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第2章 最弱勇者卒業編
第10話 斧術の恩恵とショボい鑑定……スライムは強敵です
しおりを挟むダンジョン第一層。
スライムを倒しレベルを上げる為、朝からダンジョンに潜った。筋力の関係上、防具が装備出来なかったから、接近戦は避けて炎術と光術を主軸として戦うつもりだ。
ちなみに、【初級炎術】で覚えた魔法は、レベル1で火の矢を放つファイアアロー。レベル5で火の壁を作るファイアウォール。レベル10で火の属性を武器に付与するファイアエンチャント。
【初級光術】はレベル1で光の矢を放つライトアロー。レベル3で灯りを灯すライティング。レベル5でHPを30%回復させるヒール。レベル10で光の属性を武器に付与するライトエンチャントだった。
昨日、ポーションに【鑑定】を掛け回復量を確認してみた所、HP300回復と出た。どうやら、ポーションは回復量が最初から決まっているのに対し、回復魔法はHP全体の何%という回復方法らしい。
道理で攻略を進めた健一達がポーションを必要としなかった訳だ。レベルが上がりHPが高くなれば、下位のポーションの回復量では役に立たないだろうからなあ。
ダンジョン第一層を慎重に進む。
迷路と言う程入り組んではいないが、薄暗い洞窟の様な通路は方向感覚を狂わす。
迷わない様に慎重に歩を進めていると通路は行き止まりになり、そこに絵に書いた様な宝箱が置いてあった。
宝箱……だよな? でも、中身は健一達が回収してると思うけど……
どうせ中は空だろうと軽い気持ちで蓋を開けてみると、中には小さな小瓶が入っていた。
……え? これって、ポーションだよな…… 何でポーションが入ってるんだ? 健一達が取り逃がした? いやいや、こんな入り口付近でそれはないだろ。だとしたら誰かが補充してるのか?
何かよく分からない者がダンジョン内の宝箱を補充して歩いている所を想像し、それは無いだろと頭を振って想像を打ち消した。
いくら考えても仕方がないので、誰が入れたか分からない不思議ポーションを手に取り、後ろを振り返る。と、グリーンスライムがいた。その距離約十メートル。
スライムって足音しないから、後ろから来られると分からないな……あっそうだ! スライムがどの位強いのか【鑑定】してみるか。
ポーションをバックに仕舞いながら、スライムに【鑑定】を掛ける。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
名前 グリーンスライム Lv 3
魔物種 スライム
状態 正常
HP 20/20
MP 5/5
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
あれ? 能力値やスキルが見れない? (1)のスキルだからか? 【鑑定】の上位版があるのかな? それともまた、知力が低いってオチか?
っと、今はそんな事を考えている場合ではないか。戦闘中だ。取り敢えずスライムに集中しますか。
約五秒掛かる呪文を唱え、ファイアアローを放つ。
ファイアアローはスライムに真っ直ぐ飛んで行き、着弾するがスライムは健在。更にファイアアローを二発放ち、やっとスライムを倒す。
あれ? 思ったより楽勝じゃない。魔力が低いから魔法の攻撃力が低いのか?
よく考えたらスキルがいっぱい取れるって喜んでたけど、レベルアップによる能力値の上昇は上限10って決まってるから能力値は人並みにしか上がらないんだよな……これは【スキルポイントアップ】を過信したら足元を掬われるんじゃないか?
ファイアアローは消費MPが5だから三発で15消費する。ライトアローも同じ。MPが30の俺が同じ戦法で二戦すればMPが0になり気絶してしまう。
一戦目は魔法で、二戦目はアローを二発放って接近戦しかないか。
それにしたって、たった二戦で休憩に戻らないといけないとは……もう一回戦って休憩に戻ったらMPポーションを持って来るかな? このバックあんまり容量が無いんだよなあ……
倉庫に置いてあった小さなウエストバッグ。
マジックバッグというらしい。体積、重量に関係無く物が入れられるという機能なのだが、その最大容量数が十個と、とても少ない。無いよりあったほうが有り難いのは確かなんだかけど、少し残念なアイテムだ。
攻略手順とマジックバッグの不便性を考えながらスライムが倒れた辺りまで戻ると、直径二センチ程の黒い玉が落ちていた。
あれ? そういえば昨日倒したスライムもこれを落としてたよな。これってなんだろう?
落ちていた黒い玉を拾い上げ、【鑑定】を掛けてみる。
スライムの核
??? スライムの核? 【鑑定】しても名前しか出ないんじゃ、何に使うアイテムか分からないじゃないか。
取り敢えずスライムの核をバックに仕舞い、魔方陣の部屋に続く通路の方に戻る。後一戦したらログハウスに戻らないといけないから、この辺で戦いたいんだけど……などと思っていると、まだ行ったことの無い通路からスライムが姿を現わす。
よし、二匹目!
呪文を唱えファイアアローを放つ。更にもう一発放ち、腰に掛けていたライトアックスを引き抜くと、スライムとの約五メートルの距離を一気に詰め、その勢いを殺さないようにライトアックスをスライムに振り下ろした。
アックスは抵抗無くスライムを切り裂くが、その傷は直ぐに塞がる。
おいおい……これダメージ与えてるんだよな。
疑問が一瞬の隙となり、その隙を突きスライムがその体の一部を伸ばしこちらに攻撃を仕掛けて来る。
ドッ!
鈍い音を立て、胸にスライムの攻撃が当たった。
痛!
鈍い痛みが胸から広がり、その衝撃で二、三歩後退する。HPを確認すると、
22/30
となっていた。
一撃で8ダメージか……後三発喰らうとアウトだな。
ダメージは喰らったが、思いのほか冷静だ【恐怖耐性】Lv10が機能してるのかもしれない。
後退した事で出来た間合いを詰る様に体を横に回転させ、その勢いを利用してスライムに水平に斬りつける。更に勢い余った腕の振りを縦に変え、野球のオーバースローの様にもう一撃叩き込むと、スライムは生き絶えた。
スライムを倒した安堵と共に驚きも生まれる。今まで斧は勿論、竹刀すら持ったことの無い俺が、効果的な斧の振り方や間合いの取り方を感覚で理解出来ていた。
これが武術系スキルの効果か。これでアーツを使えればもっと楽に戦えていたんだろうが、危なくて使えないよな。
【初級斧術】で覚えるアーツは攻撃力が1・2倍になる斧撃と、攻撃を斧で受けると防御力が1・2倍になる斧盾なのだが、魔法を使うとMPが減る様に、アーツを使うとHPが減る。斧撃と斧盾は消費HPが5であり、HPが少ない今の俺では危なくて使えない。
しかし、スライムの一撃でダメージ8かぁ~。防御力に影響を与える体力がレベル0の頃の六倍あるのに……あの時ノーダメージで倒せて本当に良かった。
床に転がっていた何に使うか分からないスライムの核を回収し、休憩する為にログハウスへと戻った。
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