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第5章 バロー公国編

第104話 要塞都市ガドゥー(後編)

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《 ガドゥー 二日目 》

 今日は、ガドゥー城へ行き、フラン・ニル・ガドゥー侯爵に謁見する予定である。

 フラン様はお忙しいと聞いているので、スムーズにお目通りできるかはわからないが、王様から預かった手紙があるので、挑戦してみるつもりである。

 私達は城へと向かうために移動を開始した。相変わらず交通網の不便な街道を進み、城の手前まで進んだ。

(この都市の交通網が、敵の移動を阻む作りなのはわかったが、緊急時には自国部隊の足も遅くなるのでは?)

 疑問に思って、城の警備兵に訪ねてみると、彼らはちゃんと対策していると答えた。

「お兄さん、興味津々だね。具体的なことは教えられないけど、ちゃんと対策しているよ。」

「やっぱりそうですよね?まあ、軍隊を一気に正門まで移動させるなら、地下に専用の通路を作るか、外壁に沿って一本道を作るかだとは思いますが…。」

(あっ、図星だったか…)

 警備兵が急に焦り出したので、追求は避けて先に進むことにした。

 ガドゥー城は高台に建造されており、その高台からはガドゥーの美しい街並みが一望できた。

「素晴らしい景色ですね!」

 隣りに並んだリヨンさんも同じように感じてくれて、嬉しくなる。風になびいたリヨンさんの髪が私の頬を優しくくすぐっていた。

◇ ガドゥー城中腹 ◇

 ガドゥー城の中腹には、傾斜のある坂が続いていた。城の壁には、覗き穴や攻撃穴があり、戦時中の防御策が工夫されているようだ。

 中腹からは城内に入ることができるが、ガドゥー城は軍事基地であり、一般人の城内への入場は許可が必要だった。

 私は、貴族証のバッチと英雄勲章を身につけ、兵士に声をかけた。

「あの…私は、サカモト・レイ子爵と申しますが…。」

「もしや、サルバネーロの英雄!!サカモト子爵様でありますか!お会い出来て光栄です。本日は、どのようなご用件でいらっしゃいますか?」

「陛下より領主様宛にお手紙をお預かりしています。また、叙爵後のご挨拶を兼ねてのご訪問とさせて頂いた次第です。こちらが陛下からのお手紙です。お取次ぎをお願いできますか?」

「承知致しました。お手紙をお預かり致します。直ちに領主様に確認して参りますね。ロビーでお待ち下さい。」

 私達はロビーへ通された。城の一階フロアはロビーとなっており、武器や防具の保管や兵士の待機場所として使われていた。

 ロビー部分には、プライバシーを守るための仕切りがあり、ソファーとテーブルのセットが配置されていた。

 しばらくして、領主様であるガドゥー侯爵が姿を現した。

 私は体格の良いオッサンをイメージしていたが、ガドゥー様はハーフドワーフの女性だった。若々しく、美しい容姿で、私は自分の勝手なイメージに恥じる思いがした。

「サカモト・レイ子爵殿。良く来てくれたね。歓迎するよ。私は、この要塞都市ガドゥーの領主を任されているフラン・ニル・ガドゥーだ。よろしく頼む。」

「ガドゥー侯爵様、こちらこそよろしくお願い致します。」

「ここでは、気楽に喋らないかい?肩がこってしまうよ。」

「分かりました。それで、何かご事情でもございましたか?」

 ガドゥー様はバロー公国との貿易が途絶えたことについて話し、物価高に苦しんでいると語った。私は二つの提案をすることにした。

「ガドゥー侯爵。一つ目はバロー公国へ赴き、作物の不作の原因を調査し、解消することです。もう一つは、この都市の近隣に農地や農村を開拓することですね。自給率を上げないと、戦争などの有事の際に物資の補給が困難になりますし、補給路を絶たれたら窮地に陥りますから…。」

「なるほど…確かにそうだね。バローの方はお任せするけど、農地開拓の方は、簡単じゃないよ。」

「ええ、存じ上げています。直ちに対応はできませんが、エチゴヤの方で協力できることがあるかもしれません。」

「おお、そうか。レイ殿が協力してくれるのは心強いな。君の提案に従おう。陛下の手紙にもバローの入国を手伝って欲しいとあったので、微力ながら協力しよう。バローへの出国の許可は、私の仕事の一つなのだよ。商人通行許可証をガドゥー領主として発行しよう。」

「ありがとうございます。」

 こうしてエチゴヤ旅団は、バロー公国との国境へ向かうことになった。

 フラン様の手引きのおかげで、国境の検問所での通行がスムーズに行えた。バロー公国への出国許可も得られ、私達は新たな経験を求めて旅を続けることとなった。

―――― to be continued ――――
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