転校生は朝ドラ女優!?

小暮悠斗

文字の大きさ
上 下
18 / 111
第一幕 転校生は朝ドラ女優!?

ACT17

しおりを挟む
 相変わらず成績は伸び悩んでいるが、学校生活の方は順調そのものだ。悩みがあるとすれば……隣の席の男子である。

 瑞樹たちは「恋をしている」なんて言って笑っていたけど、そんなことはない。あってはならない。
 私は女優。スキャンダルなんてもっての他だ。

 ここ最近週刊誌の監視の目が厳しくなっている。私と同期の子(年齢は向こうが上)が相手の自宅から出てくるところを撮られた。囲み会見してたけど、なんか口ごもってて印象はよくなかった。

 私も何度か撮られたことあるけど最近は袋叩きに合うケースが多いから気をつけなきゃ。私にやましいところなんかないけど。

 今まで何度か不本意ながら週刊誌の見出しを飾ったことはある。
 それでも一切気に留めたことはなかった。今までとは何かが違う。
 まさか、ほんとに恋しちゃってるの私?

「おい」

 肩を揺さぶられる。

「ん、なに?」

「いいの、あれ」

 彼が黒板を指差す。




 文化祭実行委員



 新田結衣



 赤崎綾人





 はぁ? 実行委員!?



「いや、なんで……」

「千鶴が推薦した」

「なんで私を」

 言うまでもない。嫌がらせだろう。

「じゃあ、赤崎君はなんで」

 選ばれたの? と尋ねるよりも先に答えが返ってきた。

「新田となら委員やってもいいかなって」

 顔が暑くなる。
 平静を装うので精一杯だった。




 ***




「いい加減認めたら?」

 食堂に会したいつものメンバー。最近の話題は私の事ばかりだ。

「だから、好きとかそんなんじゃないから!」

「またまたぁ~」

 ニヤニヤして、他人事だと思ってとことんからかいに来てるな。

「そんな事より」

 少し強引ではあるが話題を変える。

「文化祭ってどんな事するの?」

「そうだなぁ。クラスの出し物は、喫茶店とかお化け屋敷は毎年あるみたいだよ。あと、演劇とか」

「演劇もやるんだ」

「うん、毎年どこかがやってる。多分今年は結衣のクラスがやることになると思うよ」

「え、なんで?」

「だって、千鶴がいるじゃん。あの子、演劇部でしょ。ほぼ間違いなく決まり」

「大変だよね。演劇とかどんだけ時間削られるか……遊べないじゃんね」

 演劇って人気ないんだな。私はやってみたいけど。
 そんなことを考えていると、「演技得意でしょ?」詩乃が尋ねる。

「そ、そんなことないよ?」

 かろうじて短い答えを返す。

 私の素性を知る瑞樹も詩乃の発言に驚いていた。もしかしてバレた!? でも今までそんな素振りはなかった。なのにどうして急に。

「何言ってんのシノッチ。そんなのわかんないじゃん」

「そうだね。見てみないとわからないよね」

「そうだよぉ。やっぱシノッチは変わってるよねぇ」

 なんとかごまかせた? 鈴音が話に入ってきたおかげでうやむやになった、かな?
 結局、その後の会話には身が入らなかった。それは瑞樹も同様で、私たち二人は逢里詩乃という人物が判らなくなった。


 その日の午後。

 文化祭のクラスの出し物は満場一致という不自然さを残して、演劇に決まった。

 演目はシェイクスピアの『十二夜』。なかなかのチョイスだと思う。てっきり『ロミオとジュリエット』をやるものだと(定番だから)……またしても満場一致なのが不自然だが。

 配役まで既に決まっていた。根回し完璧すぎだろ。
 決まった配役を男子の実行委員である綾人が板書する。




 ヴァイオラ役 間宮千鶴

 オーシーノ役 赤崎綾人

 オリヴィア役 新田結衣

 


 折角だから演じてみたいとは思ってたけど、主役級の役じゃない! 手は抜きたくないけど本気で演じたら浮いちゃうし……どうしよう。

 プロとして妥協したくないが全力で演じる訳にもいかないというジレンマが襲う。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。 遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。 本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。 優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

処理中です...