16 / 34
王子様と私
しおりを挟む
「…こうして、王子様とお姫様は幸せに暮らしました。」
「もう一回!もう一回よんで!」
「ふふふ。シーアは本当にこの話が好きね。」
お母様さまは優しく微笑む。
「シーアも王子様とけっこんしたい!」
「シーアほど可愛い子はいないからな~!シーアなら絶対お姫様になれる!
今度登城するときにシーアも来るか?王様から子供同士を引き合わせようと話が出てるんだ。」
「お父さま!それ本当?シーア絶対行く!」
「これはいや!」
「では、こちらはどうでしょう。」
「それもいや!あなた分かってるの?シーアは王子様に会いに行くの!そしてなかよくなるの!てきとうな格好なんてできないでしょ!」
「申し訳ありません。シーアお嬢様。」
「シーア、かれこれもう2時間も経つじゃないか。もうそろそろドレスを決めてはどうだ?」
「お父さまはぜんぜん分かってない!乙女心のわからない人はどっか行って!」
シーアの父は肩を落とした。愛する妻から生まれた愛する娘にはとことん弱い。普段から国王の側近として冷徹な彼も、娘のお願いを無碍にすることはできなかった。
ようやく準備が整ったようだ。
「お父さまー!早くー!!」
「走ってはダメだよ、シーア!」
シーアは王宮に続く長い道を駆ける。色とりどりのバラが咲き誇る美しい庭にシーアは魅了されていた。
私が王子様と結ばれたら毎日ここで暮らせるのね。
シーアは王子様との面会を待ち遠しく思った。
「いいか。教えた通り礼儀正しくいるんだぞ。」
「お父さま!わたくし出来ますわ!」
「うん。その調子だ。今日も可愛いぞ、シーア。」
お父さまに手を繋がれて謁見の間へと向かう。そこには王様と王子様がいた。
「よく来たな。」
「本日はお招き頂きありがとうございます。こちら、娘のシーアと申します。」
「シーアでございます。」
シーアは一礼した。
「面をあげよ。楽にしてよい。」
シーアは顔を上げる。そして、王子様をまじまじと眺めた。
金糸のような髪はキラキラと煌めき、左右で色の異なる目は長いまつ毛によって縁取られている。
本物の王子様だ。
シーアは感動した。
本の中の王子様のような美貌の王子、しかし、1つだけ本と違うとするのならば、その顔に表情はなかった。本の中の王子様はいつも優しそうな微笑みを見せているのに。
「子供たちだけで遊んでくるといい。ソレイル、中庭でも案内してあげなさい。」
「はい。」
「ここが中庭だ。」
「すてき~!!とってもお花が美しいですね!」
「ああ。」
「お花は好きなんですか?」
「別に。」
何を言っても馬耳東風だ。
シーアは憧れの王子様がこんな人だったなんてと落胆した。
「つまらない!シーアもう帰る!」
もしかしたら王子様が追いかけてくれるかも、なんて希望も儚く、王子は空虚な目でシーアのことを眺めているだけだった。
「もう一回!もう一回よんで!」
「ふふふ。シーアは本当にこの話が好きね。」
お母様さまは優しく微笑む。
「シーアも王子様とけっこんしたい!」
「シーアほど可愛い子はいないからな~!シーアなら絶対お姫様になれる!
今度登城するときにシーアも来るか?王様から子供同士を引き合わせようと話が出てるんだ。」
「お父さま!それ本当?シーア絶対行く!」
「これはいや!」
「では、こちらはどうでしょう。」
「それもいや!あなた分かってるの?シーアは王子様に会いに行くの!そしてなかよくなるの!てきとうな格好なんてできないでしょ!」
「申し訳ありません。シーアお嬢様。」
「シーア、かれこれもう2時間も経つじゃないか。もうそろそろドレスを決めてはどうだ?」
「お父さまはぜんぜん分かってない!乙女心のわからない人はどっか行って!」
シーアの父は肩を落とした。愛する妻から生まれた愛する娘にはとことん弱い。普段から国王の側近として冷徹な彼も、娘のお願いを無碍にすることはできなかった。
ようやく準備が整ったようだ。
「お父さまー!早くー!!」
「走ってはダメだよ、シーア!」
シーアは王宮に続く長い道を駆ける。色とりどりのバラが咲き誇る美しい庭にシーアは魅了されていた。
私が王子様と結ばれたら毎日ここで暮らせるのね。
シーアは王子様との面会を待ち遠しく思った。
「いいか。教えた通り礼儀正しくいるんだぞ。」
「お父さま!わたくし出来ますわ!」
「うん。その調子だ。今日も可愛いぞ、シーア。」
お父さまに手を繋がれて謁見の間へと向かう。そこには王様と王子様がいた。
「よく来たな。」
「本日はお招き頂きありがとうございます。こちら、娘のシーアと申します。」
「シーアでございます。」
シーアは一礼した。
「面をあげよ。楽にしてよい。」
シーアは顔を上げる。そして、王子様をまじまじと眺めた。
金糸のような髪はキラキラと煌めき、左右で色の異なる目は長いまつ毛によって縁取られている。
本物の王子様だ。
シーアは感動した。
本の中の王子様のような美貌の王子、しかし、1つだけ本と違うとするのならば、その顔に表情はなかった。本の中の王子様はいつも優しそうな微笑みを見せているのに。
「子供たちだけで遊んでくるといい。ソレイル、中庭でも案内してあげなさい。」
「はい。」
「ここが中庭だ。」
「すてき~!!とってもお花が美しいですね!」
「ああ。」
「お花は好きなんですか?」
「別に。」
何を言っても馬耳東風だ。
シーアは憧れの王子様がこんな人だったなんてと落胆した。
「つまらない!シーアもう帰る!」
もしかしたら王子様が追いかけてくれるかも、なんて希望も儚く、王子は空虚な目でシーアのことを眺めているだけだった。
162
お気に入りに追加
2,843
あなたにおすすめの小説
異世界に召喚され生活してるのだが、仕事のたびに元カレと会うのツラい
だいず
BL
平凡な生活を送っていた主人公、宇久田冬晴は、ある日異世界に召喚される。「転移者」となった冬晴の仕事は、魔女の予言を授かることだった。慣れない生活に戸惑う冬晴だったが、そんな冬晴を支える人物が現れる。グレンノルト・シルヴェスター、国の騎士団で団長を務める彼は、何も知らない冬晴に、世界のこと、国のこと、様々なことを教えてくれた。そんなグレンノルトに冬晴は次第に惹かれていき___
1度は愛し合った2人が過去のしがらみを断ち切り、再び結ばれるまでの話。
※設定上2人が仲良くなるまで時間がかかります…でもちゃんとハッピーエンドです!
