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王子様と私

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「…こうして、王子様とお姫様は幸せに暮らしました。」
「もう一回!もう一回よんで!」
「ふふふ。シーアは本当にこの話が好きね。」
お母様さまは優しく微笑む。
「シーアも王子様とけっこんしたい!」
「シーアほど可愛い子はいないからな~!シーアなら絶対お姫様になれる!
今度登城するときにシーアも来るか?王様から子供同士を引き合わせようと話が出てるんだ。」
「お父さま!それ本当?シーア絶対行く!」


「これはいや!」
「では、こちらはどうでしょう。」
「それもいや!あなた分かってるの?シーアは王子様に会いに行くの!そしてなかよくなるの!てきとうな格好なんてできないでしょ!」
「申し訳ありません。シーアお嬢様。」
「シーア、かれこれもう2時間も経つじゃないか。もうそろそろドレスを決めてはどうだ?」
「お父さまはぜんぜん分かってない!乙女心のわからない人はどっか行って!」

シーアの父は肩を落とした。愛する妻から生まれた愛する娘にはとことん弱い。普段から国王の側近として冷徹な彼も、娘のお願いを無碍にすることはできなかった。

ようやく準備が整ったようだ。
「お父さまー!早くー!!」
「走ってはダメだよ、シーア!」
シーアは王宮に続く長い道を駆ける。色とりどりのバラが咲き誇る美しい庭にシーアは魅了されていた。
私が王子様と結ばれたら毎日ここで暮らせるのね。
シーアは王子様との面会を待ち遠しく思った。

「いいか。教えた通り礼儀正しくいるんだぞ。」
「お父さま!わたくし出来ますわ!」
「うん。その調子だ。今日も可愛いぞ、シーア。」
お父さまに手を繋がれて謁見の間へと向かう。そこには王様と王子様がいた。

「よく来たな。」
「本日はお招き頂きありがとうございます。こちら、娘のシーアと申します。」
「シーアでございます。」
シーアは一礼した。
「面をあげよ。楽にしてよい。」
シーアは顔を上げる。そして、王子様をまじまじと眺めた。
金糸のような髪はキラキラと煌めき、左右で色の異なる目は長いまつ毛によって縁取られている。
本物の王子様だ。
シーアは感動した。
本の中の王子様のような美貌の王子、しかし、1つだけ本と違うとするのならば、その顔に表情はなかった。本の中の王子様はいつも優しそうな微笑みを見せているのに。

「子供たちだけで遊んでくるといい。ソレイル、中庭でも案内してあげなさい。」
「はい。」

「ここが中庭だ。」
「すてき~!!とってもお花が美しいですね!」
「ああ。」
「お花は好きなんですか?」
「別に。」
何を言っても馬耳東風だ。
シーアは憧れの王子様がこんな人だったなんてと落胆した。
「つまらない!シーアもう帰る!」
もしかしたら王子様が追いかけてくれるかも、なんて希望も儚く、王子は空虚な目でシーアのことを眺めているだけだった。
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