89 / 141
第4章 魔人アモア編
第89話 魔人アモア(リタイム編)
しおりを挟む
◇ ダンジョン 地下10階 ◇
どうやら異空屍からの転移に成功したようだ。
(ここは…。アモアと戦った場所に戻ってきたようだ。)
私は一年ぶりに元の場所に戻ってきたらしい。
目の前にはアモアがいる。
私は周囲を見渡した。
残念ながら仲間の姿は確認できない。
フロアの至る所に黒い炭が広がっており、EXフレアの威力が凄まじいことを改めて知ることとなった。
仲間達は凄まじい業火で焼かれてしまい、灰になってしまったようだ。
やはり時間は異空屍に飛ばされた時点で停止していたらしく、EXフレアの業火で焼かれた直後の状態のようだ。あの時の記憶が蘇る。
「クソッ!」
悔しさが込み上げてくる。唇を強く噛んだ。血が滲む。
〘 マスター、お仲間なら大丈夫ですよ。取得された時空魔法で何とかなる筈です。〙
(エイチさん、本当ですか!?)
〘 肯定します。〙
「おや?おやおやおや!サカモトちゃん。先程異空屍に飛ばした筈ですが?失敗しちゃったんですかねぇ。それにしてもその姿。そしてその女性は?」
私はニヤリと笑みを浮かべた…。
〘 マスター、時間魔法の『リタイム』を使用して下さい。時空魔法は、まだ初級ですので、せいぜい5分程度しか遡れませんが、それだけの時間があれば、お仲間の救出は可能だと判断します。〙
私は、脳内メニューから時空魔法を選択し、『リタイム』の情報を閲覧する。称号を得ているからか、その場で発動方法を理解する。
このリタイムは、任意の時間まで遡らせた上で、時間軸を強制的に分岐させるものだそうだ。
もともと存在する時間軸をAとするならば、任意時間の地点で、時間軸Bが分岐され、私たちは、時間軸Bに移動することになるようだ。
〘 マスター、『リタイム』は頻繁に使用することを神から禁じられています。また、同じ又は類する時間帯でのリタイムも不可となっております。実質チャンスは一度きりとお考え下さい。〙
(エイチさん、助言ありがとう。必ず成功させますよ。)
『リタイム!』
早速、リタイムを唱えた。予想に反してあっさりと転送が終了した。
(えっと、状況は…?)
〘マスターが放った弾丸が魔人アモアに命中した局面です。アモアの再生も完了しています。〙
(は、はい。了解しました。)
周りを見回すと、まだ全ての仲間たちが生存している。
「よし!成功したみたいだ。」
私が小さくガッツポーズしたところをリヨンさんに見つかる。
「レイ様、その方は…。」
一年ぶりに見るリヨンさんに感動して抱きつきたいが、ここはグッと気持ちを抑える。
リヨンさんは、突然出現したココアに驚いた様子だ。
「新しい仲間です。詳しくは後できちんとお話ししますね。」
「分かりました。レイ様を信じます。」
私は、死んでしまったと思った仲間たちに、一年ぶりに会えたことが何より嬉しかった。
しかし、それと同時に、この先の結末を知っているからこそ、絶対に失敗できないと気を引き締める。
今は、戦闘の真っ最中だ。決して気を抜けない状況である。
私は、改めて魔人アモアのステータスを鑑定する。
- 名前:アモア
- 性別:男性
- 年齢:1027歳
- 種族:魔人(上級魔族)
- 能力:再生 魅了 召喚 悪い予感
- 魔法 :EXフレア シャドウボム コメットレイン etc…
鑑定の能力が上がって、かつては見れなかった情報が見えるようになった。
しかし、その情報は前のバトルの時に体験していて、殆ど分かってしまったのだ。弱点もないらしいし…。
(キャシャリーンが言っていた弱点とは何だっただろう?)