弟に殺される”兄”に転生したがこんなに愛されるなんて聞いてない。
浅倉
BL
目を覚ますと目の前には俺を心配そうに見つめる彼の姿。
既視感を感じる彼の姿に俺は”小説”の中に出てくる主人公
”ヴィンセント”だと判明。
そしてまさかの俺がヴィンセントを虐め残酷に殺される兄だと?!
次々と訪れる沢山の試練を前にどうにか弟に殺されないルートを必死に進む。
だがそんな俺の前に大きな壁が!
このままでは原作通り殺されてしまう。
どうにかして乗り越えなければ!
妙に執着してくる”弟”と死なないように奮闘する”兄”の少し甘い物語___
ヤンデレ執着な弟×クールで鈍感な兄
※固定CP
※投稿不定期
※初めの方はヤンデレ要素少なめ
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
【完結】18年間外の世界を知らなかった僕は魔法大国の王子様に連れ出され愛を知る
にゃーつ
BL
王族の初子が男であることは不吉とされる国ルーチェ。
妃は双子を妊娠したが、初子は男であるルイだった。殺人は最も重い罪とされるルーチェ教に基づき殺すこともできない。そこで、国民には双子の妹ニナ1人が生まれたこととしルイは城の端の部屋に閉じ込め育てられることとなった。
ルイが生まれて丸三年国では飢餓が続き、それがルイのせいであるとルイを責める両親と妹。
その後生まれてくる兄弟たちは男であっても両親に愛される。これ以上両親にも嫌われたくなくてわがまま1つ言わず、ほとんど言葉も発しないまま、外の世界も知らないまま成長していくルイ。
そんなある日、一羽の鳥が部屋の中に入り込んでくる。ルイは初めて出来たその友達にこれまで隠し通してきた胸の内を少しづつ話し始める。
ルイの身も心も限界が近づいた日、その鳥の正体が魔法大国の王子セドリックであることが判明する。さらにセドリックはルイを嫁にもらいたいと言ってきた。
初めて知る外の世界、何度も願った愛されてみたいという願い、自由な日々。
ルイにとって何もかもが新鮮で、しかし不安の大きい日々。
セドリックの大きい愛がルイを包み込む。
魔法大国王子×外の世界を知らない王子
性描写には※をつけております。
表紙は까리さんの画像メーカー使用させていただきました。
魔がさした? 私も魔をさしますのでよろしく。
ユユ
恋愛
幼い頃から築いてきた彼との関係は
愛だと思っていた。
何度も“好き”と言われ
次第に心を寄せるようになった。
だけど 彼の浮気を知ってしまった。
私の頭の中にあった愛の城は
完全に崩壊した。
彼の口にする“愛”は偽物だった。
* 作り話です
* 短編で終わらせたいです
* 暇つぶしにどうぞ
【完結】ゆるだる転生者の平穏なお嫁さん生活
福の島
BL
家でゴロゴロしてたら、姉と弟と異世界転生なんてよくある話なのか…?
しかも家ごと敷地までも……
まぁ異世界転生したらしたで…それなりに保護とかしてもらえるらしいし…いっか……
……?
…この世界って男同士で結婚しても良いの…?
緩〜い元男子高生が、ちょっとだけ頑張ったりする話。
人口、男7割女3割。
特段描写はありませんが男性妊娠等もある世界です。
1万字前後の短編予定。
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
僕はただの平民なのに、やたら敵視されています
カシナシ
BL
僕はド田舎出身の定食屋の息子。貴族の学園に特待生枠で通っている。ちょっと光属性の魔法が使えるだけの平凡で善良な平民だ。
平民の肩身は狭いけれど、だんだん周りにも馴染んできた所。
真面目に勉強をしているだけなのに、何故か公爵令嬢に目をつけられてしまったようでーー?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる