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第一章 ジンディオールの復讐編
第40話 魔湖(バネーロ編・戦いが終わって)
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ジンディオールが防壁外側の魔物たちを一掃したのと同時に、防壁の上や街中での戦闘も終わりを告げた。
バネーロ駐留の兵士たちや冒険者たちが奮闘したおかげで、魔湖からの襲撃を凌げたのであった。
ジュリアは、レベルが38に上がっていることからも、防壁の上での戦いに大きく貢献したことは明らかだ。
「ジンさん!」
ジュリアは、戦闘を終えた私に駆け寄ってきた。
「ジュリア!無事だったか?」
「ええ。魔防壁のおかげで、大した怪我もありません。それより、ジンさんのあの戦いはすごかったです!一人であんなにたくさんの魔物を倒すなんて、信じられません!」
「ああ。あれは…確かに私であることに間違いはない。間違いはないんだが、本当の私ではないんだよな…。」
「え?ジンさん?」
ジュリアは、私の曖昧な返答に首を傾けた。
私はジュリアにだけは本当のことを話そうと思った。彼女なら信じてくれるだろう。
私は先ほどの戦闘で起こったことを、簡潔にジュリアに説明した。
「なるほど…。前の身体の持ち主が、スキルになって代わりに戦ってくれた。そういうことで合っていますか?」
「ああ。その通りだ。突拍子もない話だがな。ジュリアは信じてくれるか?」
「それは勿論です!ジンさんの傍にいると、驚くようなことばかり起きますからね!普通ではないことに対してだんだん慣れてきてしまいましたよ!」
「あはは。何だかすまんな。」
ジュリアは、私の話を素直に受け入れた。彼女の信頼に感謝した。
「おーい!ジン!ジュリア!」
手を振りながら駆けつけてきたのは、同じフェルナンドから来た冒険者のビルトとサムウェルだった。
彼らの鎧やローブは所々損傷しており、激しい戦いが行われていたことを感じさせた。
「お前たち無事だったようだな?」
「ああ。見ての通りだ。ビルトたちも無事そうでなによりだ。」
「おい。お前たちも『死体漁り』に行くだろ?あまり時間が経つと兵士たちに根こそぎ取られるぞ!」
「そうなのか。それならお前たちに着いていこう。」
私たちは、ビルトとサムウェルについて『死体漁り』に向かうことになった。
これは、魔湖で倒した魔物から、素材や魔石を回収して自分の財産にする行為だった。
普通なら倒した者が素材を手に入れる権利があるが、今回のような大規模な戦闘の場合は、倒した者を特定することは不可能だった。
したがって、誰が回収しても罪に問われることはないのだそうだ。
しかし、ある程度時間が経つと、兵士たちが魔物の処理に動き始めるため、それまでに回収する必要があった。
オークキングの素材に関しては、ジンディオールが倒した際にそのままの状態で回収していたので、高価な素材は入手済みだった。
私たちは、ビルトたちと防壁の外で横たわる魔物の亡骸から時間の許す限り魔石や素材を回収していった。
◇ 冒険者ギルド バネーロ支部 ◇
「フェルナンドの冒険者諸君、本当にご苦労じゃった。」
「今回の君たちの働きは、報告を受けている。どうもありがとう。報酬はギルド受付で貰って行ってくれ。」
死体漁りの後、報告のためにギルドを訪れた私たちに、ギルマスのアロウさんから感謝の言葉を頂いた。
アロウさんは、私たちの戦闘の様子も目にしていたようだった。
「ギルマス。ダンジョンに関してはどうなっているんだ?」
私は、ダンジョンから更に魔物が溢れ出さないか気になって、質問を投げかけた。
「もっともな質問じゃな。ダンジョンの方も大丈夫じゃ!既に首都アーウェイから凄腕の冒険者が魔湖を防ぐために潜っておっての。先程、無事依頼を成功させたと連絡が届いたよ。」
「凄腕の冒険者とは?」
「Sランクのメンバーだけで構成された『銀翼の刃』。そして、大多数がAランクで構成される『焔』と『ミルキーウェイ』の三パーティじゃ。」
「Sランク…。」
「その通りじゃ。じゃが、ジンや。防壁の外では、お主も相当に暴れとったのぅ。」
「あ…。やはり気づかれていたか。」
「それはそうじゃろう。あれだけの数を一人で倒すんじゃからな。」
「すまないがこのことは…。」
「わかっているよ。欲のない奴じゃな。英雄扱いされてもおかしくない偉業だと思うんじゃがの。」
「そういうのは御免だ!目立ちたくないんだ。」
「わかった。こちらからは騒ぎたてるような対応は控えることにしよう。」
「感謝する。それで、ダンジョンの立ち入りは可能か?」
「いや、魔湖が静まったばかりじゃ。一ヶ月程度は立ち入りが禁止されるじゃろう。」
「そうか、残念だ。」
「お主たち四名は、これからどうするのじゃ?フェルナンドへ帰るのか?」
「俺たち二人はフェルナンドへ帰るぜ!」
ビルトとサムウェルは、フェルナンドへ帰るそうだ。俺たちは…。
「ジュリア。俺たちは、これから更に北へ向かおうと思う。大丈夫かい?」
「はい!ご一緒します!」
「なんだ。お前たちは帰らないのか。寂しくなるな。ギルマスも寂しがると思うぞ!」
魔法士のサムウェルが寂しそうにそう言った。
「すまないな。やるべきことがあるからな。ランピヨさんに世話になったと伝えてくれ。」
「はいよ。お安い御用だ。」
私たちは、ビルトとサムウェルと握手をしてここで別れた。
