人に、世界的陸上選手とハリウッド女優が同席するカラオケは普通じゃないよ」と断言された。
やっぱり私は普通じゃないんだ。
普通って難しい。
そんな感傷に浸りながら、私は今日も自分の日常(普通)を謳歌する。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる