攻略対象5の俺が攻略対象1の婚約者になってました

学園と俺

懐かしい記憶を思い出した。

俺は簡単にそんなことを考えていたが、俺の思い通りにはいかず、年々ソレイルの俺への愛情表現は強くなっていた。
このままで大丈夫なのだろうか。俺自身も年々絆されていっているし。

「ぼうっとしてどうしたの？大丈夫？抱っこして連れていこうか？」
「やめろ！恥ずかしいだろ！」
「周りの人にアースは俺のものだと伝えておく必要があるし。」
「いらんわ！そんなもの！」


「早く行こう。まずは入学式からだ。ソレイルは新入生代表挨拶だろ？」
「うん。頑張るね。」

この学園には15歳の時に入学し、3年間通う。魔法について学んだり、社交界について学んだりする。1学年大体90人くらいで、その中の何人かは魔法が使えたり、素晴らしい成績で入学した庶民だ。彼らはそのまま魔法省に就職したり、王宮に就職したりする。
主人公も魔法が使えるのでこの学園に入学するのだ。
全生徒が寮生活を送る。寮は四つに分かれている。貴族の男子が住むオリオン寮、貴族の女子が住むアルデバラン寮、庶民の生徒が住むプロキオン寮、そして王族が住むデネブ寮だ。俺も一応王族扱いでデネブ寮に住むことになっている。


大きなホールに着いた。天井の中央には大きなシャンデリアが輝いている。一つ一つのディテールが美しく、息を呑む。
「凄い…！」
「本当に楽しそうだね。」
「ずっとこの学園に入るのが楽しみだったんだ！！本当に夢のようだよ！」
ソレイルが愛おしいものでも見るようにずっと目を細める。
きゃぁっとまた歓声が上がる。
「恥ずかしいからその甘々な空気やめろ。」
「ええー。そんな…。周りの人が騒ぐのが悪い。慣れればいい。」

ソレイルはまだ俺以外の人に少し冷たい節がある。まだ過去の傷は完全に癒えてはいないようだ。しかし、主人公が登場すればそれも解決されるだろう。


「続いて新入生代表挨拶。代表、ソレイル・サンライズ。」
「はい。」
ステージにソレイルが上がる。いかにも王子様といった様子だ。近すぎて忘れていたが、そうだ、彼は王子様だった。
長い手足に黄金に輝く髪はシャンデリアの光を浴びてキラキラと輝く。左右で色の異なる目は神秘的で惹き込まれてしまう。
その目は俺を見つけると甘みを帯びた。
俺の周りでまた歓声が上がる。

そんな中、1人だけ冷たい視線があることに気付いていなかった。


入学式の後はクラス分けだ。
「ソレイル・サンライズ様。」
ソレイルが学園長に呼ばれて壇上に上がる。この世界ではクラス分けも女神が決める。
学園長の前には神殿の時のような何も書かれていない本がある。
「ソレイル・サンライズ、貴方は勉学に努め、この国に貢献することを誓いますか。」
「はい、誓います。」
ソレイルが誓いの言葉を口にすると本がぼうっと光り、文字が現れた。
「ソレイル・サンライズ様は牡羊組です。」

「アース・フレイム様。」
「はい！」
「アース・フレイム、貴方は勉学に努め、この国に貢献することを誓いますか。」
「はい、誓います。」
本が光る。
「アース・フレイム様は牡羊組です。」
良かった、同じクラスだ。

教室に行くともう席についている人が何人かいた。俺の隣の席にはもう誰か座っている。

「あ！マーズ！隣の席だ！嬉しいな。」
「おお！アース！久しぶりだな。相変わらずうるさくて安心したよ。」
「はあ？お前こそ相変わらず嫌味なやつだな！」

隣の席はマーズ・アストロ、俺の幼少期からの友人だった。攻略対象2で、宰相の息子だ。銀髪に赤目。クールなキャラでメガネが似合ってる。いつも冷静でツッコミ役だ。

「カストロは牡牛組になったらしい。俺たちと離れ離れになったことを嘆いてたぞ。」

カストロ・ソユーズも、俺の友人だ。ソレイルも含めてこの4人でよく遊んだ。いわゆる幼なじみってやつだ。赤髪に茶色の目。カストロも攻略対象3であり、父親は騎士団長だ。

「時々カストロの方へも遊びに行こう。」
「そうだな。
…ソレイルは相変わらずだな。」
マーズは俺の横に視線を向ける。
ソレイルは俺の手を握って立っていた。
「悪い虫がつくと良くないから。」
「アースにとって、いちばんの悪い虫はお前だと思うぞ。」
「マーズ、俺と決闘する気？」
「望むところだ。」
「おい！お前らまたじゃれ合ってんのか！本当、いつまで経っても子供だな。」
ガハハと豪快に笑いながらカストロが現れた。
「俺だけクラスが離れちまって悲しいぜ、友よ～！！」
マーズを抱きしめようとする。
「キモい。やめろ、単細胞。」

こうして軽口を叩き合える友達はソレイルにとっては貴重な存在だ。ソレイルもマーズ達の前ではリラックスして過ごせる。

俺はこれからの学園生活が楽しくなりそうだと思いを馳せた。