〘 マスター、僭越ですが、アモアには弱点らしきものはありません。しかし、逆に考えるとマスターがアモアを倒せない理由が理解できれば、そこに勝機が見えるのではないでしょうか?〙
(勝てない理由か…。確かにね!何かわかった気がするよ。ありがとう、エイチさん。)
私は、ふと作戦を思い付き、思念でココアに指示を与える。
〘 主様、了解ッス!〙
「その竜人は、どうしたのですかねぇ。突然現れたので少々驚きましたよ。瞬間移動の類いですかねぇ。研究の為に是非お教え頂きたいものです。しかし、竜人が増えた所で、あなた方が私を倒すことなど不可能なのですけどねぇ。」
「それはわかりませんよ!」
私は、脳内メニューを開き、あることを密かに実行することにした。
〘 アモアの『再生スキル』をスキルスティールしますか?〙
(Yes…)
…
〘 スキルスティールは失敗。〙
〘 再びアモアの『再生スキル』をスキルスティールしますか?〙
(Yes…)
…
〘 スキルスティールは失敗。〙
〘 再びアモアの『再生スキル』をスキルスティールしますか?〙
(Yes…)
…
〘 スキルスティールは成功。『再生スキル』を獲得。〙
(やった!これでアモアの再生能力がなくなったぞ!)
私は、脳内メニューから、『スキルスティール』を実行していた。
戦闘中であるが、エイチさんにバックグラウンドで処理してもらっているので、私はアモアに集中できている。
『スキルスティール』とは、相手のスキルを奪う能力である。
しかし、必ず奪えるわけではなく、奪えないスキルも存在するようだ。
また、奪った場合、相手はそのスキルを失ってしまう。
「やや!今、何をしたのですか?少し早いですが予定を変更した方がよさそうですね。EXフレアを実験して終了しましょうかね?」
アモアは、何かを察知したようだ。もしかしたら、奴の『悪い予感スキル』が仕事したのかも知れない。
〘 アモアの『魅了スキル』をスキルスティールしますか?〙
(Yes…)
…
〘 スキルスティールは成功。『魅了スキル』を獲得。〙
「そうはさせませんよ!」そう言って、私は双銃を構えてアモアに狙いを定める。
〘 アモアの『召喚スキル』をスキルスティールしますか?〙
(Yes…)
…
〘 スキルスティールは成功。『召喚スキル』を獲得。〙
「ん!?何だと?『魅了』が使えないだと?キサマ!何をしたのだ?」
アモアの口調が急に変わった。『魅了スキル』が使えなくなったことに気づき、激怒したらしい。
〘 アモアの『悪い予感スキル』をソウルスティールしますか?〙
(Yes…)
…
〘 スキルスティールは失敗。〙
〘 再び『悪い予感スキル』をソウルスティールしますか?〙
(Yes…)
…
〘 スキルスティールは失敗。〙
〘 再び『悪い予感スキル』をソウルスティールしますか?〙
(Yes…)
…
〘 スキルスティールは成功。『悪い予感スキル』を獲得。〙
「こうなったらシャドウデーモンを『召喚』…って、なにぃー!召喚までもかぁ~!このクズがぁ!!」
アモアは、魔力を集め始めた。怒りのせいか、以前よりも魔力の上昇が激しかった。
時間がない。
《プシュン!》
《プシュン!》
《プシュン!》
《プシュン!》
《プシュン!》
《プシュンッ!》
私の銃から火花が飛んだ。
前回のように、魅了でギルバートさんを盾にできなくなり、シャドウデーモンも召喚できなくなったアモアは、急いで回避行動に切り替えたようだ。
「ぐぁぁ!」
アモアは、身体能力の高い魔人である。
通常ならば頭や心臓に撃てば即死させられるのだが、俊足での移動により、致命傷は回避したようだ。
それでも、腕や腹には命中し、血を流している。
「何っ?『再生』もかぁ!!キサマ!何しやがった!?」
気づけばアモアのスキルは、全てエイチさんが奪っていたのである。
スキルが使えなくなったことでアモアの怒りが頂点に達していた。
アモアの魔力は怒りで更に高まり、EXフレアの準備が整ってしまったようだ。
ココアには、最悪の事態の際には、黒龍に戻り爆破から皆を守るように指示を出していた。
