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第6章 地下ドワーフ編

第126話 採掘場のアダマンタイト

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◇ 採掘場の連絡トンネル ◇

 我々エチゴヤ旅団は、メサの兄であるムサ・アレバリ侯爵の手引きを受けて、採掘場『A2-40』へと向かっていた。

 この採掘場は、伝説級の鉱石であるアダマンタイトが眠っているという噂がある場所である。

 我々は、そのアダマンタイトを手に入れることが目的の一つである。

 ドワーフ王国にある採掘場は、全て王国が管理しており、国が定めた者しか立ち入りが許されていない。

 我々がこの採掘場に足を踏み入れることが出来たのは、ドワーフ王に受け入れられて許可されたことによるものである。

 ドワーフ王国の採掘場は、王国の領地であるゴーラン山脈の山々の地下に存在しており、数え切れない程多く存在しているそうだ。

 このドワーフ王国の地下都市から地下トンネルが張り巡らされており、ゴーラン山脈の様々な地下鉱脈へと続いている。

 我々は、トロッコに乗って移動することになった。

 メンバー全員が乗るには手狭だったので、私とメサ以外の仲間たちは『異空館』という異次元空間に繋がる特別な魔道具で一時的に待機して貰った。

 トロッコは、金属で出来たレールの上を走る乗り物である。

 動力は人力による物で、とても原始的だと思っていたが、トロッコには重力を軽減する魔法が掛けられており、鉱夫は楽々と推進させていた。

 どうやら人力と魔法の融合技術であるようだ。

 トロッコの技術自体がこの世界の文明からすると高水準だと思うので、ドワーフの技術力には大変関心した。

 坑道を颯爽と走るトロッコに私は大変興奮していた。

 そして、鉱夫にお願いしてトロッコの人力作用を体験させて貰うことになった。

 金属の棒を前後に押すことで推進力を得るようだが、重力軽減されていることで想像以上に簡単であった。

 この凄い瞬間に立ち会えたことに感動した。

 我々はトロッコで様々な分岐を辿り、奥地まで進んでいた。

 複雑な坑道の分岐路をどうやって覚えているのかは謎だが、鉱夫は自信を持って進んでいるようだ。

 トロッコは、加速しながらまだまだ先へと進んでいた。

 鉱石の独特な匂いが染まる風は、私たちに突き刺さる。

 鉱夫が制動するレバーを引くと、金属が擦れる音が聞こえて、トロッコはやがて停車した。

◇ A2-40 採掘場 ◇

 我々は、ついに目的となる採掘場に到着した。

 我々を案内してくれた鉱夫は、ルミイさんとアヤリさんだ。

 この後に行われるアダマンタイトの調査と採掘の際にも協力して頂けるそうだ。

 我々は、再び異空館から仲間を呼び出した所、二人とも大変驚いた様だった。

「うわぁ!突然人が現われたで!びっくりしたで!」

「ルミイさん、アヤリさん、すみません。特別な魔道具で仲間を呼び出しました。」

「兄ちゃん、すげぇで!流石はメサ様の仲間だで!」

「ルミイ、アヤリ。アダマンタイト探すから力を借してくれや。」

「もちろんです。メサ様、お任せください!」

「にゃにゃ!メサにゃんは、なんかお偉いさん見たいにゃあ!」

「ガハハ!猫のねーちゃん、気づいたか!なかなかやるじゃねーか!」

(普通、誰でも気づくだろ…。)

 我々は、坑道を歩き始めた。私は、片眼鏡を使用したり、商業ギルドのブラックカードの反応を確かめながら進んでいく。

 この辺りは鉄鉱石の反応が多く、まだアダマンタイトは確認ができない。

 片眼鏡の鑑定スキルは、鉱石を見分けることには優れているものの、レンズを通して見た物の情報を調べるだけなので、鉱石の深部に隠れている物の情報は調べることができない。

「レイ様、如何ですか?」

 リヨンさんが心配そうに私の顔を覗き込んでいる。

「大丈夫ですよ。片眼鏡の鑑定の能力と、このブラックカードの共鳴反応を頼りに見つけだしてみせますよ。」

 我々は、採掘場へ足を踏み入れた。

 ここは、ある程度掘り終えた後の場所のようで、作業を行っている鉱夫の姿は無かった。

「メサ様、ここが『A2-40』だで。前は、ミスリルなんかも取れてたんだが、もう取り尽くしたみていだで!」

「うほーい!すげぇな!綺麗に取り崩してあるなぁ。流石の腕だぜぇ。」

 メサは、採掘後の状態を見て、鉱夫たちの能力が優れていることを見極めたようだ。

 正直、私にはどこが凄いのかさっぱりわからない。

「さて、皆さん本格的に調査しましょう。アダマンタイトの手がかりがあれば教えてください。」

 ここで個別に調査を始める。この採掘場はかなり広くなっており、一人ではとても見切れなそうである。

 私は、再び片眼鏡やブラックカードを駆使して調査を進めていく。

 今のところアダマンタイトに辿りつくような情報は得られていない。

「見てッス!綺麗な石があったッス!」

 ココアの声に一同が反応して集まった。シルバーカラーの美しい鉱石が姿を見せていた。

「おお!やったで!ねーちゃんお手柄だで!でも、これはアダマンタイトじゃなくて、ミスリルだで!」

 私も確認したがミスリルで間違いなかったようだ。

 このミスリルは、鉱夫の二人が手慣れた手つきで採掘している。

 ツルハシのような道具で石を砕いて手頃な大きさにして採掘用のカートに運びだしてした。

 我々の目当て以外の資源は、王国の物になるそうだ。

 カンカンと音を立てながら採掘している様子は、いかにも自分がイメージしていたドワーフのワンシーンのようで胸が踊った。

 そのあとは、大した収穫もなく調査だけは続いていた。

 片眼鏡も残念ながら今回は活躍する機会に恵まれないようだ。その時である。

 ブラックカードが僅かに輝き始める…。

「社長!そのカードが光ったということは…。」

「ええ!どうやらアダマンタイトが近くにあるのかも知れません。」

 私たちは、更に奥地まで歩を進めていく。カードは、徐々にその光を強めていくようである。

 カードの光は、ある岩壁の所で急激に強まった。

「皆さん、この奥がアダマンタイトの反応が強そうですよ。この壁を壊して掘り進められますか?」 

「おお!俺たちに任せろで!」

 ルミイさんとアヤリさんはツルハシで壁を削り始めた。

 しかし、すぐに多くの壁が崩れる訳ではないので、我々エチゴヤ旅団も手伝うことにした。

 丁度いい採掘道具が無かったので、鉱夫の二人が使っているツルハシのような道具を参考に私が自ら作成することにした。

 私には神スキル『クリエイト』があるため、必要な素材と完成したイメージがあれば容易に好きな物を作れてしまう。

名前 ミスリルのツルハシ
種類 高性能鉱具
価値 ☆☆☆☆
価格 金貨20枚~50枚
能力 能力向上
説明 ミスリルゴーレムの素材から作成したツルハシ。非常に硬度が高く、ほとんどの鉱石は容易に採掘できる。サカモト・レイ作

「よし、できた!皆さんこのツルハシを使って作業を進めてください。」

「社長!こりゃマジですげぇな!ミスリル製じゃんか!こんな贅沢なツルハシはドワーフだって使ってねぇぜぇ。」

 メサは、目を丸めて興奮しているようだ。

 私はメサに『能力向上』スキルが使えることを説明した。

 彼は身体能力を強化した上で、ツルハシを振りおろした。

《キーン…バギッ…ゴトッ。》

 鋭く振り下ろされたツルハシは、硬い岩壁に突き刺さり、いとも簡単に崩していた。

 岩壁は大きく抉られて、足元には大岩が転がっていた。

「マジすげぇな!」
「凄いにゃん!」
「レイ様…流石です!」
「凄いッスね~!」

「メサ様!一体なにを!凄まじい打撃だったで!」

 私を含めて一同がミスリルのツルハシの性能に驚いていた…。

(まさか、ここまでとはね。でも、これなら採掘は捗りそうだ。)

 かなりの破壊力の為、安全のために三グループに別れ、距離を保ちながら採掘作業を進めていった。

 鉱夫の二人とメサの希望で三人にミスリルのツルハシを手渡して作業をお願いした。

 流石はドワーフ族だけあり、ツルハシの扱いは上手で、みるみる壁が削れていった。

 邪魔になった岩壁の破片は、タイゲンカバンを利用して一時収納し、邪魔にならない場所にまとめて移動しておいた。

《カツーン!!》

 メサの振り下ろしたツルハシが止まった。何かに干渉を受けた様子である。

「おっ!硬いのに当たったぜぇ。ミスリルでも通らないぜぇ。」

「メサ、硬い鉱石はアダマンタイトかも知れませんよ。崩れそうな箇所を徹底的に崩してください。」

「わかったぜぇ。」

 三人が協力して作業を進めていく。すると、やがて黒光りする岩肌が姿をみせたのであった…。

 私は早速片眼鏡で鑑定する。

名前 アダマンタイト鉱石
種類 伝説級鉱石
価値 ☆☆☆☆☆☆
価格 Error
説明 希少鉱石。非常に硬度が高く、魔法にも強い。この素材で作られた武器や防具は、世界最高峰の能力を発揮できると言われている。しかし、硬度が高いために、加工できる者はほとんどいない。

「おっ!やはり、アダマンタイトでしたよ!!」
「マジか!社長!ガハハ!すげぇぜぇ!」
「ご主人様、やったにゃん!」
「レイ様、おめでとうございます!」

 ミミとリヨンさんが感激して私に抱きついてきた。私は少し照れながらも、彼女たちの頭を撫でた。

「ありがとう、ミミ、リヨンさん。でも、これは皆さんのおかげですよ。」

 私は、鉱夫の二人や仲間たちにも感謝の言葉を述べた。

 鉱夫の二人は、あまりにも驚いている様子であったが、やがて笑顔になって祝福してくれた。

「主様、これからどうするッスか?アダマンタイトを採掘するなら、特別な道具が必要だと思うッス。」

 ココアが賢明な提案をした。確かに、ミスリルのツルハシではアダマンタイトには歯が立たないだろう。 
 
「それならば…。」

― to be continued ―
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