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第2章 初めての旅
第26話 初めての野営(前編)
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一行は蔵を出発し、港町ペルモートに向かっていた。私はサムさんの隣に座り、御者の技術についての指導を受けていた。将来的には御者としてのスキルも身につけておく必要があると考えていたのだ。
『御者スキル(初級)を獲得』
驚くほど短時間で、簡単に習得してしまった。これはおそらく『神適性』の影響だろう…。タイゲンさんが以前に言っていたな。神力が強くなると、異能が目覚めやすくなると。まあ、ありがたく使うことにしよう。
移動の途中、私は片眼鏡によるマップ表示を確認したり、事前に敵を発見するために、『索敵スキル』を駆使していた。
「リヨンさん、ヤシムさん。進行方向のやや右側に約10体の敵反応がありました。」
「了解しました!すぐに対処いたします。」
馬車は停止し、リヨンさんとヤシムさんは戦闘態勢に入った。やがて目の前にゴブリンの群れが現れた。ゴブリンたちは凶暴な姿をしており、まさに小鬼と呼ぶにふさわしい存在だ。
ゴブリンは魔物でありながら知能も持ち、武器や防具を身につけている。彼らが武器や防具を作ることはできないため、人間を襲ってはそれらを奪っていることは容易に推測できる。
リヨンさんは素早い動きで敵の間合いに飛び込み、横斬りでゴブリンの首を二体とも切り落とした。ヤシムさんはサムさんと私に近づくゴブリンに対処している。一体を討伐し、もう一体と交戦している。
その隙に、別のゴブリンがサムさんに襲いかかった。サムさんが危険だ!私は思い切ってサムさんとゴブリンの間に入り、一撃を受け止めた。盾となった左腕には傷がついたが、『物理攻撃耐性』のおかげで大きなダメージは受けなかった。
「レイ様!」『電光石火!』
リヨンさんの体の周囲には、稲妻の粒子が漂っていた。リヨンさんは、まばゆい光の中、ゴブリンたちとの距離を一瞬で詰める。彼女の動きは、稲妻のように素早く、そして鮮やかな躍動感に満ちている。ゴブリンの腹部に刃が突き刺さり、一刹那にゴブリンの身体は二つに裂け飛んでいく...。
初めて目にするリヨンさんの戦闘シーンは、予想以上に壮絶なものだった。私、サムさん、ヤシムさんの三人男衆は、口をあんぐりと開け、ただその光景を見入るしかなかった...。
残るゴブリンたちは、リヨンさんの恐るべき力に気づき、逃げ出した...。しかしリヨンさんはまだ稲妻に包まれており、異常な速さでゴブリンたちの間合いを縮めていく。残されたゴブリンたちは、どうすることもできず、リヨンさんの『電光石火』の餌食となって、次々となぎ倒されていく...。ヤシムさんはほとんど活躍する場を与えられず、戦闘は終了した。
「リヨンさん、あなたは一体何者なんです?その強さは異常ですよ!」
サムさんやヤシムさんが驚きながら声をかける。
「彼女は、ただの護衛さんですよ。さあ、魔石を回収しましょう。」
私は即座にフォローに入る。皆で分担して魔石を回収する。魔石は貴重な収入源なので、大切にしなければならない。ドロップアイテムに関しては半分ずつ分けることになっているので、半分はサムさんのものになった。
馬車に戻り、移動を再開する。今度は私とリヨンさんが御者の役割を担当することにした。サムさんとヤシムさんは荷台の中で休んで貰っている。
「レイ様。先程は、お気遣いありがとうございました!」
「いや、いいんですよ。私も大体のことはわかっていますし。それよりあのスキルは凄かったですね。」
「ええ。あのスキルだけで今まで生き延びてこられました。それだけ大切なスキルなのですけれども…。」
「けれども、身体への負担が大き過ぎるのが問題ですよね?」
「レイ様、どうして?」
「それはわかりますよ。その動きは、人体の極限を超えているもの。雷の力の恩恵があるにしても、筋肉や関節はかなり無理を強いられているでしょう。注意しないと筋肉断裂や疲労で動けなくなることもありますよ。今も痛みを感じているのではありませんか?良かったら使ってください。」
私はタイゲンカバンから廉価版ポーションを取り出し、リヨンさんに手渡した。
「レイ様。これはレイ様が商品として用意したポーションなのではありませんか?」
「確かにそうですが、気にしないでください。リヨンさんが苦しんでいる時に、見て見ぬふりをするわけにはいきませんよ。遠慮しないでください。」
「レイ様、ありがとうございます。それでは…」
リヨンさんはキャップを開け、ポーションを一気に飲み干した。その瞬間、リヨンさんの身体がわずかに輝き、すぐに収まった。
「まるで嘘のように身体が楽になりました。やはり、レイ様のポーションは素晴らしいですね。」
