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第一幕 転校生は朝ドラ女優!?
ACT23
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ワイドショーへの出演はすぐに決まった。
どの局も私のコメントを欲しがった。
私は正直に答えた。自分の気持ちを素直に語った。その事が功を奏し世間からのバッシングは次第に消えていった。
その代わりに新たに浮上したのは真希の本性だった。
私の学校生活をマスコミがどこから嗅ぎつけたのか、世間の感心はそちらに向き始めていた。
『綾瀬真希の陰謀』なんてメディアが取り上げたものだから、さあ大変。真希はあっという間にに渦中の人物となった。
真希は黙秘を続けた。
***
どうしよう。電話帳に記録してある最初の番号を見つめる。
掛けたいけど、否定されるのが怖い。
裏切ってしまったから。
嘘をついた。傷つけた。
画面をタップする指が震える。
……あ、押しちゃった。
繋がらないで――、
「もしもし」
速攻で繋がっちゃった!?
……無視はよくないよね。
「も、もしもし」
「なに?」
必要最低限の返答。
やっぱり怒ってる。
「その、ごめんなさい。私、騙すつもりはなくて、でも結局、同じことだよね……怒って当然だよね」
尻すぼみになる声に気分も落ちる。
「別に怒ってねぇよ。テレビ見たから」
ちゃんと私の想い、伝わってたんだ。
「でも、直接聞きたい。だから、学校で待ってる」
一方的に通話は切られた。
***
約ひと月ぶりの学校。
祝日の学校は人がまばらでどこか寂しい雰囲気が漂っている。
頬を撫でる風に乗って部活をしている生徒の声が届く。
人の気配に振り返る。
「……赤崎くん」
「……よお」
ああ、生のカグラ様……じゃなかった、赤崎くんの声。
「ごめん……」
はあ、とため息を吐き、「そんな言葉が聞きたいんじゃねぇよ」と笑ってくれる。
だから答えた。「ありがとう」と。
そのあと、ひと月の間にあった出来事を赤崎くんは順を追って話してくれた。
スマートフォンが震える。
液晶画面には松崎さんの文字。
通話ボタンを押す。
「はいもしもし」
電話の向こうで松崎さんはどこか興奮している様で、息が荒かった。
「どうしたの?」
「決まったのよ!」
「なにが?」
「映画! 王子監督の映画のキャスティングに正式に決まったの!」
「ウソ、ほんとに!? やったー!!」
何事かときょとんとしている赤崎くんに説明する。
「おめでとう。良かったな」
「うん」
ああ、今日はなんて最高の一日なのだろう。
「おめでたついでに付き合わない?」
「はい……って、えっ!? いいんだけど、なんか軽っ!?」
ムードも何もない告白に戸惑っていると、通話中の電話口から漏れる声が私を呼ぶ。
「もしもし。もしもーし」
そう言えば、まだ通話中だった。
「ごめん、ごめん。で、なに?」
「大したことじゃないんだけど、アナタが好きなアニメ、ユーリ様? カグラ様? とかいうの、また始まるってよ」
「え、それって『絶海のプリンス』の第三期って事!?」
「うん。よく知らないけど多分そう」
おっしゃーッ。
歓喜に打ち震えた。またユーリ様とカグラ様の濃密な……ムフフ♡
「おーい。どうした?」
あっ、赤崎くんの事完全に忘れてた。
「聞いてユーリ様とカグラ様が戻ってくるの!」
「よくわかんない」
「大ニュースよ。今年一番の吉報よ」
「今年一番、俺の告白よりも重要?」
「もちろん!!」
釈然としない顔してるけどまあいいか。
何はともあれ王子監督の撮る映画が、復帰第一号の作品。加えて心のオアシス『絶海のプリンス』も始まる。
でも何よりも大きいのは新しい友達と……気恥ずかしいけど、彼氏の存在。
私、もっと躍進できる気がする。
普通とはほど遠いけれど、今の自分に満足してる。
どの局も私のコメントを欲しがった。
私は正直に答えた。自分の気持ちを素直に語った。その事が功を奏し世間からのバッシングは次第に消えていった。
その代わりに新たに浮上したのは真希の本性だった。
私の学校生活をマスコミがどこから嗅ぎつけたのか、世間の感心はそちらに向き始めていた。
『綾瀬真希の陰謀』なんてメディアが取り上げたものだから、さあ大変。真希はあっという間にに渦中の人物となった。
真希は黙秘を続けた。
***
どうしよう。電話帳に記録してある最初の番号を見つめる。
掛けたいけど、否定されるのが怖い。
裏切ってしまったから。
嘘をついた。傷つけた。
画面をタップする指が震える。
……あ、押しちゃった。
繋がらないで――、
「もしもし」
速攻で繋がっちゃった!?
