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第6章 地下ドワーフ編

第137話 ドワルコ帝国(軍務大臣3)

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「どりゃー!」
「うりゃ!」

《ドン!!》

 鍛冶屋のメサと軍務大臣のマルクがそれぞれの槌を振り下ろし、激しくぶつかりあった。轟く音と震える空気がその激しさを物語っていた。

 双方ほとんど互角の様子である。両者とも一度距離を保ち、次の攻撃に対して身構えている。

(メサって職人のイメージが強くて、戦闘はからっきしだと思っていたけど、力もあるし、強かったんだね。)
 
 メサがマルクと互角に戦っているのを見て驚いた。

 メサは生産職で、戦闘は得意ではないと思っていたからだ。

 メサに渡したミスリルハンマーが魔剣にも負けなかったのも驚きだったが、それよりも驚いたのは、メサが魔人化したマルクに打ち負けなかったことだった。

 魔人化すると身体能力が上がり、魔剣の力も加わる。

〘マスター、ただ今戻りました。メサが魔人化したマルクに打ち負けなかったのは、『打撃王』の能力が関係しています。〙

(ああ、エイチさんおかえり。『打撃王』か…。確かにそんな能力があったね。)

〘はい。『打撃王』は固有(ユニーク)スキルです。打ち負けないだけの力の底上げや、『打つ』という動作に関する技術力が非常に高まるようです。〙

(なるほど。打撃と王だからね。リヨンさんに並ぶチートな能力かも知れないね。)

〘肯定します。しかし、メサは打撃に関して素晴らしい才能がありますが、身体能力はマルクの方が圧倒的に上です。〙

「シールド!」

《バン!》

 マルクが強く打ちつけた魔槌がシールドにヒットする。

 身体能力が優位にあると察知したマルクは、足を使って攻撃を行う。

 速さの面で差があるメサは、マルクのフットワークに着いていけずに不利な角度から打撃を許してしまう。

 それでも、シールドスキルを使用することで有効打は回避できている。

「せい!」

《ブンッ!》

 メサの魔槌は空を斬る。速度の差があるため、簡単に見切られ回避されてしまう…。

《バン!》

 こちらの攻撃は回避されるが、相手の攻撃は的確に届いている。

 シールドスキルによって防げてはいるが、やはり相手の実力の方が数段上に映る。

「メサ、手助けしますよ!」
「いや、社長!やらせてくれ!頼む!」

 メサは見た目に寄らず負けず嫌いな一面があるようだ。

「強化剤を飲むぜぇー!」

 メサは一気に強化剤を飲み干した。ほんのりとメサの身体が輝くと彼はその効果を確かめるように動き始めた。

「うほーい!自分の身体じゃねぇみたいな凄い変化だぜぇ。これなら戦えるぜぇ。」

「ほぅ…。奇妙な物を持っているな。だが、人と魔人では格がちがうわ!そりゃ!」

 マルクは、魔槌による連続打撃を繰り出した。

 しかし、身体能力が向上したメサは攻撃を回避してしまう。

「何だと!?」

「おぉ!社長!これなら勝てるぜぇ。」

 マルク並の素早さとなったメサは、逆に主導権を握りつつあった。

 打撃王による打撃力や打撃における技術でマルクは防戦となっていた。

「くっ…何だこの圧力は…。あの薬にそこまでの能力が…。」

〘マスター、強化剤には副作用があります。そろそろ別の手段を講じる必要があります。〙

(別の手段に心当たりは?)

〘打開策は、四件用意できてます。その中でもマスターが最も好みそうな打開策は、魔剣に対抗する魔剣でしょう。〙

(ああ、確かに…。まあ、やってみますか。)

 タイゲンカバンには、まだ魔族の素材はいくつか保管してある。

 メサには『打撃王』のスキルがあるから槌の魔剣をつくることにしよう。

(使う素材はあれだな…。)

 私は、タイゲンカバンの異次元空間内でイメージ通りに神スキル『クリエイト』を扱うことができる。

 ウィキーの魔剣作成方法を参考にし、脳内で様々な素材を合成したり、結合させたりしながら目的の武器を構成していく。

 程なくして魔剣が完成した。

「できたぞ。これが『ポボロアーヌの魔槌』だ!」

名前 ポボロアーヌの魔槌
種類 魔剣
価値 ☆☆☆☆☆☆
相場価格 error
効果 身体能力40%向上 硬度UP 振軽打重 4連打 魔族の呪い
説明 魔族 ポボロアーヌの素材をベースに作り上た魔剣。槌タイプで大きく重量があり、誰にでも扱える代物ではない。振軽打重の効果で、使用者は槌を軽く感じるが、打撃時には重い一撃となる。硬度UPで耐久性が高く、槌が壊れにくい。魔族の呪いは、長時間装備すると悪意が増幅し、魔人化してしまう。サカモト・レイ作。

「くっ…身体が言うことをきかないぜぇ。」

 魔槌作成している間に戦況は、変化していたようだ。副作用によってメサの動作は鈍り、窮地に追いやられていた。

「メサ、ポーションを直ぐに飲んで、こちらにきてください!」

 メサは、直ぐにマジックバッグよりポーションを取り出して一気に飲み干した。

「おぉ、身体の自由が戻ったぜぇ!」

「メサ専用の魔槌を作りました。これならマルクの魔槌に対抗できる筈です。ただし、魔族の呪いがありますから、長時間の使用は控えてください。」

「おう!す、すげぇな!これが魔槌!?手に持った瞬間に強くなった感じがするぜぇ。」

「実際、身体能力が40%向上する効果がありますから、気のせいではありません。」

「よし!これならやれるぜぇ。社長!ちょっくら行ってくるぜぇ!」

 メサは意気揚々と戦闘に戻って行った。

(エイチさん。魔人化が始まったマルクを元に戻す方法はありませんか?)

〘否定します。マルクを魔人化から解放する手立てはありません。魔剣使用にはリスクが伴います。魔人化しないように短時間使用に留めるなどリスク管理は必須です。〙

(そうか、マルクは魔族の呪いを知らずに使っていたのだろうか。残念だ。)

 マルク・イーロムには申し訳ないが、魔人化を止められない以上、魔人として倒すしかないようだ。

《ガン!ドン!》

 メサとマルクは打ち合いを続けている。

 マルクは、身体能力を活かして足を使って攻撃を仕掛けるが、メサも魔槌の能力向上により身体能力が高まっており、マルクの攻撃に余裕で対応できているようだ。

「馬鹿な!能力が向上したワシの攻撃に対処できるとは…。その魔槌は一体…。」

 マルクの肌の色は薄黒く染まり、身体は逞しくなり完全に魔人と化してしまったようだ。

 しかし、そんな魔人相手でもメサは互角以上に戦えているようだ。

 果たして魔槌どうしの戦いはどうなっていくのだろうか…。目が離せない。

― to be continued ―
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