彼女は、竜人の状態から黒龍に変化して皆の盾になる。
「皆さん、黒龍の後ろに隠れて下さい。」
全員、巨大な黒龍に驚いていたが、私の声に反応する。
緊急事態であることを察して、全員が言われた通りに行動してくれた。
(良かった。これで専念できますね。)
「黒龍だと!?だが、実験には丁度いい。最大出力のEXフレアだ。何が来ようが無駄だ。全員消し炭となるがよい!」
アモアは、両腕を高く掲げた。
その先には1m程の真っ赤な球体が形成されていた。
高濃度に練り上げられた魔力が危険であることを示しているようだ。
「レイや、その魔法は危険じゃ。人の力では防ぎきれんぞ!早く逃げろー!!」
膨大な魔力を察知したミリモルさんが黒龍の脇から顔出して声をあげる。
(ミリモルさん、心配して下さってありがとうございます。ですが、大丈夫ですよ。)
私の心の声を伝える為にミリモルさんの方に振り向き、片手をあげて微笑む。
そして、直ぐにアモアと対峙して声を上げる。
『魔法術式破壊!』
《パチンッ!!》
パチンと割れるような音が鳴る。
すると、アモアが、打ち込もうとしようとしている魔力球が突然消失する。
「な、ななな。何だと!?何が起こった?」
アモアは、あまりにも想定外な事態が起こり、理解が追いついていない様子だ。
『魔法術式破壊』は、相手が魔力を練り上げている最中に、魔法術式を破壊するスキルである。
魔法は、術式によってその種類や性質が異なっており、術式なしでの発動は不可能である。
このスキルは、その術式を破壊することで、発動しようとする魔法を無効化できるのだ。
そして、このスキルの凄い所がもう一つある。
術式破壊された魔法は、その場で消滅し、魔力だけが霧散して宙を漂う。
その魔力をこちらに引き寄せて吸収し、魔力を増強できるのだ。
この『魔法術式破壊』は、異空屍での一年間の戦闘経験で身に付いた神スキルである。
『魔力総数の上限が1000ポイント上昇されました。』
「魔人アモアよ、私はあなたの魔法術式を崩壊させました。つまり、フレアの実験はこれで終了ということになります。」
「な…んだと…!?」
アモアは顔を歪ませながら、言葉吐き出すのが精一杯である。
流石のアモアもこれには絶望しただろう。
彼の目は恐怖と怒りで充満し、唇は震えていた。
「さあ、観念して下さい。あなたは、沢山の方を殺めました。罪は償って頂きますよ!」
「バカな…!こんなバカなことがあっていいのか?!魔人のこの私が、グズどもに敗れるなど…あっていい訳がない!そうだ。まだ手はある!私には、これがあったんだよ。これだ!異空屍だ!キサマはこれで異次元空間へ封じ込められる!」
アモアは、嬉しそうに『異空屍』を取り出して起動させる。
前回、これによって一年も苦しめられた訳なので、決して忘れる筈のないアイテムだ。
逆に異空屍での経験が勝機に繋がろうとしている訳なので、何と皮肉なことだろうか?
「さあ、さあ、さあ、さあ。サカモトちゃん。いつか現れる魔王に使ってやろうと思っているマジックアイテム『異空屍』です。この世界とはまた別の異次元空間にあなたを閉じ込めます。永遠にね!今頃多くの魔物が生成されている頃です。餌になるかも知れませんが、きっと退屈はしないでしょう。では、おさらばねぇ。」
― to be continued ―
どうやら異空屍からの転移に成功したようだ。
(ここは…。アモアと戦った場所に戻ってきたようだ。)
私は一年ぶりに元の場所に戻ってきたらしい。
目の前にはアモアがいる。
私は周囲を見渡した。
残念ながら仲間の姿は確認できない。
フロアの至る所に黒い炭が広がっており、EXフレアの威力が凄まじいことを改めて知ることとなった。
仲間達は凄まじい業火で焼かれてしまい、灰になってしまったようだ。
やはり時間は異空屍に飛ばされた時点で停止していたらしく、EXフレアの業火で焼かれた直後の状態のようだ。あの時の記憶が蘇る。
「クソッ!」
悔しさが込み上げてくる。唇を強く噛んだ。血が滲む。
〘 マスター、お仲間なら大丈夫ですよ。取得された時空魔法で何とかなる筈です。〙
(エイチさん、本当ですか!?)
