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第5章 バロー公国編
第116話 ボーゲンのダンジョン(肆之階)
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◇ ボーゲンのダンジョン 肆之階 ◇
私たちは、巨大迷宮のある参之階を攻略し、ついに肆之階へやって来た。
肆之階は、明らかにダンジョンとは形相が異なっており、尚且つ確実に見覚えのある物であった。
そう、この肆之階は、『異空館』に建造されている館の内部に良く似ているのだ。
艶感のある壁や床、洋館風な造り。
我々は、毎日異空館の館を利用しているので、尚更良くわかるのだ。
「主よ、ここはアレだよな?」
「私も…そう思います。」
「たしか異空館もボーゲンが造っていたわよね?」
「ええ。このダンジョンもボーゲンが造ったと言われていますから、そうなりますよね。」
全員が内部の造りに納得する。余りにも似ているのでうっかり寛ぎそうになる程である。
ここの階層を攻略することと、『聖なる種火』の入手を忘れてはならない。
「さあ、皆さん。気を引き締めて攻略しましょう。『索敵スキル』には反応はありませんが、罠がある可能性があります。」
「面白そうにゃー!」
私達は、探索を開始することにした。館の一階より探索を行う。
エントランスより右側は、五つの部屋があるようだ。手前側の部屋は食堂になっている。
20名掛けの長机が二つ置かれていた。かつては大人数で食卓を囲んでいたのだろうか?
食堂の奥には厨房がある。
食堂と厨房は、部屋を分けて繋がっており、エントランスより右側に食堂、厨房の部屋となっている。
かなりの年月は経っているだろうから、当然食材はないのだが、異空館と同じ技術が施されており、部屋も調理器具も新品同様に綺麗な状態であった。
罠の存在が無かった為に、食堂にて食事と休憩を取った後に、再び探索を開始した。
その後、全員で一階フロアの探索を続けるものの、殆どが客室で大した手がかりは掴めなかった。
二階の探索を開始する。二階は、中央から右側フロアと左側フロアと扉が二つあるだけであった。
この事から、左右ともに大部屋であることが予想される。
私達は、直感で右側の扉を開けて、内部を探索することにした。
どうやらここは、ボーゲンの研究室だったようだ。
作りかけの武器や防具、打ち捨てられたカラクリ人形、パッと見意味のわからない魔道具など、たくさんの研究材料が転がっており、私にとっては大変興味深い場所であった。
「わぁ、何これ!?面白いですね~!」
「おぉ、これはダンジョンの外の様子が見えるようですね。監視カメラ的な感じでしょうか。これは、物見水球と呼ばれる魔道具のようです。」
「レイ様。コレは何でしょうか?」
「コレは!空中バイクではないでしょうか?鑑定してみますね。あぁ~これは素晴らしいですね。ふむふむ…。魔石を動力にして風魔法で宙に浮かせている仕組みの様です。いや~コレは欲しいですね~。」
「おい!主の暴走を止めないと何時まで経っても進まないぞ!」
「あらあら。でも、アッシュさんは分からないからつまらないだけでしょう?」
「五月蝿いわ!」
「サカモト様!とりあえずは先に進みましょうね~ん!終わったらまた見ればいいのですよん。」
「あぁ。すみません。つい没頭してしまいました。先に進みましょうか。」
私は、うしろ髪ひかれる思いでフロア左側の部屋に移動した。こちらの部屋は…書庫であった。
「わぁ!何と素晴らしい!」
書庫は200~300冊はある本が綺麗に整頓されていた。
本は、古代文字と言われる類いの文字なので、私以外には読むことが出来なかったようだ。
私には反則神スキルによって世界の様々な文字や言語に対応が可能になっていた。
本は、魔道書と魔道具書が大半を占めているが、魔物や人体の解剖書や、料理本、歴史書、戦術書など幅広い本が並んでいた。
全ては流石に見ていられないので、キョロキョロしながら何か手掛かりになりそうな物を探しながら奥へ進んでいく。