「あはは。そうでしょう。この『エチゴヤ』のポーションを甘く見てはいけませんよ!」
「クスッ、その通りですね!私も売る側の人間でした。」
リヨンさんが舌をちょっぴり出して苦笑いしている様子は、なんだか可愛らしく感じられた。
「さあ、後はこのまま休んで下さい。ルートの方は、片眼鏡のマップ表示がありますから問題ありませんので。」
「レイ様。ありがとうございます。では、少しだけ休ませて頂きます。」
私は、マップ表示や索敵を併用しながら、手網を握っている。自覚はしているけれど、徐々にリヨンさんの体温を感じるようになってきた。リヨンさんが安心して私に身を委ねてくれていると思うと、内心で『うっしゃー』とガッツポーズしていた。
日もかなり傾いてきたようだ。もう少ししたら周りが暗くなるだろう。そろそろ野営する場所を探さなければならないだろう。マップ表示上で適切な地点を見つけ、馬車を停車させた。
「皆さん、ここで野営しましょう。」
リヨンさんや後ろの二人に声をかける。私たちは、これから宿営の準備を始めることになった。
手始めに、事前に用意していた天幕を設置した。天幕の設置は、前もってミリモル邸の庭で練習していたので、特に困ることは無かった。サムさんたちも自分たちの分を用意しているようだ。
食事については、料理長が作ってくれた『出来立て』がいつでも食べられるので、まずは身体を綺麗にすることにした。
リヨンさんには、天幕を譲り、事前に用意しておいた『蒸しタオル』を取り出して彼女に差し出した。
私は天幕の外でシャツを脱ぎ、その『蒸しタオル』で身体を隅々まで拭いていく。
「ふぅー。」
(なんと気持ちいいんだ!)
やはり用意しておいてよかった。入浴ほどではないが、非常にさっぱりする。タイゲンカバンの『時間停止スキル』はかなり便利だった。
「レイ様、この『蒸しタオル』は本当に気持ち良くて感激しました。ありがとうございました!」
(はい、リヨンさんからも大絶賛頂きました~。)
いずれはシャワーやベッドのある宿舎を作ってみたいと思う。お湯なんかも水魔法と火魔法を駆使すれば作れそうだし、タイゲンカバンに収納すれば直ぐに使えるので便利だと思う。
「おーい!ごはんにしましょうか!?」
向こうからサムさんたちの声が届いた。彼らは夕食の準備が整ったようだ。
私も料理長が作り上げた美味しい料理が、時間を停止したままタイゲンカバンに収納されている。サムさんたちにそれを見せて、彼らが驚きの表情を浮かべる様子を思い描くと、ワクワク感が抑えきれなくなるのであった...。
― to be continued ―
『御者スキル(初級)を獲得』
驚くほど短時間で、簡単に習得してしまった。これはおそらく『神適性』の影響だろう…。タイゲンさんが以前に言っていたな。神力が強くなると、異能が目覚めやすくなると。まあ、ありがたく使うことにしよう。
移動の途中、私は片眼鏡によるマップ表示を確認したり、事前に敵を発見するために、『索敵スキル』を駆使していた。
「リヨンさん、ヤシムさん。進行方向のやや右側に約10体の敵反応がありました。」
「了解しました!すぐに対処いたします。」
馬車は停止し、リヨンさんとヤシムさんは戦闘態勢に入った。やがて目の前にゴブリンの群れが現れた。ゴブリンたちは凶暴な姿をしており、まさに小鬼と呼ぶにふさわしい存在だ。
ゴブリンは魔物でありながら知能も持ち、武器や防具を身につけている。彼らが武器や防具を作ることはできないため、人間を襲ってはそれらを奪っていることは容易に推測できる。
リヨンさんは素早い動きで敵の間合いに飛び込み、横斬りでゴブリンの首を二体とも切り落とした。ヤシムさんはサムさんと私に近づくゴブリンに対処している。一体を討伐し、もう一体と交戦している。
その隙に、別のゴブリンがサムさんに襲いかかった。サムさんが危険だ!私は思い切ってサムさんとゴブリンの間に入り、一撃を受け止めた。盾となった左腕には傷がついたが、『物理攻撃耐性』のおかげで大きなダメージは受けなかった。
「レイ様!」『電光石火!』
リヨンさんの体の周囲には、稲妻の粒子が漂っていた。リヨンさんは、まばゆい光の中、ゴブリンたちとの距離を一瞬で詰める。彼女の動きは、稲妻のように素早く、そして鮮やかな躍動感に満ちている。ゴブリンの腹部に刃が突き刺さり、一刹那にゴブリンの身体は二つに裂け飛んでいく...。
初めて目にするリヨンさんの戦闘シーンは、予想以上に壮絶なものだった。私、サムさん、ヤシムさんの三人男衆は、口をあんぐりと開け、ただその光景を見入るしかなかった...。
残るゴブリンたちは、リヨンさんの恐るべき力に気づき、逃げ出した...。しかしリヨンさんはまだ稲妻に包まれており、異常な速さでゴブリンたちの間合いを縮めていく。残されたゴブリンたちは、どうすることもできず、リヨンさんの『電光石火』の餌食となって、次々となぎ倒されていく...。ヤシムさんはほとんど活躍する場を与えられず、戦闘は終了した。