〘 肯定します。〙
「おや?おやおやおや!サカモトちゃん。先程異空屍に飛ばした筈ですが?失敗しちゃったんですかねぇ。それにしてもその姿。そしてその女性は?」
私はニヤリと笑みを浮かべた…。
〘 マスター、時間魔法の『リタイム』を使用して下さい。時空魔法は、まだ初級ですので、せいぜい5分程度しか遡れませんが、それだけの時間があれば、お仲間の救出は可能だと判断します。〙
私は、脳内メニューから時空魔法を選択し、『リタイム』の情報を閲覧する。称号を得ているからか、その場で発動方法を理解する。
このリタイムは、任意の時間まで遡らせた上で、時間軸を強制的に分岐させるものだそうだ。
もともと存在する時間軸をAとするならば、任意時間の地点で、時間軸Bが分岐され、私たちは、時間軸Bに移動することになるようだ。
〘 マスター、『リタイム』は頻繁に使用することを神から禁じられています。また、同じ又は類する時間帯でのリタイムも不可となっております。実質チャンスは一度きりとお考え下さい。〙
(エイチさん、助言ありがとう。必ず成功させますよ。)
『リタイム!』
早速、リタイムを唱えた。予想に反してあっさりと転送が終了した。
(えっと、状況は…?)
〘マスターが放った弾丸が魔人アモアに命中した局面です。アモアの再生も完了しています。〙
(は、はい。了解しました。)
周りを見回すと、まだ全ての仲間たちが生存している。
「よし!成功したみたいだ。」
私が小さくガッツポーズしたところをリヨンさんに見つかる。
「レイ様、その方は…。」
一年ぶりに見るリヨンさんに感動して抱きつきたいが、ここはグッと気持ちを抑える。
リヨンさんは、突然出現したココアに驚いた様子だ。
「新しい仲間です。詳しくは後できちんとお話ししますね。」
「分かりました。レイ様を信じます。」
私は、死んでしまったと思った仲間たちに、一年ぶりに会えたことが何より嬉しかった。
しかし、それと同時に、この先の結末を知っているからこそ、絶対に失敗できないと気を引き締める。
今は、戦闘の真っ最中だ。決して気を抜けない状況である。
私は、改めて魔人アモアのステータスを鑑定する。
- 名前:アモア
- 性別:男性
- 年齢:1027歳
- 種族:魔人(上級魔族)
- 能力:再生 魅了 召喚 悪い予感
- 魔法 :EXフレア シャドウボム コメットレイン etc…
鑑定の能力が上がって、かつては見れなかった情報が見えるようになった。
しかし、その情報は前のバトルの時に体験していて、殆ど分かってしまったのだ。弱点もないらしいし…。
(キャシャリーンが言っていた弱点とは何だっただろう?)
〘 マスター、僭越ですが、アモアには弱点らしきものはありません。しかし、逆に考えるとマスターがアモアを倒せない理由が理解できれば、そこに勝機が見えるのではないでしょうか?〙
(勝てない理由か…。確かにね!何かわかった気がするよ。ありがとう、エイチさん。)
私は、ふと作戦を思い付き、思念でココアに指示を与える。
〘 主様、了解ッス!〙
「その竜人は、どうしたのですかねぇ。突然現れたので少々驚きましたよ。瞬間移動の類いですかねぇ。研究の為に是非お教え頂きたいものです。しかし、竜人が増えた所で、あなた方が私を倒すことなど不可能なのですけどねぇ。」
「それはわかりませんよ!」
私は、脳内メニューを開き、あることを密かに実行することにした。
〘 アモアの『再生スキル』をスキルスティールしますか?〙
(Yes…)
…
〘 スキルスティールは失敗。〙
〘 再びアモアの『再生スキル』をスキルスティールしますか?〙
(Yes…)
…
〘 スキルスティールは失敗。〙
〘 再びアモアの『再生スキル』をスキルスティールしますか?〙
(Yes…)
…
〘 スキルスティールは成功。『再生スキル』を獲得。〙
(やった!これでアモアの再生能力がなくなったぞ!)
