上 下
12 / 172
第2章 最弱勇者卒業編

第10話 斧術の恩恵とショボい鑑定……スライムは強敵です

しおりを挟む
   
   
   ダンジョン第一層。
   スライムを倒しレベルを上げる為、朝からダンジョンに潜った。筋力の関係上、防具が装備出来なかったから、接近戦は避けて炎術と光術を主軸として戦うつもりだ。
   ちなみに、【初級炎術】で覚えた魔法は、レベル1で火の矢を放つファイアアロー。レベル5で火の壁を作るファイアウォール。レベル10で火の属性を武器に付与するファイアエンチャント。
   【初級光術】はレベル1で光の矢を放つライトアロー。レベル3で灯りを灯すライティング。レベル5でHPを30%回復させるヒール。レベル10で光の属性を武器に付与するライトエンチャントだった。
   昨日、ポーションに【鑑定】を掛け回復量を確認してみた所、HP300回復と出た。どうやら、ポーションは回復量が最初から決まっているのに対し、回復魔法はHP全体の何%という回復方法らしい。
   道理で攻略を進めた健一達がポーションを必要としなかった訳だ。レベルが上がりHPが高くなれば、下位のポーションの回復量では役に立たないだろうからなあ。
   ダンジョン第一層を慎重に進む。
   迷路と言う程入り組んではいないが、薄暗い洞窟の様な通路は方向感覚を狂わす。
   迷わない様に慎重に歩を進めていると通路は行き止まりになり、そこに絵に書いた様な宝箱が置いてあった。
   宝箱……だよな?   でも、中身は健一達が回収してると思うけど……
   どうせ中は空だろうと軽い気持ちで蓋を開けてみると、中には小さな小瓶が入っていた。
   ……え?   これって、ポーションだよな……   何でポーションが入ってるんだ?   健一達が取り逃がした?   いやいや、こんな入り口付近でそれはないだろ。だとしたら誰かが補充してるのか?
   何かよく分からない者がダンジョン内の宝箱を補充して歩いている所を想像し、それは無いだろと頭を振って想像を打ち消した。
   いくら考えても仕方がないので、誰が入れたか分からない不思議ポーションを手に取り、後ろを振り返る。と、グリーンスライムがいた。その距離約十メートル。
   スライムって足音しないから、後ろから来られると分からないな……あっそうだ!   スライムがどの位強いのか【鑑定】してみるか。
   ポーションをバックに仕舞いながら、スライムに【鑑定】を掛ける。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

   名前   グリーンスライム   Lv   3   
   魔物種   スライム
   状態   正常

   HP               20/20     
   MP                   5/5


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

   あれ?   能力値やスキルが見れない?   (1)のスキルだからか?   【鑑定】の上位版があるのかな?   それともまた、知力が低いってオチか?
   っと、今はそんな事を考えている場合ではないか。戦闘中だ。取り敢えずスライムに集中しますか。
   約五秒掛かる呪文を唱え、ファイアアローを放つ。
   ファイアアローはスライムに真っ直ぐ飛んで行き、着弾するがスライムは健在。更にファイアアローを二発放ち、やっとスライムを倒す。
   あれ?   思ったより楽勝じゃない。魔力が低いから魔法の攻撃力が低いのか?
   よく考えたらスキルがいっぱい取れるって喜んでたけど、レベルアップによる能力値の上昇は上限10って決まってるから能力値は人並みにしか上がらないんだよな……これは【スキルポイントアップ】を過信したら足元を掬われるんじゃないか?
   ファイアアローは消費MPが5だから三発で15消費する。ライトアローも同じ。MPが30の俺が同じ戦法で二戦すればMPが0になり気絶してしまう。
   一戦目は魔法で、二戦目はアローを二発放って接近戦しかないか。
   それにしたって、たった二戦で休憩に戻らないといけないとは……もう一回戦って休憩に戻ったらMPポーションを持って来るかな?   このバックあんまり容量が無いんだよなあ……
   倉庫に置いてあった小さなウエストバッグ。
 マジックバッグというらしい。体積、重量に関係無く物が入れられるという機能なのだが、その最大容量数が十個と、とても少ない。無いよりあったほうが有り難いのは確かなんだかけど、少し残念なアイテムだ。
   攻略手順とマジックバッグの不便性を考えながらスライムが倒れた辺りまで戻ると、直径二センチ程の黒い玉が落ちていた。
   あれ?   そういえば昨日倒したスライムもこれを落としてたよな。これってなんだろう?
   落ちていた黒い玉を拾い上げ、【鑑定】を掛けてみる。

   スライムの核

   ???   スライムの核?   【鑑定】しても名前しか出ないんじゃ、何に使うアイテムか分からないじゃないか。
   取り敢えずスライムの核をバックに仕舞い、魔方陣の部屋に続く通路の方に戻る。後一戦したらログハウスに戻らないといけないから、この辺で戦いたいんだけど……などと思っていると、まだ行ったことの無い通路からスライムが姿を現わす。 
   よし、二匹目!
   呪文を唱えファイアアローを放つ。更にもう一発放ち、腰に掛けていたライトアックスを引き抜くと、スライムとの約五メートルの距離を一気に詰め、その勢いを殺さないようにライトアックスをスライムに振り下ろした。
   アックスは抵抗無くスライムを切り裂くが、その傷は直ぐに塞がる。
   おいおい……これダメージ与えてるんだよな。
   疑問が一瞬の隙となり、その隙を突きスライムがその体の一部を伸ばしこちらに攻撃を仕掛けて来る。
   ドッ!
   鈍い音を立て、胸にスライムの攻撃が当たった。
   痛!
   鈍い痛みが胸から広がり、その衝撃で二、三歩後退する。HPを確認すると、
   22/30
   となっていた。
   一撃で8ダメージか……後三発喰らうとアウトだな。
   ダメージは喰らったが、思いのほか冷静だ【恐怖耐性】Lv10が機能してるのかもしれない。
   後退した事で出来た間合いを詰る様に体を横に回転させ、その勢いを利用してスライムに水平に斬りつける。更に勢い余った腕の振りを縦に変え、野球のオーバースローの様にもう一撃叩き込むと、スライムは生き絶えた。
   スライムを倒した安堵と共に驚きも生まれる。今まで斧は勿論、竹刀すら持ったことの無い俺が、効果的な斧の振り方や間合いの取り方を感覚で理解出来ていた。
   これが武術系スキルの効果か。これでアーツを使えればもっと楽に戦えていたんだろうが、危なくて使えないよな。
   【初級斧術】で覚えるアーツは攻撃力が1・2倍になる斧撃と、攻撃を斧で受けると防御力が1・2倍になる斧盾なのだが、魔法を使うとMPが減る様に、アーツを使うとHPが減る。斧撃と斧盾は消費HPが5であり、HPが少ない今の俺では危なくて使えない。
   しかし、スライムの一撃でダメージ8かぁ~。防御力に影響を与える体力がレベル0の頃の六倍あるのに……あの時ノーダメージで倒せて本当に良かった。
   床に転がっていた何に使うか分からないスライムの核を回収し、休憩する為にログハウスへと戻った。
   
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

処理中です...