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第一幕 転校生は朝ドラ女優!?
ACT11
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あー、どうしよう。何一つ予定通りに進まない。
瑞樹に散々目立たない様にと注意を受けたというのに、これから教室に向かったのでは確実に悪目立ちしてしまう。
以前、瑞樹とした会話を思い出していた。
「結衣。素性がバレたくなければ目立たないこと。わかった?」
「目立たないって無理じゃない? 転入生ってただでさえ目立つでしょ」
笑って答えると、
「そういう事じゃないの。必要以上に目立たない様にって言ってるの。例えば、何とか様のスニーカーとか履いて行ったらダメよ。目立つから」
「カグラ様ね。いい加減、覚えてよ」
オタクは良くも悪くも目立つから気を付けるようにと釘を刺された。
私達より二つ上の学年では―つまり三年生ね。秋葉原に行った帰り道、同じクラスのちょっとやんちゃなグループに見つかってしまったがために現在進行形でクラスでハブられている先輩もいるのだとか。
人よりも優位に立ちたいというのは人間が持って生まれた願望なのかもしれない。芸能界でも似たような事とは往々としてある。
キャスティングに対する不満だったり、世間の知名度、好感度なんかも結構気にしてる。
興味がないというヤツに限って執着する。
それでも折角自由―普通を手に入れたのだから満喫しなくちゃね!
だから私はオタクであることを隠さない。自己主張もしないけど。
友達とオタク談義に花を咲かせる。夢の一つだわ。
瑞樹とはそこのところに関してだけは相容れないのよね。
勧めるアニメは全て不発。心に刺さらないし。
意見を交換してみても見当違いな事ばかり言う。
だから見つけるんだ。同志を。と、意気込んでいた私は、今クラス全員の視線を浴びている。
それもいくつか冷やかな眼差しが混じっている。
(どうしよ~。空気悪い。瑞樹は……別のクラスだった)
「それじゃ、自己紹介」
そう言ってチョークを手渡してくる先生。
そのチョークを受け取ると突き刺さる視線に背を向け、黒板に自分の名前を書く。
チョークって思ったよりも書き辛い。
引っかかるし、擦れるし、折れるし。
何度かの格闘を経て(先生に「もうそれでいい」と止められた)書き終えた私の名前はとても不恰好でクスクスと笑う声が聞こえる。
一気に顔が熱くなる。
「に、新田結衣です。宜しくお願いします」
本来なら続いて「女優の新田結衣と同姓同名ですが一切関係ありません」とか、「女優、新田結衣との格差にうんざりしています」とか笑い交じりにでも言ってみようか、などと考えてもいたのだがそんな空気ではない。
「はい、ありがとう。新田さん」
事務的な言葉とともにクラスを見回して、「取り敢えず今日は一番後ろの空いている席にでも座って」それ以上のことはしてやるつもりはないと言わんばかりに教科書へと目を落とす。
言われた通りに一番後ろの席に向かおうとすると、
「ねぇねぇ、新田さんは何か好きなものとかあるの?」
掛けられた声の主を探すと、なかなかのイケメンが手を振りながら私を見ていた。
すでにキャパオーバーだった私はつい口をついて出てしまった。
「ユーリ様……」と。
瑞樹に散々目立たない様にと注意を受けたというのに、これから教室に向かったのでは確実に悪目立ちしてしまう。
以前、瑞樹とした会話を思い出していた。
「結衣。素性がバレたくなければ目立たないこと。わかった?」
「目立たないって無理じゃない? 転入生ってただでさえ目立つでしょ」
笑って答えると、
「そういう事じゃないの。必要以上に目立たない様にって言ってるの。例えば、何とか様のスニーカーとか履いて行ったらダメよ。目立つから」
「カグラ様ね。いい加減、覚えてよ」
オタクは良くも悪くも目立つから気を付けるようにと釘を刺された。
私達より二つ上の学年では―つまり三年生ね。秋葉原に行った帰り道、同じクラスのちょっとやんちゃなグループに見つかってしまったがために現在進行形でクラスでハブられている先輩もいるのだとか。
人よりも優位に立ちたいというのは人間が持って生まれた願望なのかもしれない。芸能界でも似たような事とは往々としてある。
キャスティングに対する不満だったり、世間の知名度、好感度なんかも結構気にしてる。
興味がないというヤツに限って執着する。
それでも折角自由―普通を手に入れたのだから満喫しなくちゃね!
だから私はオタクであることを隠さない。自己主張もしないけど。
友達とオタク談義に花を咲かせる。夢の一つだわ。
瑞樹とはそこのところに関してだけは相容れないのよね。
勧めるアニメは全て不発。心に刺さらないし。
意見を交換してみても見当違いな事ばかり言う。
だから見つけるんだ。同志を。と、意気込んでいた私は、今クラス全員の視線を浴びている。
それもいくつか冷やかな眼差しが混じっている。
(どうしよ~。空気悪い。瑞樹は……別のクラスだった)
「それじゃ、自己紹介」
そう言ってチョークを手渡してくる先生。
そのチョークを受け取ると突き刺さる視線に背を向け、黒板に自分の名前を書く。
チョークって思ったよりも書き辛い。
引っかかるし、擦れるし、折れるし。
何度かの格闘を経て(先生に「もうそれでいい」と止められた)書き終えた私の名前はとても不恰好でクスクスと笑う声が聞こえる。
一気に顔が熱くなる。
「に、新田結衣です。宜しくお願いします」
本来なら続いて「女優の新田結衣と同姓同名ですが一切関係ありません」とか、「女優、新田結衣との格差にうんざりしています」とか笑い交じりにでも言ってみようか、などと考えてもいたのだがそんな空気ではない。
「はい、ありがとう。新田さん」
事務的な言葉とともにクラスを見回して、「取り敢えず今日は一番後ろの空いている席にでも座って」それ以上のことはしてやるつもりはないと言わんばかりに教科書へと目を落とす。
言われた通りに一番後ろの席に向かおうとすると、
「ねぇねぇ、新田さんは何か好きなものとかあるの?」
掛けられた声の主を探すと、なかなかのイケメンが手を振りながら私を見ていた。
すでにキャパオーバーだった私はつい口をついて出てしまった。
「ユーリ様……」と。
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