私たちは、フェルナンドへは帰らずに更に北の地を目指すことにした。
新たな冒険に足を踏み出そうとしていたのだった…。
バネーロ駐留の兵士たちや冒険者たちが奮闘したおかげで、魔湖からの襲撃を凌げたのであった。
ジュリアは、レベルが38に上がっていることからも、防壁の上での戦いに大きく貢献したことは明らかだ。
「ジンさん!」
ジュリアは、戦闘を終えた私に駆け寄ってきた。
「ジュリア!無事だったか?」
「ええ。魔防壁のおかげで、大した怪我もありません。それより、ジンさんのあの戦いはすごかったです!一人であんなにたくさんの魔物を倒すなんて、信じられません!」
「ああ。あれは…確かに私であることに間違いはない。間違いはないんだが、本当の私ではないんだよな…。」
「え?ジンさん?」
ジュリアは、私の曖昧な返答に首を傾けた。
私はジュリアにだけは本当のことを話そうと思った。彼女なら信じてくれるだろう。
私は先ほどの戦闘で起こったことを、簡潔にジュリアに説明した。
「なるほど…。前の身体の持ち主が、スキルになって代わりに戦ってくれた。そういうことで合っていますか?」
「ああ。その通りだ。突拍子もない話だがな。ジュリアは信じてくれるか?」
「それは勿論です!ジンさんの傍にいると、驚くようなことばかり起きますからね!普通ではないことに対してだんだん慣れてきてしまいましたよ!」
「あはは。何だかすまんな。」
ジュリアは、私の話を素直に受け入れた。彼女の信頼に感謝した。
「おーい!ジン!ジュリア!」
手を振りながら駆けつけてきたのは、同じフェルナンドから来た冒険者のビルトとサムウェルだった。
彼らの鎧やローブは所々損傷しており、激しい戦いが行われていたことを感じさせた。
「お前たち無事だったようだな?」
「ああ。見ての通りだ。ビルトたちも無事そうでなによりだ。」
「おい。お前たちも『死体漁り』に行くだろ?あまり時間が経つと兵士たちに根こそぎ取られるぞ!」
「そうなのか。それならお前たちに着いていこう。」
私たちは、ビルトとサムウェルについて『死体漁り』に向かうことになった。
これは、魔湖で倒した魔物から、素材や魔石を回収して自分の財産にする行為だった。
普通なら倒した者が素材を手に入れる権利があるが、今回のような大規模な戦闘の場合は、倒した者を特定することは不可能だった。
したがって、誰が回収しても罪に問われることはないのだそうだ。
しかし、ある程度時間が経つと、兵士たちが魔物の処理に動き始めるため、それまでに回収する必要があった。
オークキングの素材に関しては、ジンディオールが倒した際にそのままの状態で回収していたので、高価な素材は入手済みだった。
私たちは、ビルトたちと防壁の外で横たわる魔物の亡骸から時間の許す限り魔石や素材を回収していった。
◇ 冒険者ギルド バネーロ支部 ◇
「フェルナンドの冒険者諸君、本当にご苦労じゃった。」
「今回の君たちの働きは、報告を受けている。どうもありがとう。報酬はギルド受付で貰って行ってくれ。」
死体漁りの後、報告のためにギルドを訪れた私たちに、ギルマスのアロウさんから感謝の言葉を頂いた。
アロウさんは、私たちの戦闘の様子も目にしていたようだった。
「ギルマス。ダンジョンに関してはどうなっているんだ?」
私は、ダンジョンから更に魔物が溢れ出さないか気になって、質問を投げかけた。
「もっともな質問じゃな。ダンジョンの方も大丈夫じゃ!既に首都アーウェイから凄腕の冒険者が魔湖を防ぐために潜っておっての。先程、無事依頼を成功させたと連絡が届いたよ。」
「凄腕の冒険者とは?」
「Sランクのメンバーだけで構成された『銀翼の刃』。そして、大多数がAランクで構成される『焔』と『ミルキーウェイ』の三パーティじゃ。」
「Sランク…。」
「その通りじゃ。じゃが、ジンや。防壁の外では、お主も相当に暴れとったのぅ。」
「あ…。やはり気づかれていたか。」
「それはそうじゃろう。あれだけの数を一人で倒すんじゃからな。」
「すまないがこのことは…。」
「わかっているよ。欲のない奴じゃな。英雄扱いされてもおかしくない偉業だと思うんじゃがの。」
「そういうのは御免だ!目立ちたくないんだ。」
「わかった。こちらからは騒ぎたてるような対応は控えることにしよう。」
「感謝する。それで、ダンジョンの立ち入りは可能か?」
「いや、魔湖が静まったばかりじゃ。一ヶ月程度は立ち入りが禁止されるじゃろう。」
「そうか、残念だ。」
「お主たち四名は、これからどうするのじゃ?フェルナンドへ帰るのか?」
「俺たち二人はフェルナンドへ帰るぜ!」
ビルトとサムウェルは、フェルナンドへ帰るそうだ。俺たちは…。
「ジュリア。俺たちは、これから更に北へ向かおうと思う。大丈夫かい?」
「はい!ご一緒します!」
「なんだ。お前たちは帰らないのか。寂しくなるな。ギルマスも寂しがると思うぞ!」
魔法士のサムウェルが寂しそうにそう言った。
「すまないな。やるべきことがあるからな。ランピヨさんに世話になったと伝えてくれ。」
「はいよ。お安い御用だ。」
私たちは、ビルトとサムウェルと握手をしてここで別れた。
私たちは、フェルナンドへは帰らずに更に北の地を目指すことにした。
新たな冒険に足を踏み出そうとしていたのだった…。
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