本棚に囲まれた先には、一つの机が置かれていた。
机には、一冊の本と、近くに筆置きにきちんと収められている筆があるだけであった。
興味をそそられて、私は机に近づいた…。
机の上の本が自動的に開く仕掛けだったようだ。
筆置きにあった筆が宙を移動して本の上のに移動した。
気づけば、その筆は独りでに何かを書き始めたのであった…。
「す、凄い!独りでに何か書いています。また、古代文字でしょうか?レイ様、何て書いてあるんですか?」
私は、みんなにもわかるように書き綴られて行く文字をその場で読み上げて行く…。
「サカモトよ。よく来たな。我は、ボーゲンじゃ。お主ならば、我のダンジョンを攻略できると確信していた。我の死後、ここに辿り着いた者はおらぬ。聖剣の作成に必要な聖なる種火を探してるのだな。あれは、我が愛した友と呼べる存在が守っている。彼らの役目は、もう終わりにさせてあげたい。見事討ち果たし、解放させて欲しい。聖なる種火や我が遺した物は、報酬として持ち帰るがよい。さあ、三階へ向うのだ!」
筆は、書き終えたらしく、筆置きに戻って行った。
「私だけでなく、皆さんも疑問に思ったと思いますが、理論的に説明できないことも時にはあります。ここは、ボーゲンさんに言われた通りに三階へ向かいましょう。」
―― 肆之階 ボーゲンの館 三階 ――
三階は、大広間となっている。特に何もない部屋だった。敵の気配も特に感じない。
「あれー!何もないですね。主様が指示されたのはここッスよね?」
「その筈ですが、どうなっているのでしょうか?」
私達は、不審に思いながらもフロア中央へ移動していく。
《ポワン!》
何か音が聞こえた。突然床が光を放ち、巨大な魔法陣が浮かび上がった。
魔法陣から現れたのは、巨大な犬?いや、あれは…。私は、片眼鏡で鑑定を行う。
名前 ケルベロス
種族 魔獣
スキル 冥炎 毒唾 俊足 尾撃
説明 ボーゲンが小犬の頃から可愛がっていた冥犬。頭が三つあり、独自に思考を持つ。名前は、ロロ、カロ、ミロと名付けられていた。体長は4メートル。ボーゲン死後もこのフロアを守り続けている。
「やはり、ケルベロスでしたか。各自分散して撃破して下さい。能力は、冥炎、毒唾、俊足、尾撃です。気をつけて下さいね!」
先制は、ケルベロスだった。一瞬でこちらに近づいての攻撃を仕掛ける。
キャシーさんの喉元に大きな前足が振り下ろされた。
《Pan! 》
「ざーんねん!魔障壁を事前に展開してましたのねーん!」
《プシュン! プシュン! プシュン!》
私は、ケルベロスの攻撃が弾かれたタイミングで射撃する。
しかし、直ぐにケルベロスは反応して回避する。
「速いですね。全弾外れましたか…。」
「爆裂拳!にゃにゃにゃにゃにゃ!」
《ギャン!》
ケルベロスが回避したのを見逃さずに、ミミは素早く回り込んで打撃攻撃を行う。
頭が下がった所を連打されて、ケルベロスの一体がかなりの負傷を負ったようだ。しかし…。
残った二体から炎の攻撃が飛んできた。
「おぉ!」
「シールド!」
ケルベロスの間合いにいたアッシュさんとリヨンさんは、ケルベロスの冥炎を受けるが、シールドスキルによって何とか防ぐことに成功する。
冥炎は、赤黒い炎で普通の炎とは性質が違いそうだ。直撃は避けた方がいいだろう。
それでも、シールドスキルや魔障壁などの能力で、守備面での不安要素は割と少なそうだ。
ただ、相手の『俊足』はなかなか厄介で、致命的なダメージを与え切れていない。
その後、キャシーさんやミザーリアさんが、飽和攻撃であるマジックアローで攻撃するものの、広いフロアを上手に使って回避してされてしまった。
「レイ様、私にお任せ頂けますか?」
「大丈夫ですか?相手もかなりの速さです。」
「ええ。頂いた能力を試してみたいのです。」
「わかりました。では、エイチさんのサポートをリヨンさんにお渡しします。」
「ありがとうございます。」
私とアッシュさんで、リヨンさんの準備時間を稼ぐ為に、ケルベロスの攻撃の盾になる。