……無視はよくないよね。
「も、もしもし」
「なに?」
必要最低限の返答。
やっぱり怒ってる。
「その、ごめんなさい。私、騙すつもりはなくて、でも結局、同じことだよね……怒って当然だよね」
尻すぼみになる声に気分も落ちる。
「別に怒ってねぇよ。テレビ見たから」
ちゃんと私の想い、伝わってたんだ。
「でも、直接聞きたい。だから、学校で待ってる」
一方的に通話は切られた。
***
約ひと月ぶりの学校。
祝日の学校は人がまばらでどこか寂しい雰囲気が漂っている。
頬を撫でる風に乗って部活をしている生徒の声が届く。
人の気配に振り返る。
「……赤崎くん」
「……よお」
ああ、生のカグラ様……じゃなかった、赤崎くんの声。
「ごめん……」
はあ、とため息を吐き、「そんな言葉が聞きたいんじゃねぇよ」と笑ってくれる。
だから答えた。「ありがとう」と。
そのあと、ひと月の間にあった出来事を赤崎くんは順を追って話してくれた。
スマートフォンが震える。
液晶画面には松崎さんの文字。
通話ボタンを押す。
「はいもしもし」
電話の向こうで松崎さんはどこか興奮している様で、息が荒かった。
「どうしたの?」
「決まったのよ!」
「なにが?」
「映画! 王子監督の映画のキャスティングに正式に決まったの!」
「ウソ、ほんとに!? やったー!!」
何事かときょとんとしている赤崎くんに説明する。
「おめでとう。良かったな」
「うん」
ああ、今日はなんて最高の一日なのだろう。
「おめでたついでに付き合わない?」
「はい……って、えっ!? いいんだけど、なんか軽っ!?」
ムードも何もない告白に戸惑っていると、通話中の電話口から漏れる声が私を呼ぶ。
「もしもし。もしもーし」
そう言えば、まだ通話中だった。
「ごめん、ごめん。で、なに?」
「大したことじゃないんだけど、アナタが好きなアニメ、ユーリ様? カグラ様? とかいうの、また始まるってよ」
「え、それって『絶海のプリンス』の第三期って事!?」
「うん。よく知らないけど多分そう」
おっしゃーッ。
歓喜に打ち震えた。またユーリ様とカグラ様の濃密な……ムフフ♡
「おーい。どうした?」
あっ、赤崎くんの事完全に忘れてた。
「聞いてユーリ様とカグラ様が戻ってくるの!」
「よくわかんない」
「大ニュースよ。今年一番の吉報よ」
「今年一番、俺の告白よりも重要?」
「もちろん!!」
釈然としない顔してるけどまあいいか。
何はともあれ王子監督の撮る映画が、復帰第一号の作品。加えて心のオアシス『絶海のプリンス』も始まる。
でも何よりも大きいのは新しい友達と……気恥ずかしいけど、彼氏の存在。
私、もっと躍進できる気がする。
普通とはほど遠いけれど、今の自分に満足してる。
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