私は、脳内メニューから、『スキルスティール』を実行していた。
戦闘中であるが、エイチさんにバックグラウンドで処理してもらっているので、私はアモアに集中できている。
『スキルスティール』とは、相手のスキルを奪う能力である。
しかし、必ず奪えるわけではなく、奪えないスキルも存在するようだ。
また、奪った場合、相手はそのスキルを失ってしまう。
「やや!今、何をしたのですか?少し早いですが予定を変更した方がよさそうですね。EXフレアを実験して終了しましょうかね?」
アモアは、何かを察知したようだ。もしかしたら、奴の『悪い予感スキル』が仕事したのかも知れない。
〘 アモアの『魅了スキル』をスキルスティールしますか?〙
(Yes…)
…
〘 スキルスティールは成功。『魅了スキル』を獲得。〙
「そうはさせませんよ!」そう言って、私は双銃を構えてアモアに狙いを定める。
〘 アモアの『召喚スキル』をスキルスティールしますか?〙
(Yes…)
…
〘 スキルスティールは成功。『召喚スキル』を獲得。〙
「ん!?何だと?『魅了』が使えないだと?キサマ!何をしたのだ?」
アモアの口調が急に変わった。『魅了スキル』が使えなくなったことに気づき、激怒したらしい。
〘 アモアの『悪い予感スキル』をソウルスティールしますか?〙
(Yes…)
…
〘 スキルスティールは失敗。〙
〘 再び『悪い予感スキル』をソウルスティールしますか?〙
(Yes…)
…
〘 スキルスティールは失敗。〙
〘 再び『悪い予感スキル』をソウルスティールしますか?〙
(Yes…)
…
〘 スキルスティールは成功。『悪い予感スキル』を獲得。〙
「こうなったらシャドウデーモンを『召喚』…って、なにぃー!召喚までもかぁ~!このクズがぁ!!」
アモアは、魔力を集め始めた。怒りのせいか、以前よりも魔力の上昇が激しかった。
時間がない。
《プシュン!》
《プシュン!》
《プシュン!》
《プシュン!》
《プシュン!》
《プシュンッ!》
私の銃から火花が飛んだ。
前回のように、魅了でギルバートさんを盾にできなくなり、シャドウデーモンも召喚できなくなったアモアは、急いで回避行動に切り替えたようだ。
「ぐぁぁ!」
アモアは、身体能力の高い魔人である。
通常ならば頭や心臓に撃てば即死させられるのだが、俊足での移動により、致命傷は回避したようだ。
それでも、腕や腹には命中し、血を流している。
「何っ?『再生』もかぁ!!キサマ!何しやがった!?」
気づけばアモアのスキルは、全てエイチさんが奪っていたのである。
スキルが使えなくなったことでアモアの怒りが頂点に達していた。
アモアの魔力は怒りで更に高まり、EXフレアの準備が整ってしまったようだ。
ココアには、最悪の事態の際には、黒龍に戻り爆破から皆を守るように指示を出していた。
彼女は、竜人の状態から黒龍に変化して皆の盾になる。
「皆さん、黒龍の後ろに隠れて下さい。」
全員、巨大な黒龍に驚いていたが、私の声に反応する。
緊急事態であることを察して、全員が言われた通りに行動してくれた。
(良かった。これで専念できますね。)
「黒龍だと!?だが、実験には丁度いい。最大出力のEXフレアだ。何が来ようが無駄だ。全員消し炭となるがよい!」
アモアは、両腕を高く掲げた。
その先には1m程の真っ赤な球体が形成されていた。
高濃度に練り上げられた魔力が危険であることを示しているようだ。
「レイや、その魔法は危険じゃ。人の力では防ぎきれんぞ!早く逃げろー!!」
膨大な魔力を察知したミリモルさんが黒龍の脇から顔出して声をあげる。
(ミリモルさん、心配して下さってありがとうございます。ですが、大丈夫ですよ。)
私の心の声を伝える為にミリモルさんの方に振り向き、片手をあげて微笑む。
そして、直ぐにアモアと対峙して声を上げる。
『魔法術式破壊!』
《パチンッ!!》
パチンと割れるような音が鳴る。
すると、アモアが、打ち込もうとしようとしている魔力球が突然消失する。
「な、ななな。何だと!?何が起こった?」
アモアは、あまりにも想定外な事態が起こり、理解が追いついていない様子だ。
