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第2章 最弱勇者卒業編

閑話 ティアの追憶

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   閑話です。短いです。
   


   今日は年に一度、外に出られる日。
   そして、一年で一番嫌いな日。
   お母さんとお父さんに連れられ、郷の大通りを歩く。
   周りからは嫌な視線が集まって来る。
   去年は何処を見てもこの嫌な視線があって、視線が合うと嫌な顔をされたり舌打ちされたりしたから、今年は前髪を伸ばして視線が分からない様にした。
   お母さんとお父さんは悲しそうな顔をしている。
   全部ティアに【精霊認識】が無いせいだ。
   ……全部ティアが悪いんだ。

   ⇒⇒⇒⇒⇒

   長老の家で長老の前に立つ。
   ティアの背後にはお母さんとお父さん。
   左右の壁際には郷の偉い人たちがいた。
   長老はティアの顔を覗き込み、そして顔を左右に振った。その瞬間、お母さんは泣き崩れお父さんはお母さんを支えながら肩を震わせていた。
   またお母さんとお父さんを悲しませてしまった。
   心の中を埋め尽くす罪悪感で涙が零れた。

   長老はティアの名前を剥奪して郷を追放すると言った。
   お母さんは一層泣き崩れ、お父さんも膝を落とし床に手を付いて泣いていたけど、壁際の偉い人たちは手を叩いて歓喜し、嗤い合っていた。
   ティアは……ううん、もうティアじゃ無いからーー私はお母さんとお父さんがあんなに泣いているのに、何で偉い人たちが嗤っていられるのか、その気持ちが理解出来なかった。

   ⇒⇒⇒⇒⇒

   私は郷の門から放り出された。
   地面に打ち付けられ肘や膝が痛かったけど、お母さんとお父さんの泣き叫ぶ声が聞こえ、立ち上がりながら後ろを振り向いた。
   お母さんとお父さんは泣きながらこっちに手を伸ばしていたけど、郷の兵隊さんが槍でお母さんとお父さんの身体を遮り、こっちに来れない様にしていた。
   またお母さんとお父さんを泣かせてしまった。
   私が居るからお母さんとお父さんは泣いちゃうの?
   私が居なければお母さんとお父さんは笑って暮らせるの?
   私は居ない方が良いんだ。
   私はお母さんとお父さんの為に、郷に背を向けて森の中へと歩き始めた。

   ⇒⇒⇒⇒⇒

   森の中は怖いもので溢れていた。
   大っきな蜘蛛に、いっぱいの蜂。真っ黒い熊や銀色の狼。
   皆私を食べようと追いかけてくる。
   私は必死に逃げ、川に潜り、息を殺してやり過ごした。
   お腹が空いたらなんでか光って見える草や茸、木の実を食べた。
   でも量が少なくてお腹いっぱいにはならない。
   お母さんの料理が食べたい。暖かい料理が食べたい。お肉が食べたい。

   ⇒⇒⇒⇒⇒

   森に入って十日位経った頃、私は大っきな蜘蛛に追っかけられた。
   蜘蛛は嫌!   あんなおっかない口で食べられたくない!
   必死で逃げてたら、蜘蛛は急に止まって引き返していった。
   ここは不思議な場所。怖いもの達はここには入って来れないみたい。
   この不思議な場所の真ん中には木のお家が建っていた。
   誰か居るのかな?   何か食べる物分けて貰えないかな?
   淡い期待を込めて扉をノックしてみたけど、誰も出て来なかった。扉には鍵も掛かってるみたい。
   私は扉から少し離れた木の下で、誰か帰って来ないか待つ事にした。
   もう、森の中を彷徨う力も気力も無い……お腹空いた……

「%〒○♪〆」

   聞いたことのない音で目を覚ます。
   いつの間にか寝てしまったみたい……
   見ると優しそうなお兄さんがちょっと困った様な顔でこちらを覗き込んでいた。
   私がここに来たから困ってるんだ。私はここにも居てはいけないんだ……
   
「こんばんわ」

   ここから離れようと後ずさっていると、今度は聞き慣れた言葉が聞こえて来た。
   優しそうな声。
   えっ、これ食べてもいいの?
   久しぶりのちゃんとした食事。あったかい料理。
   
   えっ、一緒にって私は誰かと居ちゃいけない子だよ。何でそんな事聞くの?
   えっ?   強くなるの?   私が……うん!   強くなりたいーー

   ティアは今ひろにぃと一緒にいる。
   ティアにティアと名乗っていいと言ってくれたひろにぃ。
   ティアに美味しい食事を作ってくれるひろにぃ。
   ティアがティアらしくいると頭を撫でてくれるひろにぃ。
   ティアは優しいひろにぃが大好き。


   ーーーーーーーーーーーーーー

   セピア色の情景をイメージして書いてみました。
   如何だったでしょうか?
   私はこれを書いて確信しました。
   私は一人称、語り口調系の文章と悲しみを誘う話は苦手です。
   これからも精進していきますので、よろしくお願いします。
   神尾優でした。

   
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