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第3章 人間超越編

第33話 ティアの教育方針……レア鉱石は最高です

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   辺りが静まり返ったのを見計らい、障壁を解除する。五重に張っていた障壁は残り二枚の所まで突破されていた。
   ホント、超級の合成魔術半端ないっす……
   辺りを見渡すと、爆発の中心部はクレーターが出来ており、十五体いたヒューマンは跡形も見当たらなかった。

「おおぉーー」
〈マ、ス、タ、ァ!〉

   ティアを抱っこしながら、感嘆の声を上げ爆発後の光景を見渡していると、ドスの効いた念話が頭に響く。

(何かなトモ君)
〈何かな、ではありません!〉
《そうだよマスター。只でさえ強力な超級の、しかも合成魔術なんて、簡単にほいほい使っていい魔法じゃ無いんだよ》

   トモに次いで、いつも陽気なニアまで説教口調で加わる。

[マスター、お怒りは分かりますが、後先考えずに広範囲魔法を使うのはおやめ下さい]

   そして、説教の大本命アユム。

「んっ、ゆうにぃ、めっ!   だよ」

   俺に抱っこされてるティアまで加わった。
   うん、どうやら四面楚歌の様だ。そういう場合、取れる行動は一つだけーー

「ごめんなさい!」

   俺は力の限り謝った。

   ⇒⇒⇒⇒⇒

(なぁ、アユム)

   第八十一層からの帰り道。まだプンプン言っているティアを抱っこしたまま、アユムに問いかける。

[何でしょう、マスター]
(あの魔物は、このダンジョンを作った奴が故意に配置したと思うか?)
[可能性は高いと思われます。ダンジョンを製作した者、ダンジョンマスターは魔物の配置をある程度自由に出来る権限がありますから……しかし、この試練の洞窟の製作者は神という事になってますが?]
(そうなんだよね……と、言う事は、神は何であんな人間そのものの魔物何て配置したと思う?)
[それは……]
《人間や亜人を殺す事に慣れさせたかった?》

   一瞬言い淀んだアユムの代わりに、ニアがおどけた様に解答を口にする。その解答は俺も行き着いたものだから、特に驚きもせずに頷いておく。

(それしか結論は出ないよね)
〈神は勇者にこの大陸の人種を殺させたいと思っていると、マスターはそう考えてるのですか?〉

   トモの言葉に小さく頷く。その真意は分からないが、そう考えるのが妥当だ。しかし、そうなると……

「他の勇者達はあの魔物に疑問を持たなかったのだろうか?」

   ここを離れる時、健一達にそんな感じの動揺は見られなかった。あれを只の魔物程度にしか思わなかったのだろうか?

[最初はそうだったのかも知れませんが、【恐怖耐性】を持つ者が幾度となくあの魔物と戦えば……]
(健一達が人を殺す感覚に慣れたと?   だったら俺もその内こんな事、疑問にも思わなくなるのか?)
[いえ、人種が人間だった彼らと、【超越者】となったマスターでは精神力に大きな差があります]

   一瞬、不安になった俺を直ぐにアユムが否定する。その言葉で俺は少し安心した。

(精神的に未熟な者は、人を殺す環境に流される。そして慣れてしまえば、疑問にも思わなくなるか……)
[はい。それでティアの事ですが、ティアもこの戦闘に参加させるべきです]
(なっ!)

   アユムの提案に絶句する。
   ティアに人殺しをさせろって?   幾ら何でも……

[ティアは人間よりも精神力が高いエルフ。しかもその最上位の【ハイエルフ】になっています。しっかりと教育すれば、何の感情も抱かずに人を殺す様な事は無いと思います]
(しかし……)
《ま~たティアちゃんへの過保護を発動する気?   マスター。ティアちゃんはマスターの言いつけは絶対守る子だよ。そんなティアちゃんが『人を殺してはいけない』って言うマスターの言いつけを鵜呑みにしたまま外の世界に出て、盗賊なんかに襲われたらどうするの?》

   言い淀んだ所に、ニアが痛い所を突いて来る。

〈ニアの言う通りですよマスター。『この世界は強者には寛容だが、弱者には理不尽な世界だ』と、言ってるのはマスターじゃないですか。そんな世界で人を殺さないという足枷をティアちゃんに嵌める気ですか?〉
(………)

   ぐうの音も出ないとはこの事だ。確かに殺す気で向かって来る相手に、殺さない様に対するのはデメリットでしかない。今のティアなら一対一なら余裕で殺さずに無力化も可能だろうが、十人、二十人相手に殺さない様に気を使いながら戦うとなると、その負担はかなりのものになるだろう。

(分かった……ただ、ティアの教育には協力してもらうぞ)
〈分かりました〉
《了解で~す》
[かしこまりました]