『魔法術式破壊』は、相手が魔力を練り上げている最中に、魔法術式を破壊するスキルである。
魔法は、術式によってその種類や性質が異なっており、術式なしでの発動は不可能である。
このスキルは、その術式を破壊することで、発動しようとする魔法を無効化できるのだ。
そして、このスキルの凄い所がもう一つある。
術式破壊された魔法は、その場で消滅し、魔力だけが霧散して宙を漂う。
その魔力をこちらに引き寄せて吸収し、魔力を増強できるのだ。
この『魔法術式破壊』は、異空屍での一年間の戦闘経験で身に付いた神スキルである。
『魔力総数の上限が1000ポイント上昇されました。』
「魔人アモアよ、私はあなたの魔法術式を崩壊させました。つまり、フレアの実験はこれで終了ということになります。」
「な…んだと…!?」
アモアは顔を歪ませながら、言葉吐き出すのが精一杯である。
流石のアモアもこれには絶望しただろう。
彼の目は恐怖と怒りで充満し、唇は震えていた。
「さあ、観念して下さい。あなたは、沢山の方を殺めました。罪は償って頂きますよ!」
「バカな…!こんなバカなことがあっていいのか?!魔人のこの私が、グズどもに敗れるなど…あっていい訳がない!そうだ。まだ手はある!私には、これがあったんだよ。これだ!異空屍だ!キサマはこれで異次元空間へ封じ込められる!」
アモアは、嬉しそうに『異空屍』を取り出して起動させる。
前回、これによって一年も苦しめられた訳なので、決して忘れる筈のないアイテムだ。
逆に異空屍での経験が勝機に繋がろうとしている訳なので、何と皮肉なことだろうか?
「さあ、さあ、さあ、さあ。サカモトちゃん。いつか現れる魔王に使ってやろうと思っているマジックアイテム『異空屍』です。この世界とはまた別の異次元空間にあなたを閉じ込めます。永遠にね!今頃多くの魔物が生成されている頃です。餌になるかも知れませんが、きっと退屈はしないでしょう。では、おさらばねぇ。」
― to be continued ―
5
お気に入りに追加
1,781
あなたにおすすめの小説
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
カクヨムでも投稿しています。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
落ちこぼれの烙印を押された少年、唯一無二のスキルを開花させ世界に裁きの鉄槌を!
酒井 曳野
ファンタジー
この世界ニードにはスキルと呼ばれる物がある。
スキルは、生まれた時に全員が神から授けられ
個人差はあるが5〜8歳で開花する。
そのスキルによって今後の人生が決まる。
しかし、極めて稀にスキルが開花しない者がいる。
世界はその者たちを、ドロップアウト(落ちこぼれ)と呼んで差別し、見下した。
カイアスもスキルは開花しなかった。
しかし、それは気付いていないだけだった。
遅咲きで開花したスキルは唯一無二の特異であり最強のもの!!
それを使い、自分を蔑んだ世界に裁きを降す!
~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。
破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。
小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。
本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。
お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。
その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。
次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。
本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる