元最強魔剣士に転生しちゃった。~仇を追って旅に出る~

飛燕 つばさ

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第一章 ジンディオールの復讐編

第21話 ルカ村での戦い(後編)

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 私は盗賊によって襲撃しゅうげきを受けた村に立ちり、村人を救うために盗賊たちと戦っていた。

 多勢たぜい無勢ぶぜいだったが、戦闘中に獲得かくとくした剣術スキル『疾風乱舞しっぷうらんぶ』により12名の盗賊相手に無傷むきず全滅ぜんめつたしていた。

 一息ひといきついた所でジュリアの様子を確認してみると、彼女も善戦ぜんせんしており、残る盗賊もあと三名となっていた…。

「水のつぶてよ、ほとばしれ!『水塊弾丸ウォーターショット!』」

 ジュリアは両手を前にき出すと、小さな水のかたまりが多数具現化ぐげんかされていた。

 多数の水の塊は、勢いよく盗賊たちに向かって飛んでいった。

 まるで弾丸だんがんが飛んでいったかのような勢いで、水は前方にいる盗賊たちに直撃ちょくげきした。

 驚くことに、水が直撃したと思われる箇所かしょにはあなが開き、そこからは血があふれ出していた。

(うわぁ。本当に銃弾じゅうだんのような攻撃だな。これは三人とも即死そくしだわ。本当に水だよな?恐ろしい攻撃だ。)

 恐らくは物凄く高圧に噴出ふんしゅつされた水であるため、銃弾のような威力いりょく発揮はっきしたのだと思われる。

 私は、マシンガンとか散弾銃さんだんじゅうとかそのような攻撃を思いかべていた。

「ジュリア!」

「ジンさん!終わりました!」

「凄いじゃないか!あの水魔法はいつの間に?」

「はい。戦いの最中に突然使えるようになったんです。不思議なんですが、使い方も前から知っていたかのような感じで…。」

 どうやら私の『疾風乱舞』と同じようなことがジュリアにも起きたようである。

「キサマァ!良くも子分たちを!ゆるさん!」

 この場所より少し先の住居から大柄おおがらな男が現れて、おに形相ぎょうそうでこちら歩いて向かってきた。

 男の右手には剣がにぎられていたが、左手には裸の女性が髪を引っ張られる形で引きづられていたのである。

「痛い!もうやめて!」

 女性の悲鳴ひめいにも似たうったえがこちらにもとどいてくる。

 村を襲い、この女性に乱暴らんぼうを働いたのだろう。

 男もはだか同然どうぜんの姿で、非常に下品げひんみにく容姿ようしさらしていた。

 剣を棍棒こんぼうに置きえれば、先日戦ったゴブリンリーダーと大して変わらない姿だろう。

 そして、この男がこの盗賊の頭領とうりょうで間違いないようだ。

 残った二名の子分も頭領の後に続いてこちらに向かっている。

「おい!俺たちにたてくとはいい度胸どきょうじゃねぇか!俺たちは泣く子もだまるサンギョ盗賊団だ!」

 ゴブリンリーダーのような大男は、大きな声を上げて語りかけた。

「親方、こいつビビっているぜ!」
「ああ、親方を見てビビんねぇ奴はいねぇぜ!」

 小柄こがらぶとりな子分こぶん二人も、あおるように言葉を投げかけている。

「その女性を解放かいほうしろ!降参こうさんしておなわになるなら命までは取らないでやろう。」

「ガハハ!キサマのような優男やさおとこ相手に降参だぁ?笑わせんな!」

「アハハ!おい聞いたか?親方相手に降参しろだってよ!」
「アハハ!ああ、聞いたよ!馬鹿なんじゃないか?力量りきりょうもわからないらしいな。」

 ゴブリンリーダー似の頭領と、子豚のような小太りの子分二人は、私の発言はつげんがおかしかったらしく、腹をかかえて笑っている。

「それは残念だ。わざわざ生存せいぞんの道をあたえてあげたのだがな…。それでは子分たちのようにばつを与えるとしようか。」

 私は剣を取り戦闘にそなえる。

「ほほう…。やろうってのか!俺様は公都の兵士だって無様ぶざまに逃げだす程の強さだ。もう容赦ようしゃしねぇ。殺してやる!」

(レベル17の盗賊相手に逃げだす公都の兵士ってどうなんだ?逆に心配になるな…。)

 裸の女性を子分二人に押し付けると、頭領のサンギョは剣を構えてこちらにおそかってきた。

「おーりゃあ!!」

《ブンッ!》

 サンギョの剣はものすごい音を立てて、空を切る。

「よっと…。」

 奴の力は大した物だが、剣術スキルすら持っていない攻撃は容易ようい予想よそうがつく。

 いとも簡単かんたん回避かいひする。

「力は大したものだが、剣術は全然なっていないな。真面目まじめに鍛錬たんれんしておけば良かったと思わないか?」

「ぬかせ!フンッ!」

《ドカッ!》

 上から振り下ろした剣先は、私をとらえることなく地面に激突げきとつする。

 土がえぐれて土砂どしゃが飛び散った。

「ペッ!ペッ!」

 飛び散った土砂どしゃが子分たちの口に入ったらしい。

「フフッ…。」

 子豚似の二人の様子が愉快ゆかいに感じられ、思わずえみがこぼれてしまう。

「キサマ!スカしているんじゃねぇ!」

 私の微笑びしょうがサンギョの逆鱗げきりんれたらしい。

 サンギョの連続攻撃が私を襲う…。

《ブン!ブン!ブンッ!》

くそがぁ!当たらねぇ!」

「当たり前だ!実力じつりょくちがうんだよ!そろそろ終わりにしてやろう。」

《ザンッ!》

 私は横凪よこなぎ一閃いっせんを放った。

「ぐぁぁぁぁ!手がぁ!俺の手がぁ!」

 地面に落下した右手を見ながらサンギョは悲鳴ひめいを上げた。

「これで終わりだ!」

 私は剣先をサンギョの首筋くびすじに立てると、鋭い目つきで見下ろした。

「ひぃ…。」

 流石のサンギョも戦意せんいうしなったようだ。

「おい!そこの男!剣を捨てろ!さ、さもないと…。」
「おい、ルルドしっかりしろ!さもないとこの女をこ、殺すぞ!」

 今度は子豚の二人組だった。

 明らかに弱いのだが、女性を盾にして精一杯せいいっぱい強気つよきに出たようだ。

 自分たちが劣勢れっせいに立たされて、死なないための活路かつろを必死に見いだしたのだろう。

(二人がかりで人質ひとじちをとられたか。流石に分が悪いな。どうしたものか…。)

 ふと、ジュリアの方に視線を送ると、瞬時に打開策だかいさくひらめいた。

おどしのつもりか?彼女を見ろ!弓に掛かっているのは二本の矢だ。彼女は弓の名手めいしゅだ。お前たちがその娘を攻撃する前に、彼女はお前たち二人の頭を同時に射抜いぬけるぞ!」

 私の隣に立つジュリアは、宣言せんげんどおり矢を二本矢にほんやにかけており、何時でも放てるように準備していたのだ。

(ああは言ったものの、ジュリアは本当にやれるのか?思い付きのハッタリなんだがなぁ。)

「ひぃ…。こぇぇ。こ、降参する!」「俺たちの負けだ!殺さなでくれ!」

 私のおどしは成功し、女性は解放された。



「なあ、ジュリア。最後の二本矢の攻撃だけど、あれは本当にできたのかい?」

「ああ。あれですね?あれは威嚇いかくのために思いいただけで、実はできません!」
 
《ズコッ!》

「や、やっぱりできなかったんだ…。アハハ。」

「ウフフ。間違って女性に当たったら大変じゃないですか!」

「確かに…。しかし、アレがあったから被害を出さずに降参されられたんだよ。」

「そうですね。でも、ジンさんの女神さま効果で私の成長も早いですし、いつかは出来そうな気がします。」

「ジュリア!そのことは他の人には内密ないみつに…。」

「あっ!おくちめますね!ごめんなさい…。」
 
 私たちは笑顔で見つめ合った。

 その後、サンギョと子豚二人は、村人たちに捕らえられた。
 
 こうして、ルカ村の盗賊襲撃騒動は一件落着いっけんらくちゃくした。

 村人たちにはたいそう感謝され、一晩泊めて頂いた後に出発することにした。

《 翌朝 》

 私たちが村を旅立つ時、大勢の村人に見送られることになった。

 代表して村長が私に声を掛けてきた。

「ジンさん、ジュリアさん。もう行ってしまわれるのですかな?」

「ええ。とりあえず公都に行き、更に北を目指すつもりです。」

「そうですか。お二人はあのホセ村からいらしたのだそうですね。身分証もなく公都に入るのは大変でしょう。正門の兵士宛に手紙をしたためましたのでお持ちください。きっと力になってくれるでしょう。」

「村長さん。それはありがたい。感謝します。」

「あっ、もう一つ。サンギョ盗賊団を討伐したことも手紙に書いてあります。いずれ兵士がこの村まで盗賊を引き取りにくるでしょう。事実関係が証明されれば貴方に懸賞金けんしょうきんはらわれるはずです。くれぐれも手紙を渡し忘れないようにしてくださいね。」

「承知しました。では、村長さん、皆さん。どうかお達者で!」「さようなら!」

 私とジュリアは、ルカ村の皆さんに手を振って村を後にした。

 次に目指す公都フェルナンドもあと少し。

 私たちの足取りは軽く感じられたのであった…。
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