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恐怖の学園編

暴かれた秘密①

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 無事に部誌を刊行。
 人間研究部の部員たちは達成感に満ちていた。

 部誌をみんなで配ることにしたのだが、これが思いの外大反響。
 学園を代表する美少女たちから手渡しで部誌を受け取れる。
 お近づきになれると、男子生徒を中心に部誌に群がった。

 冬夜も配布を手伝っているのだが、全くと言っていい程捌けない。
 学園一の美少女である真白の前には長蛇の列。
 希望の前にも長蛇の列。
 この二人が怪奇学園一年生のトップ2なのだろう。
 一年生男子のほとんどは二人の列のどちらかに並んでいた。
 他の上級生の姿もちらほら伺える。

 だが、登丸先輩も二人に負けていない。
 普段は黒ローブで女っ気がないが、実は美人だ。
 気づいている人はいないだろうと思っていたのだが……
 一年生は別として、上級生は登丸先輩の美しさに気づいている者も多いようだ。
 できた列の大半は二、三年生であった。

 大反響の人間研究部部誌の配布。
 その成果を噛み締めながら、人間研究部員たちは笑い合った。


 その様子を眺める一団。

「……人間研究部」
「こちらが奴らの作った部誌です」
「見る必要はない。人間との共存を謳う奴らの作ったものなどッ!!」

 手にした部誌が焔に包まれる。
 瞬く間に灰へと変わる。

 風にさらわれた灰が空高く舞い上がった。


 …………
 ……
 …


 部室での祝勝会。
 乾杯の音頭に合わせてグラスをぶつける。
 もちろん中身はジュース。

 参加しているのは冬夜、真白、希望、登丸先輩の四人。
 顧問の児島先生も誘ったのだが、俺はいい、と一言。
 まあ、何も手伝っていなかったから呼ばなくてもよかったのだが……一応顧問だから声をかけないわけにもいかない……

 今日は無礼講! と希望が肉感的な身体を押し付けて来る。
 、ではなく、、の間違いじゃないか?

 時間が流れるように過ぎ去り、空には月が浮かび、月光が窓から射し込んでいた。
 開けた窓からは冷たい夜風が入ってくる。

「黒野先輩も参加できたらよかったのにね」
「あの人、基本学園にいないから」

 だったら普段はどこにいるんだ? という疑問は飲み込んだ。
 学園で黒野先輩の姿を見たことはない。そもそも黒野先輩が実在しているのかすら半信半疑。
 唯一その存在を確認できたのは、部誌刊行時の時だけで、それ以降は何の音沙汰もない。

 ――ッ!?

 下がって! と登丸先輩の焦りを含んだ声が飛ぶ。

 静かに扉が開く。

「そんなに警戒するな。登丸紗月」

 学園指定の制服とは異なるデザインの漆黒の制服。
 漆黒の制服姿の女は室内を見回し「やはり黒野忍はいないか……」と呟く。
 鋭い眼光とともに、

「随分と楽しそうじゃないか。しかし、誰の許可を得て部誌なんてものを配布している?」
「ちょっと待ってよ!? なんで部誌を配布するのに許可かいるわけ?」

 希望は半ギレ状態で突っ掛かる。
 何故? 眉を歪め、見下すように「我々がこの学園の正義にして秩序だからだ」
 絶対的強者が見せる冷たい瞳。
 しかし、覚醒した真白とは違う。どこまでも冷たい瞳。

 今まで出会ったどの妖怪とも違う。
 何かが決定的に違う。
 ハッキリと言うことはできない――あまりにも感覚的過ぎる――本能の部分が告げる。コイツはヤバイと。

 希望の手を取り制止する。
 まだ何か言い足りなさそうな希望も何かを感じ取っているらしい。
 自分でも気づかないうちに変身が解けている。
 ゆらゆら揺れている尻尾は忙しなく動きつづける。危険探知機のようだ。

「だけど部誌に問題があるとは思えない」

 部長が喋った!!? いや、まあ喋るけれども、いつも以上にハッキリと物を言っている感じだ。
 声も小さくない。

 だが、

「大あり。人間との共存を謳う貴様らは排除せねばならない! 今までは誰にも見向きされなかったから放置していたが、注目を集め始めた今では話は別」

 身勝手な理屈。

「そんなの横暴です!」

 真白が抗議の声をあげる。

「黙れ」

 明確な殺意――次の瞬間、誰もがその場から動けなくなった。

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