転校生は朝ドラ女優!?

小暮悠斗

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第二幕 映画撮影と超新星

ACT26

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 世界で最も注目されている女優が何でこんな――島国なんかにいるんだ!?
 母国をこんな呼ばわりしてしまった。でもそれは本心である。
 シェリル・マクレーンは、日本という枠組みでは決して収まらない規格外のスターなのである。

 そもそも日本人じゃないし。
 ……あれ? さっき日本語喋ってたよね? もしかしなくても日本人?

日本人ジャパニーズじゃないですよ」

 疑問が顔面から駄々漏れだったらしい。もしかしたら、至る所から疑問符が噴き出していたかもしれない。

 咄嗟に口元を隠す。喋っていたわけではないので無意味だが。
 そんな私を見て口元に手をやり、クスッと微笑むシェリル。
 ああぁぁ、恥ずかしいぃぃ。でも可愛いぃぃ!!

 チラッ

 顔を覆う手のの指先を不自然に開く。
 マジでカワユス~。でもって綺麗。反則でしょコレ!!
 自然と、彼女の瞳の持つ引力に引き寄せられていく。
 淡いブラウンの瞳がしっかりと私の視線を受け止めている。

 ……シェリルの瞳の色ってブルーじゃなかったっけ?

「今日はカラコンなの?――ですか?」

 慌てて敬語を使う。

「いいえ。いつものブルー色がカラコン。別にフレンドリーな感じで話してくれて構わないのよ。むしろそうしてくれた方が助かるわ」

「助かる?」

「ああ、その件で呼んだんだった」

 たった今、思い出したような、それでいて不自然な芝居がかった口調で、王子が説明する。

「今回、撮影前に君と彼女とを引き合わせたのには理由がある。まあ、彼女が君を、と推薦してきたんだが」とシェリルへと視線を向ける。

 シェリルは柔らかな笑みを返す。

「それで、頼みたいことがあるんだ。それは……君の口から言った方がいいだろう?」

 王子とシェリルはアイコンタクトを取り頷き合う。

「OK。私が話す」

 シェリルの顔がぐっと距離を縮めて鼻先が触れ合う。
 あっ、いい匂い。

「ねぇ、結衣。貴女を一流の女優と見込んでお願いがあるの」

「な、なに?」

 顔近い顔近い!! キャー!!!

「私をサポートしてほしいの」

「サポート?」

「私ね。今回の映画の話を受ける代わりに条件を出したの。シェリル・マクレーンの名前は一切出さないっていう条件。つまり、私は私でない全くの別人を演じるの。ちなみに無名の新人女優の緋山めぐみ、で押し通すから」

 強引な人だ。そんなの無理に決まってる。彼女を知らない映画関係者はいない。
 俳優なら尚更だ。彼女の容姿は目立つ。日本人でない事も彼女の存在をより際立たせる。


 でもどこかで聞いたことあるような話だな……私か!?


「おっ、ようやく気が付いたか。二重生活のプロである君に協力を願いたいそうだ」

 他人事の王子は楽しそうに笑う。
 ああ、ごめんね瑞樹。たった今、あなたの気持ちがわかった。
 呆れてものも言えないって今の状態を指すんだわ。

 自らが蒔まいた種を自ら刈り取る。
 今までかけてきた迷惑を刈り取る時が来たんだわ。

 困難が待ち受けている事は容易に想像できた。

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