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初めての女友達と俺

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「ごめんなさい!!!」

放課後、人気のない校舎裏にまたステラに呼び出され、身構えてた俺は呆気に取られる。

「今まで本当に悪かったと思ってる。こんな私だけど許してくれる…?」
ステラが瞳をウルウルさせてこちらを見てくる。もしこの顔に男子は弱いと分かっていてやっているのなら、ステラには敵わない。しかし、今までのことを考えるとすぐに許す気にはなれなかった。

「急にどうしたの?」
「あの後、お友達に諌められて、初めて気がついたの。今まで自分がひどい態度をとってきたって。
…ずっと不安だったの。3年前、目が覚めたら知らない世界で、知ってることはシナリオくらいで、だから、シナリオ通りに行くことにしがみついてたの。…アース様の気持ちも考えないでね。ソレイル様と結婚すればしあわせになれるって、安心して暮らせるって思ったの…。」
ステラが俯く。

ステラの気持ちもわかる。俺は生まれた時からこの世界にいたから順応できたが、3年前急にこの世界に憑依したというのならとても不安になるだろう。主人公という立ち位置を利用して、安心できる場所を作ろうとするのも無理はない。

「いいよ、ステラ嬢も大変だったようだね。同じ日本人だった者同士だったんだ。恨み合いたくはないよ。」
ステラはありがとうと微笑んだ。

アースは未来の国母だ。侯爵家で傷一つつかぬよう、温室で蝶よ花よと育てられた。それゆえアースは人からの悪意に疎かった。これはソレイルがアースを溺愛してやまない理由の一つでもあり、王妃となるアースの欠点の一つでもあった。


「アース様!おはようございます!」
「アース様、お勉強を教えて!」
「アース様!」

それからステラは毎日のように話しかけてきた。だんだんとステラはやはり良い子なのではという気がしてくる。始めの頃、あんなに攻撃的だったのは不安からくるものだったのだろう。

「アース様、一緒に中庭でお花を見に行かない?今が見どころらしいの!」
「…ステラ嬢。あまり僕からアースを取らないでくれるかな。」
「ソレイル様!ごめんなさい。アース様と仲良くなりたくて。」
「アースに友達は増えることはいいことだとは思うよ。…でも。今から僕とアースはデートだから、マーズでも誘うといい。」
「えぇ?俺と??おい、ソレイル!勝手なこと言うなよ!」
「…デートの約束なんてしてたっけ…?」
「行こう、アース。」
ソレイルに肩を掴まれそのまま連行される。

「マーズ様…もしかして…ソレイル様って…」
「そうだよ。アースを溺愛して…」
「私のことが好きすぎて嫉妬してるんだわ!!!」
はぁとマーズはため息をついた。なぜこうも自分の周りには変な奴しかいないのだろうか。
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