「リヨンさん、あなたは一体何者なんです?その強さは異常ですよ!」
サムさんやヤシムさんが驚きながら声をかける。
「彼女は、ただの護衛さんですよ。さあ、魔石を回収しましょう。」
私は即座にフォローに入る。皆で分担して魔石を回収する。魔石は貴重な収入源なので、大切にしなければならない。ドロップアイテムに関しては半分ずつ分けることになっているので、半分はサムさんのものになった。
馬車に戻り、移動を再開する。今度は私とリヨンさんが御者の役割を担当することにした。サムさんとヤシムさんは荷台の中で休んで貰っている。
「レイ様。先程は、お気遣いありがとうございました!」
「いや、いいんですよ。私も大体のことはわかっていますし。それよりあのスキルは凄かったですね。」
「ええ。あのスキルだけで今まで生き延びてこられました。それだけ大切なスキルなのですけれども…。」
「けれども、身体への負担が大き過ぎるのが問題ですよね?」
「レイ様、どうして?」
「それはわかりますよ。その動きは、人体の極限を超えているもの。雷の力の恩恵があるにしても、筋肉や関節はかなり無理を強いられているでしょう。注意しないと筋肉断裂や疲労で動けなくなることもありますよ。今も痛みを感じているのではありませんか?良かったら使ってください。」
私はタイゲンカバンから廉価版ポーションを取り出し、リヨンさんに手渡した。
「レイ様。これはレイ様が商品として用意したポーションなのではありませんか?」
「確かにそうですが、気にしないでください。リヨンさんが苦しんでいる時に、見て見ぬふりをするわけにはいきませんよ。遠慮しないでください。」
「レイ様、ありがとうございます。それでは…」
リヨンさんはキャップを開け、ポーションを一気に飲み干した。その瞬間、リヨンさんの身体がわずかに輝き、すぐに収まった。
「まるで嘘のように身体が楽になりました。やはり、レイ様のポーションは素晴らしいですね。」
「あはは。そうでしょう。この『エチゴヤ』のポーションを甘く見てはいけませんよ!」
「クスッ、その通りですね!私も売る側の人間でした。」
リヨンさんが舌をちょっぴり出して苦笑いしている様子は、なんだか可愛らしく感じられた。
「さあ、後はこのまま休んで下さい。ルートの方は、片眼鏡のマップ表示がありますから問題ありませんので。」
「レイ様。ありがとうございます。では、少しだけ休ませて頂きます。」
私は、マップ表示や索敵を併用しながら、手網を握っている。自覚はしているけれど、徐々にリヨンさんの体温を感じるようになってきた。リヨンさんが安心して私に身を委ねてくれていると思うと、内心で『うっしゃー』とガッツポーズしていた。
日もかなり傾いてきたようだ。もう少ししたら周りが暗くなるだろう。そろそろ野営する場所を探さなければならないだろう。マップ表示上で適切な地点を見つけ、馬車を停車させた。
「皆さん、ここで野営しましょう。」
リヨンさんや後ろの二人に声をかける。私たちは、これから宿営の準備を始めることになった。
手始めに、事前に用意していた天幕を設置した。天幕の設置は、前もってミリモル邸の庭で練習していたので、特に困ることは無かった。サムさんたちも自分たちの分を用意しているようだ。
食事については、料理長が作ってくれた『出来立て』がいつでも食べられるので、まずは身体を綺麗にすることにした。
リヨンさんには、天幕を譲り、事前に用意しておいた『蒸しタオル』を取り出して彼女に差し出した。
私は天幕の外でシャツを脱ぎ、その『蒸しタオル』で身体を隅々まで拭いていく。
「ふぅー。」
(なんと気持ちいいんだ!)
やはり用意しておいてよかった。入浴ほどではないが、非常にさっぱりする。タイゲンカバンの『時間停止スキル』はかなり便利だった。
「レイ様、この『蒸しタオル』は本当に気持ち良くて感激しました。ありがとうございました!」
(はい、リヨンさんからも大絶賛頂きました~。)
いずれはシャワーやベッドのある宿舎を作ってみたいと思う。お湯なんかも水魔法と火魔法を駆使すれば作れそうだし、タイゲンカバンに収納すれば直ぐに使えるので便利だと思う。
「おーい!ごはんにしましょうか!?」
向こうからサムさんたちの声が届いた。彼らは夕食の準備が整ったようだ。
私も料理長が作り上げた美味しい料理が、時間を停止したままタイゲンカバンに収納されている。サムさんたちにそれを見せて、彼らが驚きの表情を浮かべる様子を思い描くと、ワクワク感が抑えきれなくなるのであった...。
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