転校生は朝ドラ女優!?

小暮悠斗

文字の大きさ
上 下
59 / 111
幕間Ⅰ 姉妹の物語

ACT58

しおりを挟む
 よく双子には不思議なテレパシー的な何かがあって、お互いの考えが直感的に分かる。なんてことが言われたりするけど、私はそんな感覚になったことが無い。
 私には双子の妹がいるが、二卵性のため容姿が瓜二つということは無い。

 全く似ていないという訳ではないのだが、外見的なものから内面的なものまで全てにおいて妹が上である。
 これは比喩ではなく純然たる事実である。
 私の妹は本当に凄いのだ。

 絶対に口にはしないけど。調子に乗るから。
 そんな妹がすでに調子に乗っていた。
 突然、家に押しかけてきてしばらく泊めろと言い。更には、こっち(日本)の映画に出演すると言う。
 身勝手な妹だ。似なくてもいいところだけ私によく似ている。
 妹の頭を小突きながら、やはり姉妹なのだなと互いの血のつながりを感じた。


 ♢ ♢ ♢


 妹が私の家に滞在して一年余。
 私は彼女が何をしているのか知らない。でも、一つだけ言えることがある。
 妹が訪ねてきたために私の予定は滅茶苦茶だと言う事。
 なのに……なのに……。どこ行きやがったあのバカ。
 書き置き一枚残して朝っぱらから姿を消した。

『探さないでください』

 かまってちゃんかよッ!! 
 私は書き置きを丸めて壁に投げつけた。
「――ふざけんな!!」
 もし週刊誌の連中にでも撮られたらどうするんだ。
 ハリウッド女優が徘徊(迷子)とか、間違いなく記者たちにとって恰好のネタになる。どのように弁明すればいいのか。頭を抱える。

 朝はどうにも苦手だ。コーヒーでも飲んで落ち着こうと、エスプレッソマシンを稼働させる。
 このエスプレッソマシンかなりの高級品で、ほとんど使っていない。使い時が無いのだ。高級品ってあるだけで意味のあるものだから用途についてはさほど気にしたことが無いかもしれない。
 ちなみに私はコーヒーが苦手だ。それなのにエスプレッソマシンがあるのには理由がある。
 ただの見栄。それ以上でもそれ以下でもない。
 普段は仕舞い込んでいるマシンが現在稼働しているのも見栄が関係していた。

 実の妹に対しても見栄を張ってしまう。そんな姉心を理解していただきたい。
 私と同じくコーヒーの苦手な妹の前でエスプレッソを飲む。
 正直、エスプレッソもドリップもよく違いは判らない。だってどっちにしたって苦いんだもの。
 でも苦い顔一つせずに、
「この美味しさが解らないなんて可哀想ね。人生損してるわよ」
 と言ってやるの。実際に昨日言ってやった。
 昨日の私からすれば私自身も人生を損している人間のひとりのだが、そんなブーメラン、私は一切気にしない。
 16歳にもなって妹に張り合う姉。何か情けない。
 ちょっとした自己嫌悪に陥っていると、脱ぎ散らかした妹の衣服で出来た小さな山の下敷きになっているを見つけた。

 これは……。
 手にしたを、私は何度も何度も読み返した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。 遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。 本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。 優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...