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第4章 魔人アモア編

第73話 戦力アップ

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 私は三発発射した。

 初弾はマウントベアの右側に逸れてしまった。失敗だ。

 慌てて軌道修正した次弾は、対側へ逸れるも何とか左肩に命中した。

 マウントベアは強烈な痛みに怯んだようだ。

 その隙に更に軌道修正して打ち込んだ三弾目は相手の急所である眉間をようやく捉えた。

「やった!!」

 サルバネーロへ向かって二日目。私たちは、ルーメル山脈の峠に差し掛かった際に、マウントベアとマウントウルフの群れに遭遇していた…。

 マウントベアは、体長が2.5メートルほどの巨体の魔物である。マウントウルフは、群れで狩りをする。以前戦ったことがあるが、非常に厄介な魔物である。マウントベア三体とマウントウルフ15体相手に、こちらはリヨンさん、ミミ、アッシュさん、ミザーリアさんに私を加えた五名で応戦することになる。

《プシュンッ!》
《プシュンッ!》
《プシュンッ!》

 最初に、私が作成した、サプレッサー付きの銃が火を吹く…。錬成したサプレッサーの効果は素晴らしく、消音効果は抜群だ。特に大きな音は、敵に自分の居場所を知らせるようなので、成功した恩恵は大きい。

 しかし、戦闘慣れしていない私は、背後から近づくマウントベアの存在に気づかずに、接近を許してしまう。そのまま、ベアの鋭い爪が私の喉元に襲いかかった…。

《カキーン!》

 私は、すんでの所で、反射的に『シールドスキル』を発動させた。

 (おー。使えるのか。)

 ガンナーのジョブを手にしたことで、戦闘用のスキルも使用できるようになったようだ。相手が怯んだスキにアッシュさんが、マウントベアの前に立ちはだかる。

 アッシュさんの持つレイの大剣は、スキル『一刀両断』という専用スキルがあるのが特徴だ。武器専用スキルを使用した攻撃で、巨体のマウントベアも頭上から真っ二つに切断された。アッシュさんがいると安心感が違う。さすがはグラディエーターキングだ。

 リヨンさんが片手で振り回している大鎌は、瞬速の薙ぎ払いで、マウントウルフの首を勢いよく刎ね飛ばしていた。リヨンさんと大鎌の相性も良さそうだった。

 ミリモルさんからスパルタ指導を受けていたミザーリアさんとミミはどうだろう?

「サンダーレイン!」

 上空から稲妻の矢が幾つも現れて、雨が降るように敵に降り注いだ。

《グギャー!》

 複数の魔物の叫び声が木霊する。サンダーレインは、広範囲の範囲魔法で、これまで見て来た魔法とは異なる新たな魔法のようだ。雨が降っているかのように、細かく分裂した雷の矢が一斉に飛んでくるので、実際の所、回避するのは非常に困難であろう…。
 
 この新たな魔法は、ミザーリアさんが、ミリモルさんとの特訓の際に身につけたもので間違いないだろう。威力はもちろんだが、広範囲の攻撃なので、残りの魔物全てを黒焦げにしていた。

「凄い!」

「嘘だろ?大魔導師か?凄まじい魔法だな。」

 私とアッシュさんが感心しているとミザーリアさんがやってきた。

「ウフッ。驚いたかしら?お師匠に伝授してもらった新しい魔法なのよ。他にも色々あるから期待していてね!」

 ミザーリアさんは、メガネをクイッと持ち上げて、誇らしげに答えた。確かに、この短期間でこの成果は、非常に驚くべき成長だと思う。まあ、彼女の才能は、天才的ですので…。

「ご主人様!ミミの攻撃も見てにゃ!」

「爆裂拳・風」

「にゃにゃにゃにゃにゃにゃ!」

 ミミの拳には風の力が宿っているように見える。凄まじい打撃の連打に加え、魔力を込めた打撃となり威力が更に増しているようだ。マウントベアには、多数の打撃跡が見られ、フィニッシュの一撃で身体を貫いて絶命させていた。

 ミミもミリモルさんの魔法指導によって新たに風属性を開花させ、魔力を拳に込めて戦う『魔法拳』を会得したようだ。

「二人とも凄いですね!」

 私が褒めると二人とも万遍の笑みを浮かべていた。
 
 ミザーリアさんもミミもミリモルさんの特訓の成果だな。二人の背中が頼もしく写ったのであった。

 私の初戦闘は、あの獰猛で巨体のマウントベアを一人で倒せたので、まずまずの戦績だったと思う。今後は、敵の急所を素早く見つけて、なるべく至近距離に詰められる前に仕留めることや、射撃精度の向上など、技術力を高めて行きたい。

 戦闘が終了した直後に私は新たなスキルを獲得した様だ。

『スキル 避け撃ちを獲得。』
 
 獲得したスキルは、『避け撃ち』というようだ。内容を確認すると、避け撃ちは、ガンナー特有のスキルの一つで、『オートスキル』となっている。

 オートスキルとは、スキル保有者が意識的に発動しなくても、発動条件を満たした場合に、自動的に発動されるスキルを言う。今回獲得した『避け撃ち』は、攻撃されるこが発動条件となっている。攻撃されると自動でスキルが発動し、回避行動を取りながら反撃射撃する。戦闘経験の少ない私にとって避け撃ちは、非常に便利で頼もしいスキルとなるだろう…。

◇ 《六日目》 ピレイニー湖 ◇

 私たちは険しいルーメル山脈を越えて六日目にしてようやくピレイニー湖に到着した。ピレイニー湖は国境にもなっており、対岸には深緑の国家ルーシェルが広がっている。片眼鏡の解析機能で調べたところ、ここより北側に位置する対岸までは、約30キロメートルはあるようだ。更に東西で径を見れば、約50キロメートルはあるようなので、ピレイニー湖がどれだけ巨大な湖かがわかるだろう。

 事前に聞いていた話では、ローランネシアからルーシェルへ国境越えする際には、湖を渡って移動する者は、まずいないそうだ。それは、湖には、ネスドラというこの湖の主と呼ばれる存在がいるからである。ネスドラは、この湖の守り神で、不用意に侵入する者は、怒りを買って、湖の底に沈められると言い伝えられている。

 したがって、湖畔の街道を通り、迂回するルートが一般的なのだそうだ。そして、この街道沿いを進み、国境付近に栄えている都市がサルバネーロである。
 
 私たちは、湖畔の街道を使ってサルバネーロを目指していた。

 夕陽に照らされた湖は、キラキラと輝くが、赤色に染まる空や、山々、木々がバックになり、とても神秘的である。目にした景色は、非常に落ち着いた雰囲気で趣があり、何より美しい。

 私は、日本でも同様な夕焼けに心打たれたことを思い出した。そして、この感動的な自然の風景は、どこでも変わらないんだなとしみじみ思ったのだった…。



 湖畔の街道に入ってから既に二時間は経っている。それまでに魔物との遭遇戦があり、応戦しているうちに日はすっかり落ちてしまった。安全のためにも今日はこの辺りで野宿にすることにした。

 とは言っても実際にここで野宿するわけではなくいつも通り『隠密スキル』を展開した『異空館』を用いることになる。私たちは周りに誰もいないことを確認してから異空館に入った。その後はそれぞれ順番に入浴を済ませ、食堂で落ち合った…。

― to be continued ―
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