魔障壁もシールドスキルもあるので、当面の攻撃は凌げそうだ。
《ピューン!》
妙な気配を察知して振り返ると、黄金色に輝くリヨンさんが立っていた…。
(うーん。あれは全身に電気を帯びているのかな?見た目がスーパー〇〇〇人みたいだけど…。エイチさんめ、人の知識を利用して妙なことを…。)
「リヨンちゃん、何だか凄いですねーん。」
「あらあら、リヨンが化け物になったわ!」
「ミザリー!それは余分ですよ。これは全身に電気と闘気を纏って、戦闘能力を向上させてるのです。電光石火の進化版らしいですわ。」
「レイ様、行きます!」
「は、はい。お願いしますね。」
守備に徹している私達の脇からリヨンさんが飛び出して反撃する。
リヨンさんの闘気に圧されてケルベロスは、一先ず距離を取った。
《ウォォン!》
直ぐにケルベロスは、攻撃に移った。
素早くリヨンさんの間合いに侵入した奴は、前足からの攻撃と尾撃でリヨンさんを捉えようとした。
リヨンさんは、尾撃で後方からも攻撃が入っているのを察知し、後退はせずに、敢えて前方へ逃れた。
股抜きの様な大勢になりつつも、ケルベロスの腹部を雷刀で切りつけている。
《キャイン! キャイン! 》
ケルベロスは、痛みに悶絶した。
その後のリヨンさんは…見えなかった。
いや、見えるが、それ程の速度で移動している。
全ての動作を完全に認識するのが難しい程にである。
気づけばケルベロスの頭が、ポトリ、ポトリと床に落とされて行く…。
凄まじい雷刀の切れ味。
そして、ケルベロスでも反応できない速さの成せる結果である。
頭一つになったケルベロスは、恐怖して後退り、逃走を開始する。
「主人の元にお帰りなさいな。電撃砲!」
背を向けて走り出したケルベロスに向けて、分厚い電気の束がレーザー光線のように発射された。
《ジュドーン!》
悲鳴を上げる暇すら与えられずに、ケルベロスは黒焦げになって絶命してしまった…。
「すごいですね!リヨンさん!」
「レイ様!やりました~!」
体力はかなり消耗した様だが、電光石火の様な副作用に苦しむ様子はなく安心した。
私は、膝を付き、息をきらしているリヨンさんの元へ移動する。
手を差し伸べ、起き上がらせてからポーションを手渡した。
「ありがとうございます!レイ様のお役に立てたでしょうか?」
「バッチリです!こちらこそありがとうございます。」
「おい、おい、お二人さんよ。お熱いのは結構だがよ。魔法陣が表れたぞ!行くんだろ?」
「はい!もちろん!」
私達は、ケルベロス撃破後に表れた魔法陣に触れる。予想通り、転移陣だったようだ。
《シュン!》
目の前に表れたのは、巨大な魔石であるダンジョンコアと、真っ青な灯火を放っている聖なる種火があったのであった…。
ーーー to be continued ーーー
私たちは、巨大迷宮のある参之階を攻略し、ついに肆之階へやって来た。
肆之階は、明らかにダンジョンとは形相が異なっており、尚且つ確実に見覚えのある物であった。
そう、この肆之階は、『異空館』に建造されている館の内部に良く似ているのだ。
艶感のある壁や床、洋館風な造り。
我々は、毎日異空館の館を利用しているので、尚更良くわかるのだ。
「主よ、ここはアレだよな?」
「私も…そう思います。」
「たしか異空館もボーゲンが造っていたわよね?」
「ええ。このダンジョンもボーゲンが造ったと言われていますから、そうなりますよね。」
全員が内部の造りに納得する。余りにも似ているのでうっかり寛ぎそうになる程である。
ここの階層を攻略することと、『聖なる種火』の入手を忘れてはならない。
「さあ、皆さん。気を引き締めて攻略しましょう。『索敵スキル』には反応はありませんが、罠がある可能性があります。」
「面白そうにゃー!」
私達は、探索を開始することにした。館の一階より探索を行う。
エントランスより右側は、五つの部屋があるようだ。手前側の部屋は食堂になっている。
20名掛けの長机が二つ置かれていた。かつては大人数で食卓を囲んでいたのだろうか?
食堂の奥には厨房がある。
食堂と厨房は、部屋を分けて繋がっており、エントランスより右側に食堂、厨房の部屋となっている。
かなりの年月は経っているだろうから、当然食材はないのだが、異空館と同じ技術が施されており、部屋も調理器具も新品同様に綺麗な状態であった。
罠の存在が無かった為に、食堂にて食事と休憩を取った後に、再び探索を開始した。
その後、全員で一階フロアの探索を続けるものの、殆どが客室で大した手がかりは掴めなかった。
二階の探索を開始する。二階は、中央から右側フロアと左側フロアと扉が二つあるだけであった。
この事から、左右ともに大部屋であることが予想される。
私達は、直感で右側の扉を開けて、内部を探索することにした。
どうやらここは、ボーゲンの研究室だったようだ。
作りかけの武器や防具、打ち捨てられたカラクリ人形、パッと見意味のわからない魔道具など、たくさんの研究材料が転がっており、私にとっては大変興味深い場所であった。
「わぁ、何これ!?面白いですね~!」
「おぉ、これはダンジョンの外の様子が見えるようですね。監視カメラ的な感じでしょうか。これは、物見水球と呼ばれる魔道具のようです。」
「レイ様。コレは何でしょうか?」
「コレは!空中バイクではないでしょうか?鑑定してみますね。あぁ~これは素晴らしいですね。ふむふむ…。魔石を動力にして風魔法で宙に浮かせている仕組みの様です。いや~コレは欲しいですね~。」
「おい!主の暴走を止めないと何時まで経っても進まないぞ!」
「あらあら。でも、アッシュさんは分からないからつまらないだけでしょう?」
「五月蝿いわ!」
「サカモト様!とりあえずは先に進みましょうね~ん!終わったらまた見ればいいのですよん。」
「あぁ。すみません。つい没頭してしまいました。先に進みましょうか。」
私は、うしろ髪ひかれる思いでフロア左側の部屋に移動した。こちらの部屋は…書庫であった。
「わぁ!何と素晴らしい!」
書庫は200~300冊はある本が綺麗に整頓されていた。
本は、古代文字と言われる類いの文字なので、私以外には読むことが出来なかったようだ。
私には反則神スキルによって世界の様々な文字や言語に対応が可能になっていた。
本は、魔道書と魔道具書が大半を占めているが、魔物や人体の解剖書や、料理本、歴史書、戦術書など幅広い本が並んでいた。
全ては流石に見ていられないので、キョロキョロしながら何か手掛かりになりそうな物を探しながら奥へ進んでいく。
本棚に囲まれた先には、一つの机が置かれていた。
机には、一冊の本と、近くに筆置きにきちんと収められている筆があるだけであった。
興味をそそられて、私は机に近づいた…。
机の上の本が自動的に開く仕掛けだったようだ。
筆置きにあった筆が宙を移動して本の上のに移動した。
気づけば、その筆は独りでに何かを書き始めたのであった…。
「す、凄い!独りでに何か書いています。また、古代文字でしょうか?レイ様、何て書いてあるんですか?」
私は、みんなにもわかるように書き綴られて行く文字をその場で読み上げて行く…。
「サカモトよ。よく来たな。我は、ボーゲンじゃ。お主ならば、我のダンジョンを攻略できると確信していた。我の死後、ここに辿り着いた者はおらぬ。聖剣の作成に必要な聖なる種火を探してるのだな。あれは、我が愛した友と呼べる存在が守っている。彼らの役目は、もう終わりにさせてあげたい。見事討ち果たし、解放させて欲しい。聖なる種火や我が遺した物は、報酬として持ち帰るがよい。さあ、三階へ向うのだ!」
筆は、書き終えたらしく、筆置きに戻って行った。
「私だけでなく、皆さんも疑問に思ったと思いますが、理論的に説明できないことも時にはあります。ここは、ボーゲンさんに言われた通りに三階へ向かいましょう。」
―― 肆之階 ボーゲンの館 三階 ――
三階は、大広間となっている。特に何もない部屋だった。敵の気配も特に感じない。
「あれー!何もないですね。主様が指示されたのはここッスよね?」
「その筈ですが、どうなっているのでしょうか?」
私達は、不審に思いながらもフロア中央へ移動していく。
《ポワン!》
何か音が聞こえた。突然床が光を放ち、巨大な魔法陣が浮かび上がった。
魔法陣から現れたのは、巨大な犬?いや、あれは…。私は、片眼鏡で鑑定を行う。
名前 ケルベロス
種族 魔獣
スキル 冥炎 毒唾 俊足 尾撃
説明 ボーゲンが小犬の頃から可愛がっていた冥犬。頭が三つあり、独自に思考を持つ。名前は、ロロ、カロ、ミロと名付けられていた。体長は4メートル。ボーゲン死後もこのフロアを守り続けている。