   俺の提案に三者三様の答えが返って来た。
   本当に頼むよ。

   ⇒⇒⇒⇒⇒

   翌日から三日間ダンジョンに潜り続け昨日、第九十層のボス、ハイヒューマンを倒した。第八十一層から第八十九層までで出て来た魔物は結局ヒューマンだけだったが、そんな事よりティアに対する教育の方が気疲れした。
   ホント、自分にも子供の頃があった筈なのに、子供の気持ちを理解するのは難しい。まさか、十代で世のお父さんの気持ちを味わうハメになるとは……
   と言うわけで、そんな苦労話は置いといて、今の俺のステータスは、

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

   名前   桂木   博貴      Lv   98
   人間種      超越者
   状態   正常

   HP      33350/33350
   MP      38440/38440

   体力         6670
   筋力         7290
   知力         7649
   器用度      7048
   敏捷度      7792
   精神力      7328
   魔力         7688

〈ノーマルスキル〉

   熱耐性Lv10(2)
   冷気耐性Lv10(2)
   恐怖耐性Lv10(2)
   猛毒耐性Lv10(3)
   麻痺耐性Lv10(2)
   石化耐性Lv10(2)
   気絶耐性Lv10(2)
   即死耐性Lv10(2)
   痛覚耐性Lv10(2)
   解体術Lv10(1)
   収穫Lv10(1)
   採掘Lv10(1)
   採取Lv10(1)
   理容Lv10(1)
   手加減Lv10(3)
   世界共通語Lv10(1)
   エルフ語Lv10(1)

〈エクストラスキル〉

   中級聖神魔術Lv10(15)
   中級闇黒魔術Lv10(15)
   中級格闘術Lv10(15)
   神の手Lv10(10)

〈ユニークスキル〉

   超級炎術Lv10(20)
   超級風術Lv10(20)
   超級水術Lv10(20)
   超級地術Lv10(20)
   超級短剣術Lv10(20)
   超級槍術Lv10(20)
   超級斧術Lv10(20)
   至高の鍛冶屋Lv10(17)
   至高の木工職人Lv10(17)
   至高の裁縫職人Lv10(17)
   至高の料理人Lv10(17)
   至高の薬剤師Lの10(17)
   至高の農夫Lv10(17)
   至高の錬金術師Lv10(17)
   至高の魔道具技師Lv10(17)
   忍ぶ者Lv10(25)
   魔導を極めし者Lv10(30)
   武を極めし者Lv10(25)
   全能力値強化Lv10(20)
   共に歩む者Lv10(50)
   超越者Lv10(1000)

〈オリジナルスキル〉

   スキルポイントアップLv10(30)

   SP   116

   パーティメンバー      ティアLv97

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

   こんな感じになっている。
   【忍ぶ者】は【隠密】の上位スキル。【魔導を極めし者】は【魔導師】の上位スキル。【武を極めし者】は【闘士】の上位スキルで、【全能力強化】は能力値強化系スキルが纏まったものだ。
   レベルがあまり上がってないのは、ヒューマンとの戦闘を極力避けた結果である。
   そして、今回は俺的にレベルの上昇による成長より喜ばしい事があった。

「にっひひひ」
「ひろにぃ、気持ち悪い」

   リビングでハイヒューマンのドロップアイテムであるレア鉱石、ヒヒイロカネを見つめて至福の気分を味わっていると、相変わらずの豪快な食事をとっていたティアが食事の手を止め、心底嫌そうに言った。
   ティアが大好きな食事を中断する事は珍らしく、本当に嫌だった事が分かる。しかし、最近、物作りに楽しみを見出した俺にとって、このレア鉱石は途轍もない宝物なのだから、ニヤけても仕方が無いと思う。
   この古代級の鉱石、ヒヒイロカネでどんな物を作るか考えるだけで笑みが込み上げてきて、このレア鉱石を落としてくれただけで、神の胸糞悪い思惑などどうでもいいと思う程だ。

「ん?」
「ん!」

   俺の至福のひと時を邪魔する気配がログハウスの外、五キロ程先から感じられた。ティアも感じた様である。

「この気配は……魔物じゃあ無いよな」
[はい。馬車と、その周りに馬に乗った五人の人間の反応が感知されてます]
「こんな森の中を馬車とはね……」
[一応、このログハウスから森の外れにある村までは道があるので、馬車は通れると思われますが、平均レベル100の魔物が出るこの森を通るのですから、それなりに強い方々でしょう]
「ふーん、……城の連中かな?」
[勇者では?]
「いや、その可能性は低いだろ」

   言いながら窓辺に立ち、【共に歩む者】に吸収された【千里眼】の能力を使用する。
   ログハウスの入り口から伸びる道の先に見えたのは、豪華な作りの馬車と、それを取り巻く馬に乗った騎士達だった。



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