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誘拐と俺

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馬車がとまると屋敷の中へと運ばれた。男の魔法なのか、あたりは真っ暗で何も見えない。ドサっと冷たい床に落とされる。

「痛…。は?何これ?ちょっとどういうことよ!!」
目を覚ましたらしいステラ嬢が騒ぎ出す。
「ようやく目を覚ましたか。」
男がパチっと指を鳴らすと、視界に明るさが戻ってきた。どうやら地下のような場所に連れ込まれたらしい。

「お前な…、何で生き残れると思ったんだ?普通に考えて、口封じのために殺すだろ。」
男は感情の読み取れない表情で言う。
「やっぱり男との結婚を嫌がった令息は美しい平民の女と駆け落ち。そしてそのまま行方知らずに…。完璧なシナリオだと思わないか?」
「俺はソレイルを愛している!そのことは周知の事実だ。皆疑問に思う筈だ…!」
男はまるで子供をあやすかのように言った。
「男が男と結婚するより、男が女と結婚するほうが自然なことだと思わないか?」
「みんな俺たちの仲を認めてくれている!」

「あーもう!!!そんなのどうだっていいのよ!今すぐここから出して!」
「少し待て。あと5分もすればあの方は来るからな。」
ステラがガタガタと震え出す。こんな筈じゃなかった、などとぶつぶつと呟いている。


バタンと扉の開く音がした。そちらに目を向ける。
「貴方は…プラトン公爵様!?」
そこにはプトレマイオス・プラトンがいた。彼の190を超える身長を座って見つめるせいか、このような状況で現れたからか、いつもの厳つい顔がより険しく見える。
「久しぶりだな、アース殿。
本当に貴方は…あの男に似ている。」
「…あの男?」
「アンドロ・ルルアンだ。顔もかたちも全く違うのに、お前たちからは同じ匂いがする。アンドロ・ルルアンもお前のように愚かな男だった。」

アンドロ・ルルアンは俺が生まれる4年前に何者かに殺された少年だった。彼もまた、女神に選ばれ子供が産める存在だった。

「アンドロのこともお前が殺したのか。」
「…そうだ。お前たちは存在するだけで周りを狂わす。そのイレギュラーさによって全てが狂い出すんだ。お前たちが正常であれば、何も失うことはなかった。」
プラトンは顔を顰めた。

「存在してはいけない人などいない!皆生きる権利がある。お前がそれを邪魔する権利などない!」
「あぁ…うるさい。うるさい。うるさい!!
お前たちがいなければ、いなければ…!!」
プラトンは興奮状態に陥った。これ以上刺激するのは危険だ。俺は黙って見つめる。

プラトンは自分の気持ちを抑えるように、ふうっと息を吐いた。
「でも…、そうだな。何も分からず殺されるのは嫌だろう。お前たちの罪を教えてやろう。」

プラトンは静かに語り出した。
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