「やはり、ケルベロスでしたか。各自分散して撃破して下さい。能力は、冥炎、毒唾、俊足、尾撃です。気をつけて下さいね!」
先制は、ケルベロスだった。一瞬でこちらに近づいての攻撃を仕掛ける。
キャシーさんの喉元に大きな前足が振り下ろされた。
《Pan! 》
「ざーんねん!魔障壁を事前に展開してましたのねーん!」
《プシュン! プシュン! プシュン!》
私は、ケルベロスの攻撃が弾かれたタイミングで射撃する。
しかし、直ぐにケルベロスは反応して回避する。
「速いですね。全弾外れましたか…。」
「爆裂拳!にゃにゃにゃにゃにゃ!」
《ギャン!》
ケルベロスが回避したのを見逃さずに、ミミは素早く回り込んで打撃攻撃を行う。
頭が下がった所を連打されて、ケルベロスの一体がかなりの負傷を負ったようだ。しかし…。
残った二体から炎の攻撃が飛んできた。
「おぉ!」
「シールド!」
ケルベロスの間合いにいたアッシュさんとリヨンさんは、ケルベロスの冥炎を受けるが、シールドスキルによって何とか防ぐことに成功する。
冥炎は、赤黒い炎で普通の炎とは性質が違いそうだ。直撃は避けた方がいいだろう。
それでも、シールドスキルや魔障壁などの能力で、守備面での不安要素は割と少なそうだ。
ただ、相手の『俊足』はなかなか厄介で、致命的なダメージを与え切れていない。
その後、キャシーさんやミザーリアさんが、飽和攻撃であるマジックアローで攻撃するものの、広いフロアを上手に使って回避してされてしまった。
「レイ様、私にお任せ頂けますか?」
「大丈夫ですか?相手もかなりの速さです。」
「ええ。頂いた能力を試してみたいのです。」
「わかりました。では、エイチさんのサポートをリヨンさんにお渡しします。」
「ありがとうございます。」
私とアッシュさんで、リヨンさんの準備時間を稼ぐ為に、ケルベロスの攻撃の盾になる。
魔障壁もシールドスキルもあるので、当面の攻撃は凌げそうだ。
《ピューン!》
妙な気配を察知して振り返ると、黄金色に輝くリヨンさんが立っていた…。
(うーん。あれは全身に電気を帯びているのかな?見た目がスーパー〇〇〇人みたいだけど…。エイチさんめ、人の知識を利用して妙なことを…。)
「リヨンちゃん、何だか凄いですねーん。」
「あらあら、リヨンが化け物になったわ!」
「ミザリー!それは余分ですよ。これは全身に電気と闘気を纏って、戦闘能力を向上させてるのです。電光石火の進化版らしいですわ。」
「レイ様、行きます!」
「は、はい。お願いしますね。」
守備に徹している私達の脇からリヨンさんが飛び出して反撃する。
リヨンさんの闘気に圧されてケルベロスは、一先ず距離を取った。
《ウォォン!》
直ぐにケルベロスは、攻撃に移った。
素早くリヨンさんの間合いに侵入した奴は、前足からの攻撃と尾撃でリヨンさんを捉えようとした。
リヨンさんは、尾撃で後方からも攻撃が入っているのを察知し、後退はせずに、敢えて前方へ逃れた。
股抜きの様な大勢になりつつも、ケルベロスの腹部を雷刀で切りつけている。
《キャイン! キャイン! 》
ケルベロスは、痛みに悶絶した。
その後のリヨンさんは…見えなかった。
いや、見えるが、それ程の速度で移動している。
全ての動作を完全に認識するのが難しい程にである。
気づけばケルベロスの頭が、ポトリ、ポトリと床に落とされて行く…。
凄まじい雷刀の切れ味。
そして、ケルベロスでも反応できない速さの成せる結果である。
頭一つになったケルベロスは、恐怖して後退り、逃走を開始する。
「主人の元にお帰りなさいな。電撃砲!」
背を向けて走り出したケルベロスに向けて、分厚い電気の束がレーザー光線のように発射された。
《ジュドーン!》
悲鳴を上げる暇すら与えられずに、ケルベロスは黒焦げになって絶命してしまった…。
「すごいですね!リヨンさん!」
「レイ様!やりました~!」
体力はかなり消耗した様だが、電光石火の様な副作用に苦しむ様子はなく安心した。
私は、膝を付き、息をきらしているリヨンさんの元へ移動する。
手を差し伸べ、起き上がらせてからポーションを手渡した。
「ありがとうございます!レイ様のお役に立てたでしょうか?」
「バッチリです!こちらこそありがとうございます。」
「おい、おい、お二人さんよ。お熱いのは結構だがよ。魔法陣が表れたぞ!行くんだろ?」
「はい!もちろん!」
私達は、ケルベロス撃破後に表れた魔法陣に触れる。予想通り、転移陣だったようだ。
《シュン!》
目の前に表れたのは、巨大な魔石であるダンジョンコアと、真っ青な灯火を放っている聖なる種火があったのであった…。
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