転校生は朝ドラ女優!?

小暮悠斗

文字の大きさ
上 下
50 / 111
第二幕 映画撮影と超新星

ACT49

しおりを挟む
 堀川汐莉という無名の新人女優として最後までやり通すつもりでいたが、諸事情によりそうもいかなくなったので仕方なく素性を明かすことにした。
 その代償として毎日テレビや取材にと大忙し。

 私、ハリウッド女優だよ!? 扱いひどくない!?
 などと騒いでみたところで状況は変わらない。
 不器用な姉の尻拭いと想えばこの苦痛にも耐えられる。
 それに今日は一日、なぜかポッカリとスケジュールに穴が開いていた。
 その理由はマネージャーの職務怠慢にあるのだけれど……。まあ、いいか。一日のんびり過ごそう。と思っていたのだが――

「信じらんない!」
 ヒステリックな声を上げながら姉が帰ってきた。
 あれ? 今日はプレミアム試写会で夜まで帰ってこないはずではなかっただろうか。
 そんな疑問を口にしたところで今の姉は感情のままに捲し立てるだけだろう。なので熱が引くまで待つことにした。

 リビングを所狭しと練り歩き、落ち着いた頃にどうしたの? と優しく声を掛ける。
 聞いてくれと言わんばかりに身を乗り出し、姉は今日あった出来事を45分にも亘って語った。

 要約すると、「王子監督にNGシーン(恥ずかしい)を編集された挙句、上映されることになったので逃げかえってきた」と言う事らしかった。
 結衣はこの事を知らなかった様子だったと聞き、姉のマネージャーはタレント思いなのだなと感心した。
 私のマネージャーにも見習ってほしいものだ。
 もっと私を大切にしろ! おっといけない。話が脱線するところだった。

 あー!! と癇癪かんしゃくを起こした子供のように頭を抱えて地団太を踏む姉。
 血管の浮き出た手で手当たり次第にものを掴み投げていた。

 ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)、コーチ(COACH)、グッチ(GUCCI)、エルメス(HERMES)シャネル(CHANEL)・クロエ(Chloé)にフルラ(FURLA)――とブランド物のバックやら財布が壁に激突しては虚しく落ちる。
 たまに流れ弾? 流れブランド品が私の顔面を直撃した。
 ブランド物の山が幾つかできた頃、ぜぇぜぇと肩で息をしながら「片付けるの手伝って」と呟いた。
 そんなことがあった翌日――当日の夜のニュースにはプレミアム試写会の様子が報道された。民放はこぞってその様子を流した。
 それと同時にネットではトピックとして姉(&結衣)の名が挙がった。
 自室に籠った姉のああぁぁぁあああ!!――という病的なまでの奇声がドア越しに聞こえた。

 エゴサーチでもしたのだろう。一応、するなとは言っておいたのだけれど、意味はなかったようだ。
 芸能界に身を置くものとしては世間の声(反応)は気になるところだろう。
 かく言う私もエゴサーチは欠かさない。なに書かれてても気にしないけどね。
 どれどれと「堀川汐莉 シェリルマクレーン 新作映画」で検索を掛ける。
 百万件以上のヒットの中から適当に選んだ記事は私の演技力を絶賛していた。当然だとそのままスクロールしていくと……――

『でも結局試写会のせいで完全に食われたよねww』

 ……今度は私が奇声を発する番だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。 遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。 本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。 優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。

処理中です...